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アリはどの足から歩き出すのか?
「メディアコスモス新春美術館 没後40年 熊谷守一展」を見てきました。
熊谷守一さんは岐阜出身の画家で、17歳まで岐阜市で暮らしていました。お父さんはなんと初代岐阜市長ととても岐阜市にゆかりの深い人物でもあります。
昭和天皇が「この絵は、子供が描いた絵ですか?」とおっしゃったといわれる逸話もある独特の画風で、作品は没後40年を迎えた今でも新鮮で驚きと安らぎを感じます。はっきりとした輪郭線と輪郭線の間を油絵具で塗っていく描き方は“モリカズ様式”と言われ、もし名前をご存じない方でもきっと絵を見れば「あっ見たことある!」とはっきり思い出されるんじゃないかと思います。
たくさんの作品が展示されていてとっても贅沢な展覧会でしたが、なかでも晩年の写真や遺品が展示されていたのが良かったです。作品からでは知ることのできない熊谷守一さんの考え方や生き方に触れられた気がします。
僕は初めて知ったんですが、晩年の作品のほとんどが自宅の庭から生まれたんだと。
「ただ歩くものなら二分とかからないで、もとに戻れる範囲ですが、草や虫や土や、水がめの中のメダカや、蛙などいろいろなものを見ながら回ると、毎日回ったって飽きません。面白くて随分時間がかかるんです。」と言っています。
そんな理由でなのか、晩年は自宅と庭から一歩も出かけなかったなんて言う伝説もあるんですよ!
さらに「地面に頬杖つきながら、蟻の歩き方を幾年も見ていて分かったんですが、蟻は二番目の左足から歩き出すんです。」という驚くべき発見もされています!!!
その真意は定かではありませんが(笑)、命をありのままに見つめて、その神秘さや不思議さを生涯にわたり感じて生きられたなんてとても幸せだなぁと思います。
子どもころ、世界はいつも生き生きして驚きと感動に満ち溢れていました。
蟻の歩き方についても僕たちは知っていたかもしれません。
そんなまなざしを今大人の僕たちがこの社会の中で維持し続けるのはなかなか難しくなっている気がします。もしかしてすでに失っていたり。。。
「蟻はどの足から歩き出すのか知ってる?」
子どもたちに問いかけて、一緒になって身近にある命をあらためて見つめ直しみるのはいかがでしょうか?
子どもたちと出合う発見や驚きは、さまざまな情緒やゆたかな感受性を育んで僕たちにも世界を新しく見せてくれると思います。
*「にらめっこ」 2017年 3月4月号 掲載 に加筆修正