育成代行・アカウント売買・ゲームレッスン。中国のモバイルゲームユーザー向けビジネスをまとめてみた !
『共同富裕』の流れが進む一方で、中国ではゲームユーザー向けビジネスが賑わいを見せています。to C向けサービスの行く末やいかに? ということで、今回はエネルギッシュな同業界の事情をまとめてみました。
はじめに
こんにちは。Spicemart(スパイスマート)です。
私たちはアジアや北米を中心に、ゲームの開発・運用に役立つ情報を収集・分析し、お客さまであるゲーム企業に情報提供をしている調査会社です。
このnoteでは「ゲームやアニメが好き」「世界のゲーム事情を知りたい」といった方々にも興味を持っていただけるような内容を配信しています。
今回も中国のゲーム市場についてお届けしていこうと思います。
『to C』向けサービスを提供するプラットフォーム
中国市場で人気を得ているモバイルゲームユーザー向けサービスのプラットフォームは下記の通りです。
●プラットフォーム一覧
これらプラットフォームの半数以上は、下記のうち複数のサービスを提供しています。
①レンタルプレイヤー
➁育成代⾏
③アカウント売買・レンタル
④ゲームレッスン
⑤その他、ボイスチャットなど
業界規模が大きいのはレンタルプレイヤーと育成代⾏
中国ではeスポーツの人気が非常に高く、そのため投資も受けやすいようで、資本の観点からもこの分野へ参入する企業が多く見られます。
ここでは、いくつかのサイトにおけるサービス提供方法などをまとめてみます。
例えばYuema(約嗎)のプレイヤーレンタルでは、専⽤通貨「Y幣」をレンタルしたいプレイヤーに支払うことで、指定のゲームをプレイしてもらうことができます。
ちなみに「Y幣」と⼈⺠元のレートは 1:1で、時間単位での課⾦となります。
対応しているゲームは『PUBG』『ブロスタ』『Call of Duty』など。人気なものは一通り揃っています。
また、同プラットフォームは育成代行などのサービスも提供しています。
特徴的なのはユーザーとプレイ相手や育成者との距離を近づけるようなオンライン・オフラインイベントを積極的に開催している点で、これらによりサービス全般の盛り上げを図っているのです。
複数のサービスを提供するサイトが多い中で、一つのサービスに特化したものもあります。
例えば2021年10月現在、中国最⼤の『リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)』育成代⾏サイトと言われているDailiantong(代練通)は、育成代⾏を専門としています。
同サイトは『伝説対決』や『和平精英(PUBG)』などの人気ゲームにも対応しており、育成を求めるユーザーとハイスペックユーザーを繋ぐことで、
両者から⼿数料を得てビジネスを成立させています。
レンタルプレイヤーと育成代⾏のサービスは人気がある一方で、日本と同じく中国でもかなり問題視されており、一部メディアからは規制と監督を求める報道がされています。
そもそも中国では開始当初から若くて可愛い⼥性を集めるサイトが多く、”プレイヤーレンタルは出会い系”との指摘が絶えませんでした。
このような批判を受け、サイト側は利用者に年齢確認を要求するようになりましたが、法的な縛りがないため年齢を偽って登録しているユーザーが多く、出会い系との指摘を払拭しきれてはいません。
育成代⾏についても、育ててもらう側のゲームアカウント権限を預けることになるため、ビジネス成立の鍵は育てる側の良⼼にかかっているわけです。
この点をどう保護していくのかが、プラットフォーム側の最大の課題となっています。
保証にしのぎを削るアカウント売買・アカウントレンタル
中国では、あらゆるものが取引の対象となります。
例えば、下記のようなものがあります。
・ゲーム内通貨
・装備アイテム
・キャラクター成⻑済みのアカウント
・初回チャージアカウント
・初回ガチャ前のアカウント
日本ではRMT(リアルマネートレード)は法的に取り締まる条項はありませんが、基本的にはゲームの利用規約で禁止となっています。
違反した場合には、利用停止やアカウントの削除がされることも珍しくはありません。
こうした事情は中国も同様で、各プラットフォームは第三者機関や保険企業と提携してユーザーの信頼獲得にしのぎを削っているのが実情です。
例えば、中国で知名度の高いJiaoyimao(交易猫)は、サービス保証プラットフォームとして取引に関わる双⽅を保証することで⼿数料を得ています。
