
気、血、津液(水)、精、そして神から「気」について
気の存在とその役割を理解する
気ってなんですか?気はあるの?
気はあります。ですが気は見えません。あなたは見えないものを「ある」と信じますか。身近に見えないけどあるものがあります。それは空気です。空気は見えませんが間違いなくあります。なければ呼吸はできません。
昔の人は、見えないけど間違いなくあるものを気と表現したのです。先の章でも記述した通り、「気」とは、見えるものを見えないものが動かす、これが「気」なのです。風車は風によって動きます。風は見えませんが形ある風車を動かします。では、人はなぜ動くことができるのでしょうか。体には気が流れていて気によって体が動くのです。ここで、筋肉や神経によって動くと考えてしまうと気の存在を理解できません。少し体について深堀りしてみましょう。
筋肉が縮む(収縮)したり、伸びる(弛緩・伸長)したりするのは神経の指示によるものです。神経は電気信号を流して筋肉に刺激を与えます。筋肉は筋肉に蓄えている物質(ATPという物質のこと)を分解してエネルギーを得ます。生理学では筋肉を動かす力をエネルギーと表現しています。東洋医学では神経に流れる電気もエネルギーも気と表現したのです。電気もエネルギーも見えませんがあります。あるから形ある筋肉が動くのです。
余談ですが、雷はなぜ見えるのでしょうか。雷は電気なので見えないはずです。しかし稲光のようにジグザグに空から地面に落ちる雷を見たことがあると思います。これは雷が空気中を通るために発生する強い熱が光として見えるためです。ガスは見えませんが、火を付けることによって高温となり炎となって見えるようになります。電気も高温になると見えるのです。ただし、雷のように1億ボルトくらいの電気で空気中の温度が3万℃になった場合です。体の中ではこのようなことは起こりませんので神経を流れる電気は見えません。
このように気は見えないですがあるのです。現代的に言えば気は形あるものを動かすエネルギーなのです。
気はつくられる
気は先ず両親の精(現代的には遺伝子と考えるとイメージしやすいかと思います)から作られる気があります。これを「先天の気」や「原気・元気」と言います。そして、飲食から作られる気を「後天の気」と言います。先天の気、後天の気はともに五臓六腑の「腎」に蓄えられます。蓄えられた気は腎から全身へ分布し臓腑を始動させ生命活動の原動力になります。
後天の気は他にもありますので、以下に解説します。
後天の気はいろいろある
後天の気は飲食によって作られると説明しました。この飲食と呼吸によって宗気(そうき)が作られます。宗気は胸に集まり心肺活動を支えます。宗気が充実していれば呼吸はゆったりとして均一です。そして発語ははっきりして声が大きくよく通ります。宗気が不足すると呼吸が浅く早く微弱で発語ははっきりせず、声が低くなります。宗気は五臓六腑の心を動かす働きがあり、心拍の力とリズムに関係します。
次に飲食によって作られる気として営気があります。これは血の一部として全身をめぐります。営気は豊かな栄養分を持ち体の組織や器官などの活動を支えます。
同じく飲食によって作られる気として衛気(えき)があります。衛気はの役割は3つあります。
1.体表を防御する
2.全身を温める
3.体温を一定に保つ
また、衛気は昼夜で分布する部位が異なります。昼間は体表部を二十五周し、夜間は体内部を二十五周します。
気の役割
気は活動性が高く体を絶えず休むことなく運動しています。気の運動により人体に活力を与え、成長・発育を促します。また、気は体の組織や器官の働きを促進し正常な機能を発揮させます。(この役割を気の推動作用と言います。)
気は体を温める作用があります。気は熱源として働き体の組織・器官を温め全ての機能がスムーズに行われるようにします。(この役割を気の温煦(おんく)作用と言います。)
気は体の組織・器官などを正常な場所にとどめる役割があります。また気は血の流出や体液(汗、尿、鼻水、涙、リンパ液など)の過度な流出を防ぎます。(この役割を気の固摂(こせつ)作用と言います。)
気は体表を覆い外部からの病原体の侵入を防ぎます。また病原体が体内に侵入した場合に対抗する役割もあります。(この役割を気の防御作用と言います。)
気は体でいろいろな変化を引き起こす役割があります。いわゆる新陳代謝のことです。例えば、飲食物から気・血・体液・精などが作られることです。(この役割を気化作用と言います。)
気は体を駆け巡る
気は体を昇ったり、降りたり、出たり、入ったりします。気が昇・降・出・入という4つの方向に運動することを気機と言います。これらの気の運動が協調されることにより体の平衡を保っています。また、気機は体の新陳代謝を促進させ、生命維持の役割を担っています。
気が不足するとどうなるか
気が何らかの理由により気が不足し、気の役割が果たせなくなった状態を気虚(ききょ)と言います。気虚は飲食不足、大病、長い闘病生活、過労、内臓の機能不全などで起こります。この場合、倦怠感、無力感、疲れやすい、などが現れます。また、めまい、息切れ、話すことがおっくうになる、汗かき、風邪を引きやすくなるなどの症状が現れます。
気虚に加え気の上昇が不足する状態を気陥(きかん)と言います。慢性的な気虚、過労、多産、産後の不養生などによって起こります。気陥は気虚の症状に加え、内臓下垂、下痢(慢性の下痢)、脱肛、子宮脱などが現れます。
気虚が極限まで進むと気脱になります。こうなると意識を失い、呼吸は浅くなり、手足が冷え、顔面は青白くなり、玉のような汗をかいたりします。
気が滞るとどうなるか
気の運動である気機が軽度に循環障害を起こした状態を気鬱と言います。この気鬱の程度が強くなった状態を気滞と言います。気鬱・気滞は気分や感情の変化が過剰に強く長く続いたときに起こります。この場合、張るような痛みを感じることが多いです。胸や肋骨の下あたりに痛みや不快感を感じたり、腹部の膨満感(ぼうまんかん、お腹が張ること)が起こります。また鬱結が精神面に影響すると抑鬱感が現れます。
気が昇り過ぎるとどうなるか
気の上昇が過度になり、下降が不十分になった状態を気逆と言います。これも感情の変化が過剰になった時に起こります。この場合、怒りやすくいつもイライラしている、頭痛やめまい、咳や喘息、不快感、嘔吐、ゲップ、しゃっくりなどが現れます。
この章のまとめ(ここを読めばだいたい解る)
よろしければサポートをお願いいたします。