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121.【読書と私】㉛空白の天気図/柳田邦男:いわた書店選書から(8)ノンフィクションに向き合い学ぶ

いわた書店の一万円選書、届いた本をぱっと見て、ハードなのが入っていると思った。ええと、柳田国男さんは民俗学の人で、柳田邦男さんはノンフィクションの人だ。読んだことはないが『犠牲サクリファイス』が思い出された。

副題(このことについては、あとがきに書かれていた)に、『核と災害 1945・8・6/9・17』と書かれていて、帯には「広島原爆と大型台風 この街を襲った戦災と天災。果敢に立ち向かった男たちの記録」とある。

その通りに、気象台で勤務する人を通して、原爆が落ちた時の状況と、その後追い打ちをするように通過した大型台風のこと、その被害影響を調査したことのドキュメントである。

それにしても、ノンフィクション…普段なかなか読まない。テレビでも「アンビリーバボー」などリアルな話は、テレビでやるからには結末はそれなりに大丈夫なところもあるかと思いながら、現実なだけに怖くて見てられないことが多い。フィクションや現実でない小説だったら、決してどんな内容でもいい訳でもないが。ノンフィクションの凄みにそうそう対峙出来ていない。

登場人物がフルネームや職種名がついて登場し事実が淡々と伝えられる文章は、プロジェクトXのナレーターの声で聞こえるようだった。ノイズとはまた違う、ぎっしりと詰まった情報量、丁寧な筆致に少しずつ読み進めていくしかない。自分の読書に「読了」ということばは、あまり使いたくないというよくわからない思いがあるが、何日も時間をかけて読み終えた時「読了した」という思いになった。いや、読み終えたようで、始まりかもしれない。

知らなかった史実。原爆の凄さはそうだが、その中でも屋内にいた屋外にいた違い、その瞬間の被害は免れても、爆心地近い場所で過ごした影響。その中で力強くも回復を迎えたり、直後すぐに業務を邁進するべく動く様など、あらためて知ることが多かった。文庫版解説は鎌田實さん そこでも触れられているように、その後の東日本大震災、原発事故のホットスポットを示唆することが既に書かれていた。終わったことでなく、今後起こりうるかもしれない有事に対して知っていたい知識、風化させてはいけないこと。

そのためにも、著者はそれまでに書いたものを含めて、年月日を附しながら「核と災害」というキーワードを添えて復刻、出版しているそう。
  第一弾 
『恐怖の2時間18分 スリーマイル島原発事故全ドキュメント』(「核と災害 1979.3.28」)   2011・5月刊
  第二弾
 『「想定外」の罠 大震災と原発 
 核と災害 1945.8.6~2011.3.11』2011・9月刊
  第三弾 本著
  第四弾 東日本大震災の大津波被害と
     原発事故の取材に取り組んでいるそう
  

この本を読み終えたのは福岡に向かう飛行機の中。ここ最近まで知らなかったことだが、8月9日は小倉に投下される予定だったとかで、広島~小倉の距離感なども思いながら読んでいた。


今年は(私は見てないですが)『オッペンハイマー』が上映された。

この本を読み終えた後日 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞 授賞式のニュースがテレビに流れていました。

来年2025年は、あの時から80年を迎えることになります。








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