小説家の連載 夫が絶倫過ぎて離婚しました 第6話

【前回のあらすじ:毎晩3回も行為を求めてくる絶倫夫のせいで出血し、切迫流産と診断された妊娠初期の妻・七海。兄・圭太夫婦の家に避難すると、夫の大和が不満たらたらで電話をかけてきて、兄は激怒。離婚を勧められ、両家の親を交えて離婚するかどうかの話し合いをする事に。そんな中、疎遠だった大和の姉・優子から連絡が来て会う事に。】

 優子からの連絡を伝えると、兄嫁は難しい顔をした。
「うちにお客さんが来るのは全然かまわないのよ。ただ、七海ちゃん、全然連絡取ってないお義姉さんと話すエネルギーある?今ただでさえ大変なのに」
 買い物を終えて帰ってきた兄嫁は、てきぱきとフルーツタルトを作りながら、そう言った。
「まぁ、そうなんだけど、でも、当日いきなり大和と大和のお父さんと、さらにお姉さんもって考えたら・・・一人でも味方を作っておきたいの」
「でもあの絶倫夫のお姉さんでしょ?信用できる?」
 兄嫁は七海の事を心底心配してくれているのだった。
 タルトが焼きあがった後も、お茶にしてタルトを食べながら、いろいろ話し合った結果、七海の希望通り、兄嫁立ち合いの元兄夫婦宅に来てもらって話す事になった。
 夜、帰宅した兄にもこの事を伝えた。大丈夫か心配されたが、兄嫁が一緒だからと説得して納得してもらった。

 翌日、時間通りに義姉はやってきた。
 以前会った時と同じように、見た目はまともそうで、落ち着いた42歳の女性と言った感じである。
「お義姉さん、お久しぶりです」
「七海さん、お久しぶり。これ、良かったらどうぞ」
 義姉は美味しそうなお菓子を持ってきてくれていた。百貨店で買ったというフルーツ大福の詰め合わせセット。日本茶にも紅茶にも合うというので、それを頂きながら話す事にした。兄嫁がお茶の準備をする間、先に食卓に座って話を始める。
「七海さん、この度は弟が何かしでかしたと思うから、まずはごめんなさい。でも、申し訳無いんだけど、私は何があったか本当に何も聞かされてないんです。七海さんが何かひどい事をするようには思えないから、きっと弟が原因じゃないかと。ここは七海さんのお兄さん夫婦の家なのよね?」
 申し訳無さそうな義姉。
「はい、ここは私の兄、圭太と兄嫁のはるかさんのお宅です。私は今ここに避難させてもらってます」
「避難?・・・それって弟が、DVとか?」
 優子の顔が一気にくもる。七海も、夫の絶倫ぶりをどう説明しようか・・・と思っていると、3人分の紅茶を持ってきた兄嫁が、いきなり暴露した。
「夫の大和さんがとんでもない絶倫で、妊娠初期の七海ちゃんに何度も性行為を迫り、そのせいで出血して切迫流産になり、お医者さんに安静を言い渡されたのに理解してもらえずこのままだと七海ちゃんもお腹の赤ちゃんも危ないので、うちに逃げてきたんです。性行為の強要ですから、立派なDVですね」
「ぜ、絶倫?!」
 優子がぎょっとし、七海も、いきなり切り出した兄嫁にびっくりした。
「えぇ。ご存じでしたか?あなたの弟さんは、毎晩3回も性行為をしないと気が済まないんですって。妊娠初期なのに何回も迫るし、生理中も理解が無かった。あのままにしておいたら、赤ちゃんが死んじゃうし、無事出産できても産後1か月経つ前に行為を迫って、私の可愛い義妹が、産後の肥立ちが悪くて殺されちゃうって思ったんですよ」
「な、ま、そ、それは・・・・!本当に申し訳ございません!何とお詫びして良いか・・・・そんな事になってたなんて、あのバカ弟!」
 青くなって土下座する勢いの優子を、七海が慌てて止める。
「いえ、お義姉さんが謝る事じゃないです!普通そんな話、きょうだいでしないし・・・」
「まあ、そうですけど、でも、情けなくて・・・」
 義姉はすすり泣き始めた。兄嫁がお茶とお菓子を勧め、3人はお茶とフルーツ大福を味わった。落ち着いた優子が、衝撃的な話を始める。
「・・・七海さん、私と大和は母親が違うって、聞いてないですか?」
「はっ?!え?!どういう事ですか?」
 寝耳に水過ぎて驚く七海。
「私は父の最初の妻の子供で、弟は後妻の子供なんです」
「えっ、そうなんですか?!そんなの夫から一言も・・・結婚相談所の時も、そんな話は一言も。独身証明書とかは必要でしたが・・・。それにお母さんは亡くなってると?」
「えぇ。その通りです。私の母も大和の母も、どちらも亡くなってるんです。それも産後すぐに」
「えっ?!」
 よくわからない展開に、困惑する七海と兄嫁。
 優子は少し黙っていたが、やがて意を決して話し始めた。
「たぶん、弟の、絶倫は・・・父譲りだと思います。現在70歳の父は、若い頃は大変女遊びが激しかったそうです。でも、結婚して落ち着けと言われて、私の母を嫁にもらいました。だけど、母が妊娠しても、毎日のように夜の営みを迫り・・・耐えきれなくなった母が実家に帰ったりする程でした。母は実家で里帰り出産するつもりだったのに、無理矢理引き留めて、出産した後、医師に産後1か月は安静にするように言われていたのに・・・。1か月経ってない母に、母に・・・無理矢理行為をして・・・それも毎日です。結局、産後の肥立ちが悪くて、まだ赤ちゃんの私を残して、母は亡くなりました」
 涙を流しながら語る義姉。
「私は父の母、祖母に育てられました。祖母も、息子の絶倫ぶりをいさめようとがんばってくれてたみたいです。産後1か月経ってないのに迫るなとか、言ってくれてたみたいですが、祖父が死んで父が大黒柱だったので、祖母も強く言えず。その後、私がまだ小さいのに父は再婚しました。それが大和の母です。夜の営みは店の女で発散していたが、お金がかかるから嫁をもらおうと言ってたらしく。で、大和の母にも全くおんなじ事をして・・・・亡くなりました。これらの事は、私が成長してから祖母に打ち明けられました。お前のお母さんを守ってやれなくて済まないって。大和も別の日に祖母から聞いたと思います」
 絶倫夫の絶倫ぶりはまさかの遺伝だった?!
                             次回に続く

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