交易猫で取引可能なアカウントはiOS、Androidといった主要OSやUC・360・91などのゲームチャネルのログインアカウントで、AlipayやWeChatPayによって決済が⾏われます。
決済方法がシンプルでいい!というコメントも多く見られ、そういった点も人気に繋がっているようです。
交易猫と肩を並べるTaoshouyou(淘⼿遊)の保証はさらに一歩先を行っており、中国⼈寿財険という保険会社と提携して、モバイルゲームのバーチャル資産に対して「取引安全保険」を取り入れています。
万一、保険加⼊者の財産が盗まれたり、紛失した場合は掛け⾦に応じて補償が受けられます。
ユーザーに安心を提供するという点では、Zuhaowan(租号玩)とHuanhaoba(換号吧)も見逃せません。
租号玩では、まず低価格でハイエンド なゲームアカウントをレンタルで体験させ、その後で購入するかどうかを選択させています。
レンタルと売買を結びつけたことが好評を得て、登録ユーザー数は5,000万人超えとなっているようです。
ユーザー間の取引を促すサイトが多い中、換号吧は⼈気ゲームのアカウントを買い上げて、その後に欲しいユーザーに売却するという独自色を打ち出しています。
売り手も買い手もサイトと取引することになりますから、個人情報保護に繋がり、リスクは軽減されます。
アカウントレンタルでは、Moyouyou(魔遊遊)が多くのゲームをカバーしていることで注目を集めています。
取引に対応しているゲームは300作以上で、特に新作ゲームの取引ができるということでユーザーが集まっているようです。
魔遊遊ではサイト内にレンタルセンターのページを設けており、ユーザーはここで⾃由にレンタルしたいゲームアカウントを選び、所有者と取引を⾏うことができます。
ほとんどは時間単位での課⾦となっています。
ゲームレッスンの指導スタッフ600万人超え
何しろ人口13億人、ゲームユーザー6億人の国ですから、コミュニティの中のほんの小数が求めるようなものでも、中国全土を合わせれば途方もないユーザー数となります。
最も知られたレンタルプレイヤー・レッスンサービスのプラットフォームであるBixin(⽐⼼) の発表によれば、2020年において国内外1,606都市から5,000万⼈を超えるユーザーがこのサイトに登録中だそうです。
うち2020年度の新規ユーザーは2,000万⼈で、登録中の指導スタッフは600万⼈を超えているとのこと。
日本人口が約1億2千万人なので、日本人の約40%にあたる人間がゲームの指導や相手を求めて登録していることになります。
⽐⼼のサイトでは、⼀般ユーザーは「⽐⼼幣」という専用通貨を使ってレンタルプレイ ヤーやレッスンの決済を⾏うことになります。
「⽐⼼幣」と⼈⺠元の レートは1:1で、レッスンは指導者の技術とサービスに応じて価格が変わり、 時間ごとの課⾦と、1戦ごとの課⾦とに分かれています。
歌手が登場するボイスチャット
ボイスチャットに力を入れているサイトも見受けられます。
総合的なプラットフォームDaofengdianjing(⼑鋒電競) では、プレイヤーレンタル・コミュニティー・ゲームリリースなどのサービスを提供しています。
特に支持を得ているのがボイスチャットで、決済する前に⾳声テストで相⼿の声を聴いて、⾃分のタイプか確認ができることがウケているようです。
ちなみに同サイトの発表によれば、サイト登録ユーザーは3,000万⼈で、ハイエンドゲームアカウントの合計価値は1億元を超えているそうです。
Laoyuegou(撈⽉狗)のボイスチャットも、有名歌⼿がチャットルームに突然登場して、ユーザーから歌のリクエストを受け付けているということで話題になっています。
ボイスチャット以外にも、声優との会話や恋愛相談、相場鑑定、iOSチャージ代⾏、ポイント交換など、どのプラットフォームも様々な趣向を凝らしてユーザーを惹きつけています。
幾つものプラットフォームが乱立する様は、まさに戦国時代に群雄割拠した小国のようであり、同時に百花繚乱の華やかさも見せてくれています。
しかし、習皇帝によるゲーム産業への制裁が始まっているのも事実。
どの企業もこれからどんな政策が打ち出されるか戦々恐々としていることでしょう。
ただ人口の多さからヒットすれば売上が莫大になるのも確かで、おそらく今後は抜け道を探すように、中国人特有のバイタリティでさらなるサービスを生み出していくことになるのではないでしょうか。
以上です。
今回の情報はいかがだったでしょうか?
アニメやマンガのプラットフォームなどもまとめてますので、よろしければぜひご覧ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?