小説家の連載「プリンセスヴァイオレットの冒険」第八話(最終話)

〈前回のあらすじ:ヴァイオレット王女と黒猫のレイとヴァイオレットの叔母のマリー王女、そしてドラゴンの国の王女・ラーゴ(ドラゴン)の全員で、すべての魔法の宝石を手に入れ、ついにヴァイオレットの王国へ帰る事に!果たしてマカートニー国王とエリー王妃は元気になるのか?!感動の最終回!〉

 ドラゴンのプリンセス・ラーゴの背中に乗って、みんなはヴァイオレットの国に向かいます。
「ラーゴ姫、背中に乗せてくれてありがとうにゃ!」
 猫の姿のままの黒猫・レイがラーゴにお礼を言います。
「わたしも本物のドラゴンの背中に乗る事ができて嬉しいわ!」
 とヴァイオレット王女。
「子供の頃は、いつか大人になったらドラゴンの背中に乗れたらいいなと思っていたけれど、この年になって、夢を叶える事ができて幸せだわ」
 マリー叔母様もとても嬉しそうです。
「いいのよ!実はわたしも、ニンゲンを背中に乗せてみたいなと思ってたのよ。でも、ニンゲン達は、ドラゴンを見ると、戦おうとしたり、捕まえようとしたりしてくるからね。難しいのよ」
「そうだったのね」
「そうよ。みんながヴァイオレットみたいに優しい人ならいいんだけどね。わたし達ドラゴンだって、本当はニンゲン達と争いたいとは思っていないのよ」
「じゃあ、わたしの国に帰ったら、お父様とお母様にこの事を話すわ!きっと、ドラゴンと仲良くしてくれると思う」
「ありがとう!それを聞いて安心したわ」
 みんなは何時間も空を飛び続けました。お腹が空くと、時々下に降りてご飯を食べました。ラーゴはチキンステーキが好きだと言い、ヴァイオレットがお店で買ってきたチキンをむしゃむしゃ食べました。

 やがて王国にたどりつきました。
 空から街の上を見下ろすと、王国の人びとはあいかわらずみんな元気が無さそうです。
「久しぶりの王国ね!でもやっぱりみんな元気が無さそうだわ」
「レイもそう思うにゃ!早いとこみんなを助けないと」
 マリー王女もけわしい表情です。
「お姉様とお義兄様の王国が、何て事!」
 口々にいろいろ言いながら、お城に近づきます。

