資金調達の裏側で、何を考えているのか?
皆さん、こんにちは。
産業廃棄物業界向けAI配車計画SaaS「配車頭」を提供しているファンファーレ株式会社CEOの近藤です。
9月21日に資金調達を発表しました。
突然ですが、
「オラ、産業廃棄物業界の課題解決のためにスタートアップやってる、近藤だ。仲間にならないか?」
と急に言われたら「ハァ?」と思いませんか。
これが例えば
「オラ、教育業界の課題解決のためにスタートアップやってる、近藤だ。仲間にならないか?」
に変えると、教師の過剰労働の問題かな?とか、教育格差の問題かな?とか、なんとなく想像つきませんか。人によっては、「私も教育業界の課題を解決したいと思っていて…」と会話が弾む人も少なくないかもしれません。
社会からの業界認知は低いが、実態として全ての産業を支える社会インフラである産業廃棄物業界(略して産廃業界)。弊社は産廃業界に、ヒト(高度なIT人材)と、カネを集めて、業界のアップデートを行っています。
この記事では、
・パッと見では何をしているか、とーってもわかりづらい産廃業界の実情
・資金調達の経緯
・ファンファーレとして実現したい未来
をお伝えして、少しでもこの業界や弊社に興味を持って頂くきっかけになれば、と思っております!
ファンファーレの向き合う課題は、産廃業界の労働人口不足
まずは、馴染みがない「産業廃棄物」という言葉の意味について
廃棄物業界は大きくわけて、”一般”廃棄物と、”産業”廃棄物に分類されます。廃棄物ときいて、みなさんが想像しやすいのは一般廃棄物だとおもいます。一般廃棄物の代表的なものとして、家庭から出て定期回収される廃棄物があります。産業廃棄物はその名のとおり産業から出る廃棄物で、代表的なものとして大きなビルを建設する際の廃棄物や、工場で製品をつくる際の廃棄物などがこれにあたります。一般廃棄物と産業廃棄物では回収・管理・行政報告の方法などが異なっており、ファンファーレは産業廃棄物業界を初期ターゲットにしております。
続いて、産業廃棄物業界の現状について
1960年代頃より始まった高度経済成長に伴い、廃棄物量が5倍に増え、廃棄物事業者の数も一気に増えました。当時の創業世代が現在は引退世代になり、廃棄物業界は慢性的な不人気業界であることから労働人口不足が深刻化しています。日本の人口減少とともに、産業廃棄物の排出量が減っていけばバランスがとれるのですが横ばいとなっており、需要に対する人材供給のギャップが年々大きくなっています。
廃棄物業界が破綻するとどうなるのでしょうか。
ギリシャでは、経済破綻以降、廃棄物処理インフラが機能しなくなり不法投棄が常態化しています。同様の道を辿ってはなりません。
しかし、日本の労働人口は今後は増えていきません。なので、弊社はテクノロジーの力で、社会インフラの一つである産廃業界の企業・人々の生産性を圧倒的に向上することを目指しています。
弊社が目指すゴールイメージとして、海外の事例を2つ紹介します。
事例1:情報のインフラ整備で誰もが金融取引に参加できるように。
インド版マイナンバーカード「アドハーシステム」の普及で、銀行口座の開設件数は4億口座超え
インドではマイナンバーカード「アドハーシステム」を利用して本人認証が容易になったことで、貧困地域でも銀行口座の開設がしやすくなりました。例えば、貧困地域に銀行を建てて、身元の特定できない人の裏取りをして、口座開設や金融商品の販売をするのには、コストが見合いません。しかしITの活用によって、圧倒的な低コストで、本人認証が実現したことから、幅広い層の人々が金融取引に参加することができるようになりました。
事例2:病院不足のアフリカで、AIのチャットボットと遠隔診断で、83%の訪問診療を削減
先程は政府の事例を紹介しましたが、これは民間の事例です。イギリスのスタートアップ(babylon/babel)がAIチャットボットと遠隔診断が受けられるサービスをアフリカで提供しています。既存の医療サービスではアフリカで暮らす人々の需要を満たせない状況を、テクノロジーを活用して、既存の人的リソースでより多くの人々が医療サポートにアクセスできるようになりました。
上記の事例のように、私たちは、人々が社会活動を営む上で、必要不可欠な社会インフラを、テクノロジーを活用して提供コストを圧倒的に下げて、幅広い人が受益できる世の中をつくりたいと考えています。また、そのような企業群を「エッセンシャルテック企業」と呼称します。弊社もエッシェンシャルテック企業の一端として廃棄物業界の、圧倒的な生産性の向上に貢献したいと思っています。
民間企業が、しかもスタートアップが事業の公共性になぜこだわっているのか
