韓国のゲーム法改正論争
人気ゲームに確率操作疑惑や運営上の問題が噴出した韓国では、ユーザーの怒りがトラックデモに発展。国も規制に乗り出しましたが、企業の反発やさらなるユーザーの怒りで、騒動は収まる気配をみせません。
はじめに
こんにちは。Spicemart(スパイスマート)です。
私たちはゲームに特化した調査会社です。
このnoteでは、アジアを中心としたゲームやアニメの情報を配信しています。今回は韓国の情報です!
韓国ゲームユーザーの怒り
韓国では人気ゲームに次々と問題が起こり、ユーザーから批判が殺到しています。たとえば…
・当選確率0%のアイテムに課⾦させていた事が発覚したネクソンの『メイプルストーリー』
・スタートダッシュキャンペーンが突然中断されたことで炎上したネットマーブルの『Fate/Grand Order』
・確率型アイテムや運営⽅法でユーザーと確執が生じ、解消のための懇談会が14時間にも及んだネクソンの『マビノギ』
最近ではNCSOFTの『LineageM』も批判を受けており、これらの疑惑に対するユーザーの怒りは「トラックデモ」と呼ばれるデモにまで発展。
ユーザーは国会やゲーム企業の前に⼤型の電光掲⽰板をのせたトラックをとめ、疑惑の解明や確率公開などのメッセージを表示し改善を訴えています。
ゲーム法改正への動き
この事態を受け、さすがに国も動き始めました。
韓国のゲーム法(ゲーム産業振興のための法律)は、2006年の制定以降、⼀部改定が⾏われたものの、15年間⼤きな改正は行われていませんでした。
今回、”全⾯改正すべきだ”という声が多く挙がったのも、そのためでしょう。
結果としてはゲーム担当部門が作成した草案を基に、イ・サンホン議員が全部改正案を提出し、昨年2020年12⽉に発議されることとなりました。
法改正のポイントは以下の通りです。
◆確率型アイテムの定義
・直接または間接的にユーザーが有償で得たゲームアイテムの中で、効果および性能などが偶然的要素によって決定されるもの
・有償で得たアイテムと無償アイテムを結合した場合も含み、無償で得たゲームアイテム同⼠の結合は除外する
◆確率型アイテムの情報公開
・ゲーム事業者は確率型アイテムの種類ㆍ種類別供給確率、及びその他⼤統領令として定める事項を開示しなければならない
◆違反の場合
・営業停⽌、登録取消、閉鎖措置、罰則(2年以下の懲役または2千万ウォン(約194万円)以下の罰⾦を科す
ゲーム協会からの反発
法改正の動きを受け、ネクソン・ネットマーブル・カカオゲームなどの大手企業が加入する韓国ゲーム産業協会は、ただちに反対を表明。今年2021年2⽉に意見書を提出しました。
意見書の内容は以下の通りです。
● 改正案に盛り込まれた確率型アイテムの定義が明確でない
● 数百種類以上にのぼるアイテムのバランスを取る必要があるが、特に⾼性能アイテムについては莫大な投資をして研究してきたため、開示は営業権の侵害となる
● 確率型アイテムが「確率変動」の構造を持ち、 ユーザーのゲーム進⾏状況によって確率が常に変動するため、 ゲームの開発者もその確率の正確な数値が分からない場合がある。
また特定のアイテムについては、正確な供給確率の算定すら不可能な場合が多い。そのため数百万⼈以上のユーザーを相⼿に、各ユーザーの経験値や進⾏に合わせて確率型アイテムの種類別供給確率を提供する、ということは現実的ではない
協会の対応にユーザーから批判殺到
ゲーム協会が訴えた『開発者も正確なアイテム登場確率を知らず、確率を算定する事すら不可能である場合が多い』という内容が、ユーザーのさらなる批判を招いてしまいます。
なぜなら韓国のゲーム業界はそれまで自主規制することを宣言し、確率を公開してきたからです。
確率を公開しないゲームについても、韓国ゲーム政策機構(GSOK)を通してリストを公表していました。
⾃主規制によって公開してきた確率は何だったのか!
すべて偽りだったのではないか!
など、事情を熟知しているユーザーから怒りが噴出し、「今まで公開されてこなかった変動アイテムの確率も開示すべきだ!」という声までも。
この事態を受けて、ゲーム協会側は「誤解を招く内容があったため訂正する」と発表。
しかしその対応ですら「消費者が払った金銭に見合う情報は提供すべき、という今回の重要な点については曖昧なままである」と反感を買っています。
協会、批判を受けて意見書を訂正
収まりのつかない世論を背景に、協会側は意見書を訂正しました。
訂正前の内容と訂正後の内容は以下の通りです。
残念ながらこの修正についても、ユーザーから批判が殺到します。
韓国ゲーム業界はかつて、「海外サーバーを通すゲームは韓国国内法をくぐり抜けることができるため、確率公開は韓国企業にとって不利益である」と訴え、確率公開を退けたことがあったからです。
にも関わらず、「なぜ今回は⼀部の海外ゲームにも影響が及ぶという理由で、法改正を慎重にすべきという海外企業に配慮した姿勢を見せるのだ」「都合が良すぎるのではないか」という意見が出てきたのです。
そもそも噴火寸前だったユーザーの怒り
過去10年に渡って、韓国ゲーム企業は確率については企業秘密である、との主張を繰り返してきました。
確かにゲームの進化に伴い、知的財産権や著作権、企業秘密にあたるものは守るべきです。
しかし韓国ではこれまでどんなに法改正が叫ばれても、業界の強い反発で改正されずにきたという歴史もあるのです。
例えば、2011年。
国政監査(韓国国会が毎年定期的に国政全般について実施する監査)で確率型アイテムが議題に上がりました。
そのためゲーム委員会は、確率型アイテムについての指針を作ることにし、ネクソンやネットマーブルなどの開発会社10社と懇談会を開くことを提案しました。
しかし業界側は企業秘密であるという姿勢を通すため、この会に参加しませんでした。
2016年にも、セヌリ党のチョン・ウテク議員と⺠主党のノ・ウンレ議員が、それぞれゲーム法の⼀部改正案を発議していますが、いずれも国会で成⽴していません。
このような経緯があるため、今回、世論もユーザーに同情的で、プレイヤーが金銭を払ってアイテムを獲得するのだから、消費者の知る権利に該当するという声が優勢となっています。
コンプリートガチャ禁止など新たな動き
世論の声に押されるように、新たにユ・ドンス議員がコンプリートガチャ禁⽌を含んだ改正案を提出。こちらも発議となっています。
改正案の主な内容は次の通りです。
● 確率型アイテムの正確な獲得確率または期待値の公開を法に明⽰
● 過度なギャンブル性により批判を受けている「コンプリートガチャ」形式の商品の販売禁⽌
● ゲーム企業が⾃社の利得のために確率を操作したり、実際と異なる確率を提⽰した場合、それによって得た利益の3倍以内の罰⾦を科す
他にもネクソンの創業者キム・ジョンジュ⽒と「メイプルストーリー」のディレクターであるカン・ウォンギ⽒が、国政監査の証⼈として出頭を求められているというニュースも報道されています。
現在、各法案は審議を行っているところですが、はたして一件落着となるのでしょうか。
以上です。
いかがだったでしょうか?
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