インドのゲーム市場①人気プラットフォームや決済方法など
注目される巨大ゲーム市場について2回にわけてご紹介していきます。今回はユーザーの特徴や人気のプラットフォームなど。
はじめに
こんにちは。Spicemart(スパイスマート)です。
私たちはアジアや北米を中心に、ゲームの開発や運用に役立つ情報を収集・分析し、お客さまであるゲーム企業に情報提供をしている調査会社です。
このnoteでは、「ゲームやアニメが好き」「世界のゲーム事情を知りたい」といった方々にも興味を持っていただけるような内容を、月に2〜3本配信しています。
今回は、次なる市場インドについてご紹介します。
インドゲーム市場の規模
インドの市場は、中国に匹敵する規模です。
まずは下記をご覧ください。
インド
人口:13.6億人
ゲームユーザー:約4億人
中国
人口:14.3億人
ゲームユーザー:約4億人
日本
人口:1.2億人
ゲームユーザー:約0.5億人
ゲームユーザー数は中国とさほど変わりませんが、日本とは比較にならないほど大きな市場であることが分かります。
さらに下記の平均年齢を見ると、今後最も大きく飛躍する市場であることがわかります。
インド
人口の平均年齢
約29歳
中国
人口の平均年齢
約39歳
日本
人口の平均年齢
約47歳
ユーザーの特徴
インドのゲームユーザーは18~24歳が最も多く、全体の約60%を占めています。
Bank of America のレポートによると、2019年のインド全体のモバイルゲーム総プレイ時間は約6億6,200万時間。
さらにコロナ禍において、国民1人あたりのプレイ時間が151分から218分(+1時間以上)に増加したとのことです。
公用語は「ヒンディー語」ですが、パンジャブ語、ウルドゥー語、タミル語、カンナダ語など、インドは主要なものだけで十以上の言語がある多言語国家です。
ヒンディー語を全く話せない人もいるわけなのですが、ただ、英語が補助公用語となっているため、英語を上手く操れる人が多いのもインドの特徴のひとつです。
今まではゲームに消費出来るのが富裕層であり、この層は英語を使える人が多いため、ゲームの多くがローカライズされずに英語で販売されてきました。
しかし今後は、安価なスマートフォンが広がりをみせているため、ローカライズするには注意が必要でしょう。
インドゲーム産業の成長率
インド商工会議所連合会(FICCI)の報告では、2020年におけるインドゲーム産業は、前年比40%の成長を遂げているそうです。
3月から4月のコロナによるロックダウン期間にいたっては、オンラインゲーム産業は21%増、モバイルゲームのダウンロード率は142%増に。
また、イギリスKPMGとIFSG(Indian Federation of Sports Gaming)の報告によると、インドのゲーム市場は2018年時の約666億円から2023年には1,807億円の規模に成長する見込みとのことです。
課題の克服
ゲーム市場の発展の鍵を握るのは、さらなるスマホの普及やネット環境の改善でしょう。
これは一例ですが、2016年にインドの通信会社JioがLTE 4Gの低価格プランを導入すると、6か月で1億人以上が加入。
モバイルゲーム市場は、前年比約58%増の急拡大となりました。
さらにこれを皮切りにライバル企業同士の値下げ合戦が勃発し、インフラも急速に整備されることに。
結果、国内全体の月間データ消費量は2億ギガバイトから、約8倍の15億ギガバイトまで拡大しました。
インド政府は現在も5G導入と通信インフラの改善に力を注いでいますので、市場はさらに大きく発展していくことになりそうです。
ちなみに、現在のインドのスマホ契約者数は11億6千万人とされています。
主要なプラットフォームと決済方法
インドは先進国に比べるとネットインフラが脆弱なため、オンラインゲームよりシングルプレイゲームの方が人気で、現況に合った販売サイトが勢力を伸ばしています。
【PCゲーム市場】
英語を使う人が多いため、北米のゲームプラットフォームを利用することに抵抗がなく、Steamが主要なプラットフォームとなっています。
またリセラーである「G2A」も人気です。
【モバイルゲーム市場】
アプリを通じた収益率が世界第3位と、インドのモバイルゲーム市場は活況を呈しており、ダウンロードはGoogle PlayとApple Store が中心となっています。
・人気プラットフォームの決済方法
