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牛の引っ張る力が私の足を地面に踏ん張らせてくれる|裏の畑Body work部『十牛図のワーク』
月に一度のシュタイナーの絵の教室「裏の畑」。後半のBody work部で『十牛図のワーク』を担当しています。前半の美術部の様子はこちら↓
10月18日。
秋の土用にもうすぐ入ろうとするところで、秋らしさを楽しみつつ段々と冬の足音が大きくなってくる頃でした。この日は、第四図『得牛』を体感できるワークをしました。↓これですね。
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牧人は探し求めていた牛をようやく捕らえます。しかし、牛は強くなかなか思い通りにはなってくれません。この図で牧人が牛と引き合っている縄は、プロセス指向心理学で言うところの「エッジ」。
「本当は〇〇がしたい」
「でも・・・・」の・・・の部分ですね。
牧人は牛に会えて嬉しいが、牛は自分のこれまでの当たり前の在り方を変えてしまう。ゆえに牛と向き合うと葛藤を生じるのです。そのエッジ・葛藤の部分を、実際に紐を引っ張り合いながら、体で体感してみよう!というのがこの日のワークです。
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牧人さん役には目隠しをしてもらって、牛に思いっきり引っ張られる時の心の動きを実況してもらいます。牧人は現実をみることはできても、ビジョンをみることができないのです。一方、牛にはビジョンが見えていて、どちらへ行ったら良いかがわかっています。しかし、牛は言葉でそれを伝えることができない。
目が見えない牧人。
言葉で伝えることのできない牛。
第四図ではその両者がぶつかり、お互いに引き合い、葛藤が生まれます。両者を繋いでいるのは一本の紐。その手応えだけを頼りに、お互いという存在を図っていくのです。
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3分間という時間を決めて、くたくたに疲れるまでひたすら引き合う。牧人は段々と言葉が出なくなっていきます。そして、言葉ではないもので牛の感触を捉えるようになり、牛はそんな牧人のことをしっかりと見ている。
そのようになったら、第五図「牧人」のフェーズに入ります。第五図ではお互いに疲れてゆっくりと歩き始めます。
疲れるって、ちょっとネガティブなイメージが持たれがちですが、もともと東洋では「異種のものが互いに馴染む」という意味があったようです。疲れるまで引っ張り、それをやめた時に一瞬フワッと軽くなる気がします。その感覚こそが「疲れる」。
その状態になったら、ペースを牛に委ね、牧人はゆっくりと体の感覚を頼りに歩けるようになります。そして、「ここだ!」という場所に出会ったら手を上げて止まるように牛に働きかけます。
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そしてとまった場所で、今感じていることや一連のワークを通じて感じていることをシェアします。言葉にすることで、紐を引っ張った感触が「今」という現実の中で生き生きとしたものとなっていきます。終了後、メッセージをやりとりしていると、参加者Nさんがとても印象的な言葉を残してくれました。
『牛の引っ張る力が私の足を地面に踏ん張らせてくれる』
なるほどな、と思いました。牛のまだ見ぬビジョンの道へと思いっきり引っ張る力も、牧人の踏ん張り現実にしていく力も、双方を信頼しているからこそ出てくる言葉なのだと思います。
牧人の見えない目を、牛は開いてくれる。
牛の伝えられない言葉を、牧人は代弁して社会に広げてくれる。
張り合っていた両者はやがて、お互いを生かしながら(ときどきぶつかりながら)一緒にあらたな道へと歩みを進めていくのです。
本日の素敵な写真も、
寺子屋てらこ・ホームスクーラーのゆかりさん。
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