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サウナ小説 ~サウナ音頭~ 第3話中編 個性と書いて主役と読みたい(サウナ&ホテルかるまる 池袋)

※前回の続きです。前編がまだの方はこちらを先にご覧ください。


池袋にそびえ立つ圧倒的なサウナ。
サウナ&ホテルかるまる 池袋
私は9Fの大浴場で、王様ゲームの真っ最中。
薪サウナ入場券をかけたこのゲーム、制することがらできるのか、それとも…

…。
はい、外れました。
何の変哲もない裸の男が、何の変哲もない竹串を引き抜くだけの時間でした。
別に悔しくないですよ、と言わんばかりの滑らかな足取りでその場を去り、そのまま流れるよう岩サウナへ逃げ込んだ。

大半の人が薪サウナくじ引きに参加していたためだろうか、かなり席が空いている。最上段の5段目に腰掛けた。
やはり5段目は次元が違う。頭だけでなく足先までしっかりと温まる。2,3分して汗が流れ始めると同時に、薪サウナへの煩悩も脳から消えていた。

サンダートルネードで身体を冷やした後は、浴場内で内気浴を堪能。
椅子に腰を下ろすと、徐々に身体が浮き出しそうな感覚に襲われる。その感覚に身を任せて目を閉じ、ゆっくりと時間を漂う。この至福の時間は、何事にも替え難い。

さて、ここから一旦お風呂タイムを挟む。
10Fに上がってまず視界に入るのは、岩風呂。
長方形の大きな岩。この中をくり抜いて、お湯で満たしたような構造だ。約36℃のお湯が身体をリラックスの境地へ誘う。大画面テレビもついているため、いつまでもここでくつろげてしまう空間だ。
その後は、すぐ隣のマス風呂へ。1人用のマス風呂はヒノキでできていて、日が当たると黄金にも見える優雅な造り。このヒノキ風呂を贅沢に1人占め。42〜3℃と高温なので、身体を芯から温めてくれる。

そんなこんなで何種類ものお風呂を堪能していると、再び運命の時間がやってきた。
薪サウナくじ引きタイム。
ここで引けなかったら、もう1時間待つのは流石に厳しい。既に空腹は限界間近だ。さらに湯上がりにビールを飲みたい。
しかしお酒を飲んだ状態でサウナに行くのは御法度。一旦腹ごしらえしてから再びサウナに戻ることはできない。よって、これがラストチャンス。
薪サウナを志す男共は先ほどよりも少ない20人程度、確率は約75%だ。
これは、いけるか、、?
少しずつ列が進み始める。
当たればその場で、00,20,40分スタートの3択を指定するようだ。そのため外れた場合はすぐに列が前に進む。
私の直前で、3連続ほど列がすぐに動いた。
眼前には、残り9枠を示す札と、11,2本程度の竹串。
この王様ゲーム、勝ち確では…?
気を引き締め直して、1度目のくじ引きでは使わなかった左手を伸ばす。実は左利きの筆者。(どうでもいい)
直感のままに狙いを定め、まっすぐ竹串を引き抜いた。
……。
この左手は、王の左手などではなかった…。
この左手は、神の左手だったのだ。
竹串の先にはしっかりとした黒丸の印。
私は見事、薪サウナの権利を手に入れた…!
19:00スタート枠はすでになかったので、19:20スタート枠で予約する。
薪サウナ専用の番号札をもらうと、飛び跳ねたい気持ちをおさえ、喜びをひた隠すようにゆっくりとその場を歩き去った。

薪サウナまで時間ができたので、私は再び岩サウナへ。3度目の岩サウナ。本当はもう1度ケロサウナに行こうと思っていたのだが、入口でふと気になったのだ。
岩サウナを窓から覗いている人がちょいちょいいることを。
覗いてばっかしてないで、YOUも入っちゃいなYO!
と思いながら近づいてみると、岩サウナの中を覗いている訳ではなかった。
窓横に貼ってあるロウリュスケジュールを確認していたのだ。そんなものが貼ってあったのか、と私も確認してみる。なるほど、時間帯によってオートロウリュやアウフグースが行われるらしい。
あれ?あと5分後に、熱烈オートロウリュタイム なるものが行われるじゃないか!オートロウリュが、なんと6回も連続で行われるらしい…!
これは行かねば!!ということで、本日3回目の岩サウナに入った。