銀行システムの整備が進まないなどの理由により、インドでは国際クレジットカードの発行が難しく、海外企業が参入しても思うように発展できない状況が続いていました。
しかし現在は国や企業の様々な努力により、決済面の問題は小さなものになりつつあります。
【Steam】
国際クレジットカード利用が難しいため、当初Steamの利用も困難でした。
しかし2016年以降、Steam側が国際クレジットカードだけでなく、現地のクレジットカードやプリペイドカード、様々な決済代行システムを利用できるよう尽力したため、Steamはインドゲーム市場の中心に踊り出ました。
なお現在は、B2B サービスのNovaplayがSteamの決済周りを担当しているようです。
【G2A】
インドは為替レートや物価が安いため、ベネズエラやウズベキスタンなどの販売価格の安い国からゲームを購入して転売するリセリングが活発です。
最も取引件数の多いリセラーサイトは「G2A」で、Steamを中心としたゲームの販売数は23,000作以上、利用者数は約2億人にのぼるとも言われています。
「G2A」はゲーム商品に特化した売り手と買い手を繋ぐプラットフォームで、個人販売者がキーを売買するためリスクはありますが、日本でも利用可能です。
【Google】
モバイルゲームのダウンロードに最も多く使用されるプラットフォームは、Google Playです。
モバイルユーザーの95%以上がAndroid OSを使用しているためです。
開発会社もGoogle Playを積極的に活用しており、中国や東南アジアなどでよく見られるような、ホームページなどからAPKを直接ダウンロードする方法はあまりとられていません。
そのため、殆どのゲームがGoogle Playに繋がるリンクを提供しています。
決済面では、2019年まではGoogle Payと提携している銀行のUPI (Unified Payment Interface)でのみ取引が可能でした。
しかし現在はインターネット環境の充足とともに取引方法も拡大し、
◆クレジットカード
◆デビットカード
◆ネットバンキング
◆Google Playギフトカード
◆キャリア決済(Vodafone Idea)
…などによる決済が可能となっています。
※UPI: インド決済公社NPCIが開発したモバイル環境下で銀行と銀行を繋げるリアルタイム決済システム。
なお昨今インドでは、ルールの運用を巡ってGoogle Playストアへの反発が強まっており、独自にアプリを配信して課金する動きも生まれています。
日本との関係
2020年6月に中国との国境紛争により、インド政府は中国製アプリ118作を使用禁止にしました。
対象となったのはTikTokやWechat、クラッシュオブクランやPUBG MOBILEなどです。
また外国投資に関する規制も大幅に見直し、中国の投資家に対し事前に政府の承認を得ることを義務付けています。
国民の間でも反中感情が高まっており、「中国ボイコット」がTwitterのトレンドのトップを占めるなど中国製品ボイコットの動きが進んでいます。
これに対応するように、中国の投資家も近年インドに対して行っていた投資を中止しており、両国間の経済発展は悪化の一途をたどっています。
それとは反対に、対中国防衛も含めて、日本とインドとの繋がりは強化されています。
インド政府が今年1月、民間人に贈られる勲章で2番目に高いパドマ・ビブシャン章を安倍晋三前首相に授与したのは記憶に新しいところかと思います。
日米豪印で構成される「クアッド(戦略対話)」も進んではいるようで、今後さらに結びつきは強くなっていくものと予想されます。
経済面でも、スズキ自動車がインド市場の50%のシェアを誇るなど、日本企業のインド進出も活発化しており、日本の新幹線方式による高速鉄道も計画されています。
ゲーム産業においても、ゲームショウなどに日本は積極的に出展しています。
安価なスマートフォンの普及と通信料の値下げにより、インドは世界有数のゲーム大国となりました。
今後、日印政府の繋がりが強くなればなるほど、尖閣諸島の問題が取り沙汰されている中国を避け、インドへ進出する企業は増えていくことになるでしょう。
以上です。
次回はインドで人気の高いゲームやローカライズの情報などをお届けする予定です。
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