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サウナ小説 ~サウナ音頭~ 第3話後編 個性と書いて主役と読みたい(サウナ&ホテルかるまる 池袋)

※前回の続きです。前、中編がまだの方はこちらを先にご覧ください。

池袋をひっそりと見守るように佇む、
サウナ&ホテルかるまる 池袋。
その頂上には薪サウナ。
フィンランドを想起させる完璧な空間に、私の心は満たされていた。しかしそれとは裏腹に、お腹はもはや空き終わりそう。
足早に食事処に向かうのであった。

とりあえずビールが飲みたい。カラッカラに乾いた身体に、思いっきりビールを流し込みたい。
そう思いながら食事処へ。かるまるは私語禁止を重視しているため、食事処も会話している人はいない。浴室でも会話を注意する従業員さんがいた。
友人同士で来るにはやや不向きかもしれないが、1人で来る分には最高の施設だ。
まずはビール。しっかりと冷やされたグラスに、黄金色の液体がなみなみと注がれている。
これを何の躊躇いもなく喉元へ…嫌な事を全て忘れられる瞬間だ。
料理はニンニクゴマ醤油仕立ての唐揚げ定食とお刺身をチョイス。
味の濃い唐揚げがビールによく合う。お刺身も絶品だ。
調子に乗った私は、デザートにコーヒーゼリーを追加。ゼリーのこげ茶色が薪サウナを思い出させる。意外とボリュームがあり、甘さとほろ苦さが共存した1品であった。

食事に満足した私は、マンガルームへと足を伸ばす。
一歩足を踏み入れると、どこまで続くような廊下。その右側には無限のマンガが、左側には数多の半個室スペースが、どこまでも広がっている。
廊下の奥が鏡になっているため、とても広く感じられるのだ。
漫画はジャンル×タイトル順に並んでいるため、自分好みのマンガを探しやすい。
半個室スペースは簡易的なカプセルルームのようになっていて、寝そべりながらマンガを読む事ができる。
また、マンガ棚の隙間から右奥に進むことができ、こちらには数え切れないほどのリクライニングソファが。当然ここでもじっくりと休むことができる。
私はこのソファに全身を預け、チェンソーマン第二部に没頭した。

そしてついにカプセルホテルルームへ。全国旅行支援適用で少しお値打ちだったため、カプセルVIPシアターという少し広めのカプセルルームを予約。カプセルルームフロアの入口横には洗面所。充実したアメニティもセットでお出迎えだ。歯磨き粉がない、と一瞬焦ったが、使い捨て歯ブラシに既に塗られているタイプ。流石に抜かり無い。
ロッカーキーのセンサーを作動させて自動ドアを開けると、圧巻のカプセルルームが。2段ベッドの要領で上下に部屋があり、それがいくつにも連なっている。
私は上段側を予約していたため、スパイダーマンよろしくハシゴをつたって部屋の中へ。なるほど、寝返りを打てるほど十分に広い。マットレスも適度に柔らかく、寝心地は良さそうだ。そして眼前には大きなスクリーン。スイッチを入れると背後から音響が作動、少し驚く。
入口は2重のロールスクリーンがあるためそれなりに防音されている。隣の人の咳払いなどはやや聞こえるが、睡眠には問題なさそうだ。
また外気を遮断できる通気口があるため、空調は問題ない。2月の真冬でも快適に過ごすことができた。
部屋の中でバラエティ番組を見ていたが、うとうとしてきたので照明を落とし、そのまま就寝。しっかりと身体を休めることができた。

翌朝。朝食の提供も行われているため、再び食事処へ。豚汁定食をいただき、朝からエネルギーをチャージ。
その後は浴場へ赴き、眠気覚ましがてらに朝風呂を堪能。
しかし、ここで気づいてしまった。
”やすらぎ”と呼ばれる25℃の水風呂があったことに。
かるまるは、シングル水風呂で体をしっかりと冷やした後に、”やすらぎ”に入ることで他にはない癒しを味わえると聞く。
にもかかわらず、サンダートルネードの衝撃により、都度忘却の彼方へ。
これは次回来ることができた時のお楽しみにしておこう。
そう自分を無理やり納得させながら、チェックアウトした。

振り返ると、いろんなサウナがあった。
圧倒的な熱量と包容力を持つ岩サウナ。
リラックスの極致へと誘うケロサウナ。
自分とじっくり向き合える蒸サウナ。
実家のような安心感がある薪サウナ。
1つ1つが個性的であり、どれも主役級。
自分らしく個性を大事にして良いんだよ、あなたの人生はあなたが主役だから。
そんなメッセージが込められているのだと勝手に決めつける。
私はそのメッセージを胸に、人の流れに逆らうように池袋駅へと向かった。




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