先述したように、産廃業界は日本で暮らす全ての人々の生活になくてはならない業界です。産業廃棄物が適正に処理されなければ、公害や環境破壊が発生します。また、日本の産業廃棄物のリサイクル率は50%を超えております。金属やプラスチックなどの資源がリサイクルされることで資源に乏しい日本の社会が成り立っています。
そんなに、公共性の高い事業は行政がやればいいのではないかと考える方がいるかもしれません。ましてや公的な利益ではなく、私的利益追求の権化のようなスタートアップでやる意味があるのかと。デジタル庁の発足がまだ記憶に新しい昨今であれば、尚の事そう感じる方がいるかもしれません。
事例であげたインドやアフリカと日本の違いは、これから人口増加や経済成長が見込める発展社会であるか、人口減少や経済成長が鈍化していく縮減社会であるかという点です。
例えば、政府予算は現在、非常に厳しい状況にあると考えています。2021年度の一般政府歳出総額は予算ベースで106.6兆円となっています。これほどの金額であれば、公共部門は十分充実した内容になりそうに感じます。しかし、詳細は割愛しますが実際には使途が決まった固定的な支出が多く、予算規模が大きいにもかかわらず、十分にお金を有効的に使うことができていないのが現状なのです。
しかも多くを占める、社会保障費については、今後も増えていくことが予想され、それに伴って国債費も増える、という悪循環に日本は陥っているわけです。
※財務省:財政制度分科会(令和3年4月15日開催)資料より
産廃業界の課題は、なかなか社会で認知されているとは言い難いです。ストレートにいうと民主主義社会において、票になりやすい領域とはいえません。このことも含めて、民間企業がITを活用し、急成長を宿命付けられたスタートアップという形で産廃業界の課題解決に取り組むことに価値があると考えています。
縮減社会に突入するのは日本だけではない。
2100年をピークとして、人口増加は頭打ちになる可能性があると示唆されています。つまり、どの国も今世紀で縮減社会に順に突入するということです。世界がこれから経験する課題を、日本で先駆けて解決し、それを輸出することで、より大きな社会インパクトの創出にファンファーレの事業はつながっていくと信じています。
なぜ今、資金調達をしたか
2019年に会社を設立したあと、昨年9月に「配車頭(ハイシャガシラ)」という産業廃棄物の回収に特化したAIで、配車計画を自動作成するSaaSの提供を開始しました。
サービスリリース後の営業方針としてはアウトバウンドセールスへの注力を想定していました。誰も知らないサービスを少しづつ知っていただく努力をしていこうと。実際に、サービスサイトも、あまり問い合わせを期待していなかったので、10万円程度で知り合いにパッとつくっていただいた簡易的なものでした。(今はリニューアルが完了しております。)
しかし、蓋を開けてみるとリリース直後から、問い合わせを多くいただきインバウンドセールスで顧客獲得ができる状態となりました。着実に導入も進み、利用企業では、平均して10%、最大で30%以上もの配車効率のUPが実現できています。
予想を超える反響のため、すぐに営業・サポート工数や開発工数がパンクしてしまい、お客様をお待たせする状態になってしまいました。
「あかん!体制強化はよせなっ」
ということで、エンジニア組織の強化や、カスタマーサクセス部門の立ち上げを目的として資金調達を実施しました。
調達にあたって加わった新しい仲間との出会い
今回、投資家として、ALL STAR SAAS FUND、Coral Capital、アドバイザーとしてTresure Data創業者である太田さん、芳川さんに加わっていただきました。Coral Capitalはシード期から引き続き出資いただきました。ALL STAR SaaS Fundは今回のラウンドより新しく加わった投資家です。
新しく加わった方々との素晴らしい出会いについてもご紹介させてください。
新規投資家:ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロさん
SaaSをやるなら一度は事業相談をしてみたいと兼ねてより思っておりましたところ、プレスリリースをみてご連絡いただき、それから定期的に事業相談をさせていただいておりました。ALL STAR SAAS FUNDは「起業家とともに、100年続くSaaS企業をつくる」というビジョンを掲げています。人が生きていく以上、廃棄物がなくなることはありません。なので、長期的な目線で、投資をしていることが弊社の事業領域と相性がよいと感じ、仲間に加わっていただきました。調達後も日々、SaaS事業の伸ばし方や採用についても以前より踏み込んでアドバイスをいただいています。