 ところで、ヴァイオレットが知らない間に、お城では大変な事が起こっていたのです。
 実は、「元気が無くなる病」は、悪い魔法使いがかけていたのでした。この魔法使いのロヒは、ヴァイオレットのお母様・エリー王妃の昔の彼氏でした。エリー王妃と付き合っていた頃、実は悪い人であった事がみんなにばれてしまい、遠い遠い国に追放されました。その後、エリー王妃は本の王国からこの国に嫁いできたのです。
 ロヒが、たまたまこの国に旅行してきた時に、昔のガールフレンドのエリーが、この王国の王妃になっていて、女の子まで産んでいる事を知り、ショックを受けたのです。
「なんと!俺はまだ、あれから何年も経つのに立ち直れないのに・・・全部、エリーのせいだ!そうだ、不治の病の魔法をかけてやる!」
 と言って魔法をかけたのが真実でした。
 その後、ヴァイオレットとレイが旅に出た事を知ると、悪い魔法使いのロヒは、魔法の力で王国をあやつりました。みんなを元気が無くぼんやりした状態にしていたのを、さらに悪くさせ、ぼんやりしたエリー妃と結婚しようとしたのです。
「エリー!俺だよ!昔付き合っていたロヒだ!俺と結婚してくれないか?」
 ロヒは、マカートニー国王を部屋に閉じ込めて、エリー妃にプロポーズしました。
「ええ?うーん、よくわからないわ・・・」
 でも、ヴァイオレットのお母様は、魔法でぼーっとしていたので、何が起きているのか全然わかっていませんでした。
「そんな!魔法が強すぎたかな・・・」
 ロヒはがっかりしました。エリーだけでなく、お城の人はみんな、魔法が強すぎてぼーっとしていたので、今どういう状況なのかもわからずにぼーっとして過ごしていたのです。
 ヴァイオレットが帰ってきたのは、そういう状況の時でした。
 お城の外でラーゴに待ってもらって、みんなはお城の中に入りました。
 お城で働く人はみんな元気が無く、ぐったりしています。
「わたしよ!ヴァイオレット王女よ!帰ってきたわ!」
 とみんなに話しかけても、みんな聞いているのか聞いていないのかわからない状態です。
「このままじゃ良くないわ。お父様とお母様はどこ?!」
 お父様とお母様がここにいるに違いないと思い、ヴァイオレットは玉座の間に行きました。扉はとても重いですが、思い切ってキックして開けます。玉座の間の扉をばーんと開けると、そこには何と!
「な、一体誰なの?!」
 そこには、ぐったりしているエリー妃と、エリー妃に一生懸命話しかけては無視されている悪い魔法使い・ロヒの姿があります。
 ロヒは突然帰ってきた王女にびっくりです。
「だ、誰だお前は?!」
「わたしはヴァイオレット王女よ!あなたは誰なの?!お母様から離れなさい!」
「な、王女?!するとエリーの娘か?!」
「あんた、ロヒじゃない!」
 ロヒの姿を見てマリー叔母様が叫びます。
「お姉様の悪い元カレじゃないの!追放されたのに、ここで何してんのよ?!」
「叔母様、そうなの?」
「知らなかったにゃ!」
 ヴァイオレットとレイはびっくりです。ロヒはマリー王女の姿を見て仰天します。
「げ、マリーじゃないか!エリーの妹の!今すぐ逃げるぞ!」
 ロヒは魔法のじゅうたんに乗って逃げようとしました。
「待ちなさい!」
 空飛ぶじゅうたんに乗って高く飛ぼうとしたじゅうたんに向かって、ヴァイオレットは矢を放ちました。
「食らえ!」
 逃げようとするロヒに向かって次々矢を放つので、じゅうたんはぼろぼろになって、ロヒはお城の床にどしんと落ちました。
「痛いよおおお!何だお前!弓矢が上手いのか?!」
「お前何て言うな!わたしはヴァイオレット王女よ!未来の女王なんだから!」
 ヴァイオレットは怒って言います。
「あんた、何をしたのか正直に言いなさいよ!」
 怒ったマリーが怖いので、ロヒは正直に悪い魔法を使った事を正直に話しました。
「・・・・というわけなんだ。どうか、許してくれ!」
「許すもんですか!魔法を食らえ!」
 マリー王女は、ロヒを魔法でねずみに変えました。
「レイ!やっておしまい!」
「了解にゃ!おいしそうなねずみにゃ」
「ひいっ!助けてくれえええええええ!」
 こうして、悪い魔法使いはレイによって食べられてしまいました。
「さて、この国にかけられた魔法を解くわよ!」
 マリー叔母様が、魔法の宝石を全部空中に投げて、魔法をかけると、魔法の虹がかかりました。魔法の虹のおかげで、魔法がとけて、全部元通りになったのです。
「お父様、お母様!」
 マリー叔母様が、隣の部屋に閉じ込められているマカートニー国王を探してきて、連れてきました。ぽかんとしている両親に、ヴァイオレット王女は抱きついたのでした。

 その後、マリーとヴァイオレットによってすべての事を聞いたお父様とお母様は、みんなをよくやったとほめてくれました。もう悪い魔法使いが現れないように、マリー王女には王国にとどまってもらう事にしました。
 ヴァイオレットとレイは、国を悪い魔法使いから守った勇敢な王女と猫だとして、国中の皆から感謝されました。
 ラーゴと話をした国王と王妃は、ドラゴンの国と友好関係を結ぶ事にしました。そのおかげで、たくさんのドラゴン達がこの国にやってくるようになったのです。
 こうして、悪い魔法使いが去った後、みんないつまでもいつまでも、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
                              おしまい


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