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『原稿用紙10枚を書く力』齋藤孝

図書館で著書を見つけるとテンションが上がり借りてしまう齋藤孝さんの本です。著書がたくさんあるのでよく見かけ、つい手に取ってしまいます。「日本語であそぼ」や「全力脱力タイムズ」にも出演されているため、たまに観ます。齋藤孝さんですね。

難しい話でもわかりやすく噛み砕いて書くのがとても上手い人だと思っています。端的に言うとアホでもちゃんとわかるように書いてくれている。小学校の頃から齋藤孝さんの本によく触れていた記憶があります。

今回読んだ本は、図書館でものを書くことについて述べられた本を探していたところ、見つけました。

『原稿用紙10枚を書く力』。原稿用紙10枚というと4000字でしょうかね。そのくらいの量をつっかからず書けたらいいなあと思い、この本を開きました。


この本では、原稿用紙10枚を怖がらずに書ける人を「文章が書ける人」と定義している。長い文章を書く基礎的な力があり、先を見通せるため、本を書ける可能性を手にした人だと。そして書くことをマラソンに例え、トレーニングすれば誰でも距離を伸ばしていけると。

まず量をこなしてから質を上げることが大切だという。一番書けそうなテーマで不安をなくして、とにかくあらゆる手段を使って10枚書く。例として挙げられていたのはアニメのムーミンだ。
書きたいことを録音して、それを書き出すというのも著者には合っていたそう。(私も試したことがあり、スピードが向上するのを実感しました。)

起承転結の「」から考えて書くこと。「結」は無理やり考えても大丈夫であり、「転」を上手にごまかすのが「起・承」。「転」が肝心。
書く力をつけるには書くという基本作業が必須であり、できたという自信と経験から欲は生まれる。


書こうと思ったら素材を打ち込んでおく。←これ大事だな実感しています。書くためのきっかけになる。
書く力を培うことは文章の意味の含有率を上げることになり、考える力を培うことになるという。
主義主張、書く人の「新たな気づき」を入れ込み、他人にクリアにわかるようにすることを目指す。アイディアを出すときには自分の中の暗黙知を引っ張り出すので主観が色濃いけれど、その後の作業では客観を主体にする。

制限時間をつけて読むという提案は、新鮮でした。すべて読めないのなら2割を読めばよい。書くという目的のもとで本を読むなら、その取捨選択を正しくする目を養うことこそが大事だと。赤青緑のペンで色分けして重要度を分ける方法も紹介されていました。有効そうです。


書き始める前には必ずメモを作ること。キーワードを拾い出し、それをもとに構築していく。まず自分の中にある材料をすべて紙に吐き出すのが第一の作業。それを赤青緑の方法で色分けし、見出し小見出し内容と考える。書こうと思いついたら細かい見出しくらいまでメモで突き詰めておくことが、のちに見返したときにいつでも書き始められ、思考が白紙にならずに済む。

この本の中で強調されている3という数字。3つの性格の違うキーコンセプトを取り出して、その3つをつなげる論理を組み立てることで、書き手のオリジナリティが出てくるのだという。考える力が必要だから。落語の三題噺が例に挙げられていた。

(つらつらと書き連ねるのもいいが、それをするならばとにかく量を書き、そこから構成しなおして、量を縮めて、人に読んでもらえるレベルにもっていくことが必要で、それが訓練である。)

キーワードからキーフレーズへ。一番伝えたいことを入れ込んだ、凡庸ではない文章を考え一番初めに置く。凝縮されたそれを解凍するように内容を書いていく。そうすれば、伝えたいことを逃すことがない。
できるだけ重ならない3つのことを挙げ、それを繋げるラインこそが個性であり、オリジナリティである。繋がりそうもないことを繋げられると上手い文章と感じる。考えるためには図式化も大事。

なぜ3つを選ぶのか→暗黙知を働かせられるから。「選ぶ」という行為に絡んでいる自分の暗黙知を書くことではっきりさせ、自分なりの角度のついた文章になる。


文体について。音読すると文体の良し悪しがわかるという。生命力、と表現されている。文体、つまり立ち位置を意識しながら読むことが、力を伸ばすことに繋がる。オリジナリティを出すためには自分の立ち位置を色々と仮定して書いてみる、と書いてあって楽しそうだなと思いました。

一つのトレーニングとして、自分の好きな誰か一人の作家や思想家の作品を毎日のように読んで、世界に浸り、文体から思考様式まで真似るという方法がある。時間がある人限定。

書くことは吐き出すこととは違い(←!?)エネルギーを溜めて、自分の中を内圧を高める行為である。
「本当に書きたいことを書くのは、本来、とても辛い作業なのだ。ところが、自分の中に溜めずに、小刻みにいつも吐き出していると、内圧を高めるどころか、内圧を低くするだけである。」痛いところを突かれた気持ちです。
何かを書こうとした場合、人に話さないほうがいい、とも。満足してしまって、自分の中の内圧が下がってしまうから。ガスが抜けてしまう。

書くために、考える力が充満する。それは、自分自身と向き合うことで自分を取り戻すことになる。結局は自分が生きていく意味は、自分で確認して支えなくてはならない。そういうときに書くという行為は強く、自己を肯定する力となりうる、と述べられている。その場の感情を適当に慰めてもらうのとは違い、感情を突き詰めて、苦しみを突き抜けなくてはならないと。


どちらかというと、読書をよくする人に向けた本かなと思います。読みやすく、力のある本でした。ここに書いたのは一部分なので、ぜひ手に取ってみてください。
久しぶりに齋藤孝さんの本を読んで、非常に楽しかったです。

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