被写体モデルに『彼氏が居るいない問題』を考える
なぜかTwitterなどで定期的に湧いてくる被写体モデルや撮影会モデルの彼氏がいるいない問題(というか彼氏いる宣言)。今回はこの件について個人的な意見を書いてみたいと思います。
■ 結論。わざわざ言う必要すらない。
結論からいうと、わざわざ公言する必要すらない。と私は思います。
■ 彼氏いる宣言をする発端は?
先ずはその発端となる事案を分析すると…
などなど、心無いカメラマンやファン、SNSのフォロワーなどから受けたストレスが発端となって、つい『!!彼氏居ますから!!』『!!彼氏がいたら撮りたくないなんておかしい!』などと怒りとともにTweetしてしまうケースが多いのではないでしょうか。
腹立たしい気持ちも理解できますが、それをSNS上で感情的に書いてしまうのは非常に悪手だと私は思います。
きれいごと抜きにして、被写体活動や撮影会モデル活動は『女性が好きな男性カメラマン』若しくは『女性の写真を撮ることを趣味とした男性カメラマン』が主たる顧客の人気商売であるというのは否定できない事実。自分の異性関係に付いてSNS上で触れるなどの行為は善良なカメラマンさえも遠ざける結果になりますし、見かたを変えれば異性関係の情報を公にすることはプロ失格とも言えるのではないでしょうか。
「俺は彼氏が居ようが気にしないよ!」「そんなひどいカメラマンが居るんですね!許せません!」など共感するリプライもあるかも知れませんが、リプすらしないで冷やかな目でみている数のほうが圧倒的に多いと私は思います。
対策としてプライベートに付け入るような迷惑行為をおこなうカメラマンに対しては、当事者だけに限定して自分自身で直接警告する・若しくは撮影会主催者など第三者が対応するなど『すべてにおいて水面下で解決するのがベスト』だと私は思います。
■ ポートレートモデルは非日常の世界(ファンタジー)を与えている
被写体として活動するモデルや撮影会モデルの皆さんに改めて認識して頂きたいのですが、結局のところ職業としての被写体モデル、ポートレートモデルは『外見』『作品イメージ』『顧客(カメラマンの)満足度』などで構成されるカメラマン獲得数で成り立つ人気商売だということ。
その中でも、顧客である『カメラマンの心理的な満足度』が最も重要で、現実としてモデルとしての技術や能力への評価よりも、相手への気遣いや対応、コミュニケーション能力や人柄、SNS上でのイメージ 等が被写体モデル・ポートレートモデルの高評価に繋がっています。
お客様の要望にすべて応じるサービス業ではないにせよ、女性としての理想像に近付くほど人気があがり収入にも繋がる特殊なモデル業なのです。
人気の被写体モデルや撮影会モデルの皆さんは心底からホスピタリティを持ってカメラマンに接しているかも知れませんし、仕事という立場から意識的にそのように振る舞う努力をしているのかも知れません。
どちらにせよ、撮影という非日常の世界の中で、理想的な女性像やモデル像というカメラマン側が勝手に想像するファンタジーの中で仕事をしていることに変わりはありません。
金銭を頂戴するプロである以上はその淡いファンタジーを壊さないであげる責任があります。
厄介なのは、カメラマン側がそのファンタジーの中にいることを忘れてしまう場合です。
■ コミュ能力の高いモデルはガチ恋されやすい
コミュニケーション能力が高く、人柄も良く、更には外見も世間一般から見て平均以上であれば『距離感を間違えてくるカメラマン』も出現することでしょう。
しかし、このようなカメラマンをさらにコントロールしたり遠ざけるのもプロの被写体モデルとしてのスキルであり完璧なコミュニケーション能力だと思います。
距離感を間違えているカメラマンに遭ったとしてもSNSで晒し上げたりという行為は極力避けるべきです。
もしそのスキルが持てないなら撮影会なり事務所なりに所属して線引きをしっかり引いてもらうのがベストだと私は思います。
わたしが知る中で、何人かの『本当に性格のよい女の子』『親しみやすく距離感が近すぎる女の子』がガチ恋カメラマンの感情をうまく処理できなかったり撮影時間をデート代わりのように扱われたりしてこの業界を去っていきました。
性格が優しすぎるとほかの誰にも相談せずに自分で抱え込んでしまうことも多々あるようです。
