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キライな個性の使い方【メダリスト 5話】
今あんたが悪く言ったのはあんたの長所だ。
私は、たろうがスケート上手いのは、
「何くそ」ってやれるその性格のおかげだと思ってる。
太郎みたいな芯のある生意気なやつ、どこにもおらんて思った。
ほんの一握りしか上に行けないスポーツで、それは武器だ。
周りのご機嫌のために、その個性否定してどうすんだよ。
那智 鞠緒
今回は、自分を責めるミケにかけた鞠緒の言葉から、
「個性」について考えてみる。
以前書いた王様ランキングの記事では、
「コンプレックスを武器にする」という発想について触れた。
今回の鞠緒の言葉にも共通点がある。
それは、「変えようのない個性は、どう殺すのかではなく、どう生かすのかを考えるべき」という点だ。
一言で「個性」といっても、
周囲の人間に肯定されやすい個性もあれば、
今回のミケのように疎まれやすい個性もある。
もう俺は、性格変えんといかん…。
俺は、みんなみたいに大人を味方にできんから、
誰も味方がおらんでも、1人でできるやつにならんといかんから…。
でも、そしたらいろんな人に嫌われるし、どうすればいいかわからんし…。
俺が全部間違ってたから…。
三家田 涼佳
周囲に否定されやすい個性は、
自分でも否定することになってしまいがちだ。
「みんなに受け入れられないのは自分が悪いからだ」と。
すると、「個性をどう殺せばいいか」という思考になる。
もちろん、変えていくべき「行動」は存在する。
暴力とか、暴言とか。
たとえば、周りの人間に好かれなかったミケは、
周囲に鋭い言葉を吐いていた。
でも、これは「個性」ではなくて、
本人も変えていこうとしていた「行動」である。
ミケの場合、その本質である「個性」を言語化するなら、
鞠緒の言った「『なにくそ』ってやれる性格」(=負けん気)の部分だ。
「個性」をポジティブに捉えなおすことができれば、
自分を肯定できるようになるので、
「個性をどう生かしていくか」という視点に立てるようになる。
これも以前に書いたこととつながるが、「自分」に気付けた人間は強い。
「個性」を見抜いてくれる大人(=鞠緒)がいたことで、ミケは救われた。
こういう「個性を見抜いてくれる他者」って本当に貴重だと思う。
さらに、鞠緒は次のように付け加える。
あんたはあんたのままでも絶対に強くなれる。
次は勝って、「ほら見ろ、間違っとらんわボケ!」って言うんだ。
曲げたくないなら、2人でそれを正しいことにしていくんだ。
那智 鞠緒
私は私のままでいい。
自分を殺したり無理矢理変える必要なんてない。
むしろ「変えようのない私をどう肯定していくか」ということに目を向ける大切さを教えてもらった回だった。