47.【読書と私】⑧『私とは何か「個人」から「分人」へ』:私の中で概念とラベルが格闘中
「分人」という言葉を初めて知ったのは、もう半年前になるドラマについて語るYouTubeだった。
登場人物の感覚に抵抗感を感じる意見もあったようだけど、私は結構好きだった。。。
“いちばんすきな花” ってドラマ
あ~藤井風のテーマソング 花 が脳内再生される。。。
✿
ドラマの中で、偶然のつながりで集まった4人は、後に共通して関わっていた人物を知る。それぞれが知る人物像は異なっていた。再会すると、その人は、4人一緒で過ごすことには落ち着かず(4人の空気感が出来上がっていたのもあるだろうけど)一人ひとりと会うのはいいという。
その人のことを語る中で、同じ人ながら相手によって違う面がある「分人」ということが語られていた気がする。
初めて耳にする言葉に、若い人の知識に感嘆。ちなみに、そのYoutuberの方、声と話し方が似ている別のアカウントでも見かけて、そちらではINFJを語っていたので、INFJの方かなと思っています。
そして、平野啓一郎を読み始めた私の前に、また「分人」ということばが登場しました…。
と、これまでになく長い前置きからの感想です。
「分人」についての説明は、すごく納得のいくものでした。
という「個人」に対する「分人」という視点から、<自分探し><八方美人><恋愛><殺人>などについての著者の観点が具体的に述べられています。
「分人」というのが、「他者」との「反復的コミュニケーション」から成り立っているというのは、自分ひとりで成り立つものでないということで、会う人や対象(本、映像等)、環境の大切さも考えさせられます。
一度だけ、転校というのを経験したことがあります。その時もらった寄せ書きに「友だちはいいやつを選べ」と書いてくれた人がいました。不思議と忘れられない一言で、年を経るほどに、その言葉の重みも感じています。「分人」を思うと尚更です。
中島みゆき(好きです)の歌では
なんてありますが、笑うことはもちろん、泣くことも、誰かや何かを思ってと思うと、他者との関係からなる分人の姿かという気がしてきます。
いろいろ考えるほどに、「分人」が示す内容は、わたし的にはとてもしっくりくるものでした。
*
ただ、どうにも聞きなれない見慣れない「分人」ということばが、まだまだ違和感です。
個人(individual)という言葉の語源が「分けられない」に対して、分人(dividual)というのも、なるほどなんですけどね。
そこで、最後はやっぱり「分人」しかないかと思うだろうな、と思いながら
他の表現について考えてみました。
・これ以上分けられないという点で…
「素人」(読み方が…💦)
「粒人」 とか
・みかんのイメージで皮をむいた中の一つ
「房人」
・一部ということで 「部人」
・一面その人の一箇所ということで 「面人」「箇人」
・人と接することで現れる姿として 「接人」
・心理学の間主体性、間主観性から想起 「間人」
うーん、なかなかしっくりくるのは難しいですが、考えながら、「分人」のイメージがよりしっかりしてきた気はしました。
*
自分の仕事の中で、「母子分離」ということばが出てきます。
セラピーをする時に、子どもと母親(保護者)が同室か、離れてできるかという状態のことから、心理的な面も含んでいます。
「分人」の視点から考えると、セラピーの中で変化するお子さんの姿は、母と一心同体に近い状態だったところから、母以外の他者の存在を知ったり関わりを持つ中で、今までと違うふるまいをする自分が出てきたり、自分とは別個の存在としてより強く母を意識するなど、分人化の過程のようにも思えてきます。
たとえて言うなら、細胞分裂のように、二分割、四分割…と増えていく。
そうして「個人」がつくられていく…
そんな風に思うと、「分人」が 少ししっくりしてきた気がします。
学生の時に聞いたソシュールの言語学のことば
シニフィアン(1つの言葉のもつ「音」の側面、指すもの、意味するもの、
表すもの)
とシニフィエ(1つの言葉の「意味」の側面、指されるもの、意味されて
いるもの、表されているもの)
としてつながってきたかな。
⚘ フランス語の言葉の響きって素敵ですね。
『私とは何か「個人」から「分人」へ』
平野啓一郎 2012
📚他に読んだ本
『本の読み方 スロー・リーディングの実践』 2006/2019
『マチネの終わりに』2016
『本心』2021
『死刑について』2022
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?