小説家の連載「プリンセスヴァイオレットの冒険」第二話

〈前回のあらすじ:10歳のヴァイオレット王女は「元気が無くなる病」にかかった両親の国王夫妻を救うため、黒猫のレイと一緒に旅に出た。〉

  ヴァイオレットとレイは、あてもなく旅に出てしまったので、ひとまず隣の国を訪ねる事にしました。
 隣の国の王様は、ヴァイオレットのお父様の親友でした。
 馬に変身したレイに乗って、隣の国へ入ります。
 にぎやかな街の中を進んで、お城の前へたどりつきました。
「わたしは隣の国からやってきた、ヴァイオレット王女です。お父様とお母様が大変な事になったので、この国の王様の知恵を借りに来ました」
 お城の前に立っている、門番にそう言いました。
「そしてわたしは、国王夫妻に飼われている猫のレイにゃ。魔法で何にでも変身できるのにゃ!今は馬の姿をしているだけにゃ」
 レイも自己紹介しました。
 門番はそれを聞いてびっくりです。
「何と!隣の国の王女様ですと?!」
 ヴァイオレットは、旅に出る時に、旅支度として、目立たない大人しい色合いのワンピースに着替えていたので、門番に王女だと信用してもらうために、王女の証を見せました。鞄に、王女のティアラと、王家の紋章の入った指輪とイヤリングを入れていたので、それらを見せたのです。
 門番はそれを見て信用してくれました。ヴァイオレットとレイはただちに国王の所へ案内されました。
 ヴァイオレットとレイは、玉座に座っている王様に挨拶しました。
「国王陛下、お久しぶりです。今日は国王陛下のお力を借りに来ました。わたしのお父様とお母様が大変なんです」
 と、今起こっている事を説明しました。
 国王は、いきなり親友の娘のプリンセスが訪ねて来たかと思えば、親友夫妻がそんな事になっているとは知らずに、とてもびっくりしました。
「何だと!マカートニーと、エリーさんがそんな事になっているとは!」
 隣の国の国王は、すぐにお医者様を呼んでくれました。そしてヴァイオレットに病の事を詳しく聞いてくれましたが、やっぱり隣の国の偉いお医者様でも、元気が無くなる病の事はわからないみたいでした。
 ヴァイオレットとレイはとてもがっかりしましたが、隣の国の国王は、
「だが、もしかすると、別の国に行けば何かわかるかもしれない。食いしん坊の国を訪ねなさい。あそこにある、魔法のルビーのうわさを聞いた事がある。そのルビーを使えば、マカートニー達を救う事ができるかもしれないぞ」
「ありがとうございます、国王陛下!」
 その事を聞いて、ヴァイオレットは大喜びしました。
「きっと手がかりになるにゃ!」
 とレイも嬉しそうです。
「とりあえず、その国はここから遠いから、しばらく休んでいきなさい」
 王様はそうすすめました。
 そこで、ヴァイオレットとレイは、数日隣の国のお城で過ごしました。
 レイは王妃様になでてもらって、ヴァイオレット王女は、隣の国の王子様と一緒に遊びました。王子はまだ3歳で小さくてかわいかったので、遊ぶのは楽しかったのです。
 食いしん坊の国への行き方を教えてもらったり、旅に持っていく食料をもらったり、動きやすくておしゃれなドレスを旅のためにぬってもらって、王女と猫は、完全に旅支度が整いました。
「大変お世話になりました。お父様とお母様を救う旅に出発します!」
「いろいろありがとうにゃ。レイもプリンセスを守るにゃ!」
「気をつけて。マカートニーとエリーさんが元気になる事を願うよ!」
 こうして、隣の国の国王に見送られて、姫と猫は隣の国を後にしました。
「また新たな冒険が始まるにゃ!」
「そうね!行きましょう!」
 果たして、食いしん坊の国に行けばお父様とお母様を救えるのでしょうか?

次回に続く

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