小説家の連載「プリンセスヴァイオレットの冒険」第四話
〈前回のあらすじ:食いしん坊の国を訪ねて魔法のルビーをゲットしたヴァイオレット王女は、魔法の真珠を求めて老人の国へ行く。〉
黒猫のレイは黒い馬に変身し、王女を乗せてひたすら走ります。
走るのに飽きると、時々違う動物に変身してみます。
大きな黒ヒョウになって、木の上に登って、木から木へ飛び移ってみたり。黒いイルカになって川を泳いでみたり。時には黒いドラゴンに変身して空を飛んでみました。
ヴァイオレット王女は、ドラゴンになっている時のレイに乗っているのが一番好きでした。昔の物語に出てくる騎士になったみたいで、かっこいい気持ちになれたからです。風を切って悠々と空を飛ぶのはとても気分が良かったのでした。
「わたしが大人になって、女王になったら、毎日レイと一緒に空を飛ぶわ。空飛ぶ女王ってかっこいいと思わない?」
「でも、そしたら、政治をする時間が無いにゃ。国民のために女王の仕事をしないといけないにゃ。遊んでいるひまは無いにゃ」
「それもそうね。女王の仕事はやまほどあるもの。でも、今は女王じゃないし、ちょっとは楽しんだっていいでしょ?」
「そうだにゃあ。この冒険は、女王になる前の今しかできないにゃ!」
レイとヴァイオレットは、そんな会話をしました。
そうこうしていると、老人の国につきました。
老人の国は文字通り、老人しかいないのです。つまり、この国に住んでいるのは、全員、おじいさんとおばあさんだけです。
でも最初から歳を取っている人はいませんから、元々他の国に住んでいた人で、歳を取って別の国に住んでみたいなと思った人がこの国に来て、そうして老人の国ができたのです。
「本当にお年寄りしかいないわね」
「本当だにゃあ。子供は1人もいないにゃあ」
「若い人が全然いないわ」
道行く人、全員がお年寄りです。お店に入ってもおじいさんかおばあさんしかいないし、お店で働いている人もそう。病院は老人であふれかえり、お医者さんも全員が老人です。
ヴァイオレット王女は、道を歩いている老人をつかまえて聞きました。
「こんにちは。私は他の国から来た王女です。この国で一番偉い人は誰ですか?」
老人はびっくりして言いました。
「何じゃと!外国のプリンセスとはめずらしい。この国で一番偉いのは大統領じゃよ。わしが案内しよう」
こうして、ヴァイオレット王女は老人の国の大統領のところへ案内されました。
大統領のいるホワイトハウスに案内されるとまたびっくり!ここで働いている人も全員がお年寄りしかいません。
一番大きな部屋に案内されました。大きな机のところに大統領が座っていました。
大統領は、とてもやせてがりがりのおじいさんでした。でもしゃべり方はとても元気そうです。
「これはこれは!わしもこれだけ生きてきてびっくりじゃ!あのヴァイオレット王女ではないか!」
「えっ、わたしの事を知っているのですか?」
「というより、あんたの父上と知り合いなんじゃよ。マカートニー国王は元気かね?」
ヴァイオレットはうつむいて答えます。
「いいえ、元気ではありません。実は・・・」
お父様とお母様がかかってしまった病気の事を話すと、大統領は大変驚いて言いました。
「それは大変じゃ!それで、病気を治すためにできるだけたくさんの魔法の宝石が必要なんじゃな?」
「はい、そうなんです。どうか、魔法の真珠をわたしにください」
「レイもお願いするにゃ」
姫と猫は大統領にお願いしました。大統領はうーんとうなずき、
「わかった。さしあげよう。その代わり、わしの頼みを聞いてくれんか?」
「もちろんです!どんな事でしょうか?」
大統領は困ったように言いました。
「実は、この国はひまな老人ばかりでのう。何か、楽しい事を考えて欲しいんじゃ」
「そういう事なら、まかせて!」
ヴァイオレット王女は自信満々に答えます。
魔法の真珠をかばんにおさめると、国中の老人を集めてもらいました。楽しいショーのはじまりです。
ヴァイオレットは、自慢の弓矢の腕を披露しました。どんなに遠くに的を置いても、必ず命中させます。
「おお!すばらしい!」
「偉大な姫様じゃのう!」
「長生きしたかいがあったわい!」
姫の腕前に、老人達は大喜びです。
「レイも見せるにゃ!」
黒猫のレイも、魔法を使って、次々といろんな動物に変身していきます。黒ヒョウ、イルカ、へび、ライオン、小鳥、ドラゴン。次から次へといろんな動物になって、老人達を楽しませました。
「これはお見事!」
みんな拍手喝采です。大統領もがははと笑ってご機嫌です。
「これはすばらしいのお!」
ショーは大成功です。ヴァイオレットとレイは、次の国へ冒険に出かける時が来ました。
大統領は教えてくれました。
「本の王国に行きなさい。そこに行けば、魔法のサファイアがあるはずじゃ」
それを聞いてヴァイオレット王女はびっくりです。
「本の王国ですって?!そこはわたしのおじいさまとおばあさまの国だわ!」
これはびっくりです!一体どうなるのでしょうか?
次回に続く