残念ですがそういった本当に性格の良い優しい女の子は、被写体活動や撮影会活動から一刻もはやく離れて幸せな日常を過ごすのがベストではないかと感じています。
■ ファインダー越しの女性の可愛さは実物の3倍UP
少々話しが逸れますが、ポートレート撮影では、自分の彼女でも何でもない初対面の女性が自分に向かって恋人のような満面の笑みを浮かべて視線を向けてくれるわけです。
四方を黒く遮断された「ファインダー」という光学窓をとおして飛び込んでくる笑顔というのは非常に殺傷力があるのです。
ひと回りもふた回りも歳の離れたカメラマンでさえ若くて可愛いモデルさんに好意を寄せてしまうのは仕方のないことなのかも知れません。
ただ、写真撮影には冷静さも必要ですし、女の子の可愛さに夢中になって撮影するタイプのカメラマンは、経験上何かしら問題(モデル相手以外にも)を起こすことが多く見られます。※全員に問題があるとは言いません。
撮影の際はカメラマンとして常に俯瞰の目を持ち、モデルに対してはモデルとしてきちんと接するように心がけて欲しいものです。
さらに話が逸れますが、モデルの可愛さに支配されている間は『撮影会チックな写真』『ザ・ポートレートみたいな写真』から脱却できないのではないかと思っています。モデルの可愛さに支配されず自分自身が撮影をコントロールできるようになると作画がさらに楽しくなくように思います。
■ ポートレート撮影は疑似恋愛?
撮影というのはそれだけで距離が縮まる、または距離を縮める作業が必要なこともあります。このためモデルとカメラマンの間で疑似恋愛的なシチュエーションになることもあると思います。
ですが、モデルは仕事としての演技の域を絶対に超えませんし、撮影が終わったあとも疑似恋愛が続くことは絶対に無いと言っていいでしょう。
ですのでカメラマン側は、目の前にいる素敵な女性は『その名のとおり"モデルという虚像"』だということ、彼女たちはカメラマン側に楽しんで貰えるように自分自身もたのしく振る舞っている可能性があることを肝に銘じておきましょう。今みているファンタジーの世界から足を踏み外すと大変な現実を突き付けられることもあるのでご注意を。
■ 彼氏いるの?と聞く側の問題点
モデルの居住地や職業などを聞き出すことが個人情報に触れるという認識はあっても、彼氏が居る居ないを聞くことがプライベートに触れるという認識が薄いように感じます。
モデル側も職業上で回答に困る質問でもありますし、仮りにモデルが答えたとしてカメラマン側にも何ひとつメリットがなく、やもするとモデルから嫌われる可能性がある質問なのに何故それを聞いてしまうのか不思議でなりません。
例えていうと、プロレスファンがプロレスの関係者に『プロレスって筋書きがあるんですよね?』と聞いたり、アイドルのファンがアイドルに対して『あの日のステージも口パクだったんですか?』などと野暮な質問をするのと同じで、自分自身でファンタジーを破壊し相手にも嫌われるような行為ではないでしょうか。
■ プロフェッショナル同士ならほぼ湧いてこない問題かも
『職業カメラマン』と『職業モデル』という関係であれば彼氏彼女の存在など全く関係ないですし隠す必要もなければ敢えて公言したりする必要も出てこないと思います。
どちらも現場の人たちとは男女の分け隔てなく取引先やビジネスパートナー。打ち上げの席などで彼氏彼女の笑い話が自然に出てくることもありますが、異性や恋愛対象として相手をみることは少ないと思います。
ですがなぜかカメラマンとスタイリスト、カメラマンと〇〇コーディネーター、カメラマンと女性ライターなど割りとそういう話を聞いたりするので、プロカメラマンとはいえ油断ならないとは思いますね。
■ 結婚になると突然祝福される不思議
被写体モデルや撮影会モデルの恋愛は、カメラマンからみてネガティブな情報なのに対して、結婚や出産となると突然祝福したい気持ちになるのは不思議な現象です。
そもそもがおめでたいことであるのですが、結婚出産となると、これまでいろいろ耐えて真面目に頑張ってきたんだなという尊敬と感謝の気持ち面が一気に出てくる感じなのでしょうか。
いづれにしても撮影会モデル、被写体の皆さんは結婚して自分自身の幸せに到達するまでの間、写真に撮られることで身を削り、私たちに僅かながら夢を見させてくれているわけですから最後くらいは祝福してあげたいものですね。