新規アドバイザー:Tresure Data創業者、太田さん(左)、芳川さん(右)
Treasure Dataは、シリコンバレーで創業したビッグデータ分析企業で、コンピュータチップ設計企業ARMが、2018に約6億ドル(約660億円)で同社を買収しました。日本人がシリコンバレーに行き成功を収めた象徴的な事例と言えます。
私は太田さんとシリコンバレーのTreasure Data本社で、縁あって初めて出会いました。その頃は私は創業してまもなく事業計画のブラッシュアップのため、名だたる経歴の方々100名以上に壁打ちを行っていただいておりました。その中で最も、この人に話を聞いてよかったと感じたのが太田さんとの面談でした。この方に日々事業のアドバイスをいただければ、弊社の事業成長をより強固なものにできると確信し、出会ってから1年越しでアドバイザーになっていただくこととなりました。その際に、芳川さんもご一緒に入っていただけるという幸運に恵まれ、日々事業成長のご支援をいただいておりおります。
産廃業界でリープフロッグを実現する
産廃業者の方に「うちにはAIなんて早すぎるのでは?」と言われることがあります。電話とFAXで受注を行い、オンプレミスのサーバーがあり、部門に対して一つづつメールアドレスが発行されている状況で、急に先進的な技術に手を出していいのかといいたくなる気持ちは理解できます。
そんな方に、このような画像をお見せすることがあります。「新しいゲーム機を買うとき、ゲームに慣れてないからとファミコンから順番に買いますか?」と質問します。
違いますよね。既存の技術を経ることなくいきなり最新の技術に到達する現象、これをリープフロッグ現象といいます。(カエルが一足飛びにジャンプするように大幅なステップアップを遂げることからリープフロッグ(カエル跳び)現象と呼ばれる)
リープフロッグの事例として、中国は日本に比べてキャッシュレス化に成功していることがよく挙げられます。日本ではATMが普及し、現金を全国のコンビニどこでも引き出せることから、現金支払いに困ることがない社会システムが整備されてきました。それが逆にキャッシュレス化の阻害要因になっています。対して、中国は現金のやりとりで騙される危険性が高い背景から、キャッシュレス化が進みました。つまり、元々が不便だから最新技術を取り込みやすく先進国を飛び越えるのが容易だったといえます。
IT業界でのアタリマエが、産廃業界でアタリマエでないからこそ、どの業界よりも先進的な業界になれるポテンシャルを秘めています。だから、私たちは高度なIT人材を引き入れて、産廃業界をどの業界よりも先進的な業界にしたいと思っています。
またそれを、私以上に心から願うカスタマーサクセス担当の宮原というメンバーがいるので紹介させてください。彼は長崎の産廃業者の三代目の跡継ぎです。小さい頃は、父に回収車に乗せてもらい、小遣い稼ぎをしていました。父の仕事をかっこよく感じていたそうです。しかし、社会に出てみると業界への風当たりは心地よいものではありませんでした。自分がカッコいいと素直に思ったものと社会の認知のギャップを埋めたいと弊社で働いてくれています。
弊社が最短最速で成長するために力をかしてください
産業廃棄物業界は大きな市場で5.2兆円あり、事業者も11万社います。ですが、ここで大きなシェアを取っているソフトウェアサービスはなく、ファンファーレは今回の調達も含めて、本気でこの業界に入り込み、業界を大きく変えるチャレンジをします。
弊社には他にも、東大卒業後に元NECでAI研究をしていたCTOの矢部、産業廃棄物業界で18年システム営業をしていた岡部、元DeNA・ラクスル等の開発メンバー等がいます。
業界へのコネクションもあり、技術に強いメンバーもいますが、仲間がまだまだ足りません。
だから
「オラ、産業廃棄物業界の課題解決のためにスタートアップやってる、近藤だ。仲間にならないか?」
(あなたが、記事を読み始めたときのように「ハァ?」となっていなければ書いた甲斐がありました)
採用に関する情報は以下よりご覧いただけます
一番気軽なやつ
ちょっと真面目なやつ
以下の募集職種ごとに募集要件と、応募フォームがございます。
・バックエンドエンジニア
・フロントエンドエンジニア
・カスタマーサクセス
・事業企画/事業開発
・広報
・採用
エンジニア向けのやつ
開発環境とか、面談前にしれると嬉しい情報まとめてます。
いただいたサポートは事業開発につかわせていただきます。