新幹線でいうところの3C席に腰掛ける。5分ほど経つと、大量のサウナストーンに、大量のアロマ水が降りかかる。
次の瞬間には、心地よい音が室内を支配していた。
ジュー、ジュジュー。
この音は石の声なのか、もしくは水の声なのか。
喜んでいるのか、もしくは怒っているのか。
そんな答えのない思考は一瞬で熱波に遮られ、身体は熱の波状攻撃になされるがまま。
秒単位でどんどん身体が温まっていくのを感じる。

この熱波攻撃を5回浴びたところで限界を迎え、外に出た。サンダートルネードに頭まで浸かると、一瞬の静寂。水により全てがシャットアウトされた世界へ。病みつきになりそうだ。
顔を水面から上げると、一時停止されていた世界は何事もなかったかのようにもう一度再生を始める。と同時にには全身に雷の衝撃。安息の地を求め、急いで水風呂の外へ。

そういえば、今日はずっと内気浴だな。
そう思い、手すりを辿って10Fへ。
外に出ると、運良くフルフラットの椅子が空いていた。どっかりと背中を預け、空を見上げる。
雲一つない夜空がどこまでも広がっている。
さらには外気浴スペースの中央に君臨する木。
そこから伸びる枝葉が視界の端に顔を出す。
そしてほんのりと鼻をくすぐる薪サウナの香ばしい匂い。
最高以外の言葉が見つからない自分の語彙力を呪いたい。
じっくりと時に身を預け、今日一番のととのいを満喫する。
冬の外気浴は身体が冷えてしまうことが多かったがかるまるはしっかりととのえるな、とふと気づく。
水風呂が冷たいから外気の寒さが気にならないのかもしれない。冬でも外気浴が楽しめるなんて素晴らしいな。
そんなことを思いながら、私は冬の夜空につかっていた。

薪サウナまで少し時間があったので、そのまま外気浴スペースにある露天ジャグジーへ。
約41℃の湯が体中に染み渡る。端に柔らかい枕のようなものがあり、ここに頭を預けてお湯を堪能。いつまでもいられるような極楽の時間だ。
しかしそんな時間はあっという間に過ぎ、あと5分で薪サウナの時間。急いで水分補給をし、外気浴エリア横の薪サウナに並ぶ。長いタオルを渡され、いざ突入。

焦げ茶色の室内。入口左横に薪がくべられており、薪サウナと呼ぶにふさわしい存在感を放っている。
壁にはヴィヒタと呼ばれる、植物の枝葉を束ねたものが吊るされていて雰囲気を盛り上げる。
少し奥まで進み、選ばれし5人が横並びで腰掛ける。長いタオルはどう使うのが正解なのだろうか?よく分かっていないが、とりあえず右に倣えの精神で毛布のように膝にかける。
温度は80℃と聞いていたが、それよりも熱く感じる。身体の芯からじっくりと温まる。
そして何とも言い難いこの安心感…。これは…。
気がつくと私は、フィンランドにいた。
フィンランドの民家にはサウナがついていると聞くが、ここがそれか。
フィンランド民家サウナの実家のような安心感こそが薪サウナの正体。そう勝手に決めつけて納得したところで10分が経過した。

室外に出て向かったのは、薪サウナのすぐ隣にある水風呂、アクリルアヴァント。
床に長さ1mほどの透明な円筒が刺さっており、50cmほどが顔を出している。筒の中には人1人が入れる程度のスペースがあり、14℃の水で満たされている。
まるで薄氷を上から踏み割るかのように、ゆっくりと足を下ろしていく。ゆっくりと肩まで身体を沈めていく。ここまできたら、もうキンキンに冷やされるだけだ。サンダートルネードで感覚が麻痺しているが、14℃はシンプルに冷たすぎる。
足先から腰、腰から肺へ体の下の方からどんどん熱が奪われていく。それが喉元にまで差し掛かったタイミングで離脱し、そのまま外気浴へと向かった。
足が冷えないように先はどの薪サウナ長タオルで足をくるみ、フルフラットチェアに全身を預けて目を閉じる。
血液が身体を、酸素が脳を。
無邪気な子供のごとく駆け巡る。
しばしその余韻に浸りながら、10分ほど外気浴を堪能した。

サウナとお風呂を3時間弱味わい尽くしたところで時刻は19:45。空腹が限界だ。湯上がりのビールとご飯を堪能させていただくとしよう。
そう思いながら10Fからの階段を降りていた矢先に、従業員さんの声。
ー20時からの薪サウナは定員に満たなかったため、くじ引きなしで全員当選とします。

…聞かなかったことにして、私は浴場を後にした。

※大変長くなってしまったので前・中・後編でお送りいたします…!後編も是非ご覧ください。


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