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ただ聞いてほしい!〜タイとタイ沼のジレンマを知る〜

タイドラマにハマって、半年。
これでもかと、名作を無限リピートする浸かり具合。
ついでにタイ語の学習も始めた。

とにかく、映像が洗練されていて。
皆、どこもきらびやかで。
俳優は非の打ち所のない容姿で。
高学歴で頭も良くて。
俳優の家族もよくSNSに出ていて、いつも幸せそうで。
プライベートでのファッションも小物から服に至るまで、ハイブランド品が多い。


が、昨日から。
どうにもドラマを見ること、好きなタイ人俳優たちを見ることが、辛い。

俳優のペア解消でも、困ったスキャンダルが原因でもない。

私がタイという国について、違う角度から調べ物をしたせいなのだ。


光だけだと思っていた


撮影されてる場所は、首都バンコクが多い。

目覚ましい東南アジアの経済発展は、まさにこの感じ!
と言ったふうのビル群が空撮され、
イメージよりも、もっともっと都会的な生活が、ドラマで繰り広げられていく。

デザイナーズマンションのようなコンドミニアム。

日本より、よほどおしゃれ。
ドラマだからと分かっているが、最初はびっくりした。

なるほど、もうこんなに時代は進んでるんだ。
そう思った。

たまに主役が地方に里帰りして田舎も映るが、どの国も首都と地方の差はあるよね、としか思わずに物語を見る。

そんな夢見心地な中。
JICA(ジャイカ、国際協力機構)やユニセフが、真逆の現実を訴えているのに出会ってしまった。

この国が「世界で一、二を争う格差大国」である、と言うのだ。

圧倒的な富を握る富裕層は1割未満、中間層は3割、残りの6割以上の国民が貧困層。
想像以上の貧困層の割合に愕然とする。

街中にホームレスの人達がいる日常的な風景は、ドラマで映らないだけ。
確かに存在する。

高学歴とは

私が見てきた俳優は、皆不思議なほどに名門大学出身者ばかりだ。

本人の努力はもちろんあるだろうが、大学に入っているという時点で、この国ではかなり裕福な家の子だと知った。

学費と寄付金は隣り合わせで、両方を出せる家の子供だけが進学できる。

考えても見なかったが、ごく一部の人達が大学に行ける国、それがタイという国らしい。

もちろん大学を出たか、小卒なのか中卒なのかで、就職先と収入に一生の差が出る。
貧困層の子供は一生貧困層から出られない。

教育システムの良さや質は、その国の民主主義の度合いを測るバロメーターと言われる。

タイは公立学校すら経済的に運営困難で、自己負担を迫られる貧困層の親たちは、ここで子供の進学を諦める。
地方の貧困層の厚さは更に凄まじく、様々な問題が数珠つなぎになっている。

中間層以上の高学歴の人にも、色々ある。
乳児の頃から強いられる勉強へのプレッシャーから、メンタルヘルスの脅威に晒される人が多い。


環境破壊と経済追求の結果の国の汚染具合もひどい、一生病院に行けない人もいる、と知った。

枚挙にいとまがない、とはよく言ったもので、全てが絶妙な関係で悪い、
それがタイの、ドラマで決して伝えられない現実の姿。

だからか、単純な私は、俳優たちの華やかな部分を見るたびに、それだけで悲しくなってしまうようになった。

中には社会ボランティアや経済支援を惜しみなくする人もいるけれど、
ほとんどの人達は、撮影外でもハイブランドに身を包み、贈り合う。
それを手に出来る人達と、義務教育もままならない6割の貧困層とを、心で相対するようになってしまった。

その手の中の輝く品物は、一体何なのだろう。

好きな俳優たちの人格を否定はしたくない。
ドラマも、タイという国も、きっかけをくれた俳優も、ずっと好きでいたいのに。

誰も生まれる家は選べない。
親も国も、選べない。
日本から出来ることも、限られている。

作り上げられた輝かしいタイのイメージ。
それを能天気に楽しんでいた自分には戻れないし、自分も大学を出た以上、無知でいることを自分が許さない。
しっかりした敎育を受けることが出来た者として、無知で居続けることは恥ずかしいからだ。

何のために、自分が何をするのか。
これは、私が在学当時存分に叩き込まれた指針だ。

この難しさを増す国際社会の中で、「何のために」という原点が自分に植わっている以上、

ただこれだけを見て!と用意された虚構のタイを楽しむことは、もう出来ない。


タイ沼のジレンマへ、ようこそ。


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