ナルシストって自己愛者じゃないし

ナルシシズムとかナルシストという言葉は日常よく使われますが、 単なる うぬぼれ屋程度のレベルから 自己愛性パーソナリティ障害と言われるものまで、いろんなレベルがある。あえていえば、ナルシシズム・スペクトラムって感じでしょうか。
いずれにしろ、この概念用語を作り出したフロイトの意図というか思惑からはだいぶ離れてきているようです。

美青年ナルキッソスは、エーコーというニンフの求愛を拒んだ。
その罰として、ネメシスという神が 泉の水面に映った己の姿に恋するという呪いをかけた。むろん、それは 単なる 幻影でしかないので 恋が成就することはない。片恋に疲れ、やつれ果てたナルキッソスは、水面に写る自分の影にキスをしようとして転落し、溺れ死んでしまった。
やがてその泉のほとりには ナルキッソスの花が咲くようになった。


つまり 自己の投影という幻想に囚われ続けるのが ナルシシズム最大の特徴なんですね。
それは実体のない 幻なので、どこまで行っても満たされることはない。 それでいて本体というか実体としての自分自身には 思いが向いていないので、 なぜ自分が満たされないのかも理解ができないまま死んでいくしかない…。

ギリシャ神話の中では、泉の水面に映っていたのはナルキッソスだけだけだったかもしれない。
けれど、現代のナルシストの見つめている水面には、たくさんの人間が写っている。 ナルシストにとっては、そこに見える限りの人間の全てが、自分に関わっていて、なんらかの感情や思いを抱いている。自分のことなんて見てもいない人間のほうが圧倒的多数なんだってことには気づかないし、また認めたくない。なぜなら、自分を取り巻く人々は、ある意味で自分の分身みたいなもんなんですね。

だから、ナルシストは自分がいい気になれないとか満足できないっていうのは、ここにいる自分自身の問題ではなくて、そこに映る自分の投影を含む全ての人間のせいだと思ってしまう。(それもまたすべて自己投影にすぎないんですけどね。) 
というふうに、そうやって自分の虚しさを 誤魔化そうとする。 自分が 虚しい存在だということを認めてしまったら自己崩壊しちゃう。そうならないように自己愛によって必死に自分を守ろうとしつつ、空しいまま死んでいくしかない。

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