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色気のないクリスマスイブ。本屋と古着と沈黙のチキン


紙の本を触って買う幸せ。
最近、めっきり機会が減ってしょぼくれている。

生まれてからずっと大型書店が身近にあったので、時間を潰すのも新刊をチェックするのにも困らなかったのに。

運命のイタズラで辺境の地に飛ばされた私には、そのライフスタイルが過去の栄光でしかなくなった。

諸々あって、現在ほぼ電子書籍生活。
味気無いことこの上ない。

インクの匂いと紙の匂いがする本屋さん。
手にとって吟味する、一期一会の時間。
レジに持っていくワクワク感。

なのに、それが奪われて久しいのが現実だ。

聞くと周りの友達も紙派と電子派が半々で、紙本そのものの劣勢具合を感じる。
大好きな紙本のこれからを憂いつつも、スペースの関係もあって電子書籍を買ってる自分がいる。

仕方ない。
だって書店が近くにないのだ!

急に矢は放たれた

色んな事が有り過ぎた去年の年末。
祖母が緊急入院、直後に母が大転倒してすったもんだ。
すでに世間はクリスマスイブになっていた。

世の中は浮かれハッピーまみれの日なんだろうけど、
あいにく私は母を整形に連れて行くという、色気のない日に。

いつもの整形外科はこの日も満員。
さすが年末で、病院は繁忙期。
2時間はかかると言われ、それならばと待ち時間を一人ドライブさせてもらうことに。

かつて住んでいた県庁所在地。
そこを好きなタイソングや洋楽をかけて愛車を運転するだけで、なんとも言えない開放感。

同時に街の至るところで気忙しさを感じて、こんな日に交通事故だけはするまいぞ!と気を引き締めた。
さて、どこへ行こうかな。

真っ先に浮かんだプランが、そうだ古本屋さん巡りしよう、だった。

とにかく本を

何度も書いてきたが、私はとてもケチ。
イメージの都合上、あえて倹約節約家と書いておく。

書店好きなのだが、実際に財布を出していたのは古本屋のほう。
市内3箇所はある古書店を愛車で回って、良い本にバッタリ会うのを楽しんでいた。

今日は久しぶりにそれが叶う期待感で、テンションがすごい。

一軒目に着くと、さすがクリスマスイブ。
店内ほぼ誰もいない。
ガランとした雰囲気が逆に新鮮。

この日のお目当てはタイ語、英語と中国語の本だ。
癒し系のトラベル本も見たい。

語学、学生向け参考書、資格、そして旅行ガイドブックと、目的の本は皆それは見事にバラバラの位置に配かれている。
さほど気にせず物色開始。常連なのだもの、慣れている。

ざっと一周して見つけたのは、5ヵ国語百科辞典(¥550)、キクタンシリーズのタイ語入門編(¥1650)、医療英語のテキスト(¥220)、南プロヴァンスの旅行ガイド(¥390)。
どれも、興味を惹かれた。
それらを抱えながら店内をもう一回り物色。
はぁ、重い。

さて、ここでクイズ。
私は何冊買って店を出たでしょう?




正解は……………



なんとゼロ冊!!!


自分でもびっくり。
昨今の古本屋さんは、セロハンで包んであるものが多く中身確認が出来ない。
これが買い渋った一番の理由。

紙の本は何と言ってもダイレクトに見て、その情報の価値を自分の需要と擦り合せるのが魅力なのに。

この薄いセロハンは、紙本を売る店としては致命的ではないかな。
ヤフオク出品と兼ねてるからとか、立ち読み防止というのも分かるけれど…。んー。
お商売は難しい。

さて、熟慮の末に手ぶらで店を出た私が次に向かったのは、斜向かいの古着屋。
何となくあのセロハン包みにうんざりした気持ちを、古着漁りに変換した。

ここで、欲しかったUNIQLOのワッフルトレーナーを半額で見つけ、本日最初の財布の出番。

悔しかったのは、買い物の合間に居合わせた団体外国人の言語。
気になるのに何語か全く分からない。
たぶんヒスパニック系かな、でも突き止められなかった。

ここでお迎えコール。
予定よりかなり早い!
回りたかった店はまだ2軒もあったが、ラッシュに引っかかる時間も迫っていた。
一軒目に1円も落とさず店を出た誇りを胸に、一路母の待つ整形外科を目指した。

沈黙と飽和のチキンデー

私達はこの日、事前注文していたコンビニチキンを昼にピックアップして、自作おにぎりと水筒を持って出掛けていた。
仏教徒だが一応、クリスマスのイベントには乗っかる。

車中はその後ずっと芳しいチキンのかほり。
たまらなく辛い時間だった。

さて母を拾った後、買い出しするドラッグストアの駐車場の車中で、私達は怖いほど無言でチキンと梅干しおにぎりを貪り始めた。

お互いに用事を済ませ、とにかく空腹。
後ろの席に移動してひたすら3個ずつのクリスマスチキンを食べた。

父が田舎に帰省していたので、こうなった。
とにかくお腹が空いていた。

ラスボス

買い物を済ませ、30分かけて帰る道のり。
お腹も満たされ用事も済んで、こんなクリスマスもいいねぇと結果論に浸る母娘に、父から電話がかかってきた。

「喜んで!ケンタッキー買って帰ってきたよー!」

コントのように一瞬にして母と目が合う。

お互いの顔に、こう書いてあったに違いない。


もう、今日はチキンしんどいよ、と。。。

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