108.【読書と私】㉘万寿子さんの庭/黒野伸一:いわた書店選書から(4)
いわた書店の選書から。他の本を読んでいて、ちょっと口直し的に併読しようと思って手を出したら、軽い読み口もあり、一気読みしてしまった。
就職して家探しをしていた主人公京子が、
「何故そのアパートに決めたのか、はっきりいってよく分からない。」
というところから話は始まる。
勤務先は都会なんだろうけど、住まいは坂のある住宅街。それとなくの顔見知りから話が進んで行くのは、京子の人となりもあるか、ヤングアダルト小説のようなポップな趣きもある。ふと作者が気になって再確認すると男性の方だった。こんな愛らしく文章が書けるんだと思いながら読みすすめる。
京子には斜視があってコンプレックスを抱いているが愛らしい女性なのは違いないよう、恋愛模様もありつつ、変わり者のおばあさん万寿子さんから、さまざまないやがらせを受けたところから、つきあいが始まり、次第に年の差を超えた友情のようになっていく。だけど、ほのぼのとしただけの話にならないのは、万寿子さんは高齢で、それまでの人生で抱えているものがあったから。
後半は介護のこと、時代のこと、働き方についてもさり気なく何を是としていくかのようなことが触れられているようだった。
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いわた書店の選書について思ったこといろいろ
(あまり書くと営業妨害?個人の感想です)選書カルテにきっと、人生、家族のことを書く人は多いと思うから、そこについて良質に触れた本は多くありそう。また、「何歳の時のじぶんが好きですか?」という質問があって、私は「今」(こう答える人は多いそう)と半分本気と半分そうでありたい願望で書いたのと、若い時期のことを付け加えていた。わかってなかったなーと惜しむ気持ちと、わかってなかったから出来たことがあるあの時期は、なんだかんだ好き。だからかなこの本が入ってきたのは。
でも、個人のライフヒストリーだけでなく、周囲の世界、世の中の出来事につながることも、含めた良書が選ばれているように思う。
この話に出てくる万寿子さんは、性格はさておいてお洒落なご婦人と伺われるところが随所にあった。いわゆる年寄りにはなるまいと、キバって生きていた万寿子さん、そしてその過去のこと
もう一冊、しっかり読み終えていたら一緒に感想を書きたかった本『パリのすてきなおじさん』。イラストとともに、パリで会ったすてきなおじさんのインタビューをまとめている本だが、読み始めて早々、お洒落なだけでない本だとは十分にわかってきた。何かつながる二つの本
『万寿子さんの庭』の作者の黒野伸一さんは、
1959年生と思いの外、年上のおじさまだった。高校、大学をフランスで学び、日仏のバイリンガルとあった。(ウィキペディアより)他の著書には『限界集落株式会社』なんてあって、岩田さん好きそうと勝手に想像。
また、もう一つ選書にあった『トリツカレ男』の いしいしんじさんは、京都大学仏文学卒の方。岩田さんフランス好みなのかなと勝手に妄想。
選書の読書は、自分のための本でありつつ、選者の読書歴を辿るような、人の本棚を見るような楽しさがある。岩田さんがやりたい人にはやってほしいと推奨しているように、いろんな所でやってくれて楽しめたら(一万円なんでそう、ちょくちょく出来るものでもないけど)食べログでもないけど、本ログ?選書ログ?ここの本屋はこのジャンルが…などおススメ、特徴合わせて楽しめるといいと思う。
そんなことを考えていたら、翌日くらいにみつけたブックカルテというサービス。
複数(48!)の書店さんが集っていて、ネットで申し込めるサービス。どこにしたらいいか悩んでしまうが、自分に、合うお店がみつかると嬉しいだろうな。
絵本扱うお店が多めな印象なのは、より経営上の大変さがあるかな。ブッククラブ・ぶっくくらぶなど子育て期は活用させてもらったけど、こういうサービスの方が個人に即していいかもしれない。
もう、自分のための備忘録で引用させていただきます。(非公開マガジンに入れるより、記事に入れた方がみつけやすいとも思うことありで)