U2の(裏)クリスマスソング4選【音楽コラム】
80年代初頭の結成以来、一度もメンバーチェンジをすることなく走り続けてきた世界最大級のメガバンド、U2。
いかにもユニバーサルな彼らの真のアイデンティティが、アイリッシュであり敬虔なキリスト教徒であることは、よく知られているところです。
なんたってセカンドアルバム『OCTOBER』は教会に寝泊まりしながら作られ、いまもってメンバーたちが「一番大切な作品」と呼んでいるくらいですから。
(そのころの雰囲気を再現しようとした近年の『Songs Of Innocence』は、彼らにしては珍しく失敗作に近い出来でしたが…)
そんな彼らなので、作中でキリストやクリスマスに関する言及がいくつもあります。
その取り扱い方も、基本的には「神と向き合う」というしごく真面目な方向性。
それを極上のポップソングに仕上げてしまうのが、彼らの真骨頂といったところです。
そんなU2のクリスマス(?)ソング4選をお送りします。
(注)「いかにも」な「Christmas (Baby, Please Come Home)」のカヴァーや、「I Believe In Father Christmas」は含まれていません。
それではどうぞ!👇️
1. If God Will Send His Angels
1997年のアルバム『POP』は、名声にまみれた自分たちを極彩色の戯画で表現していた時代の三部作、最後の作品です。
しかしそのタイトルやMVのイメージとは裏腹に、内容は極めて暗く重く、深刻なものとなっています。
👆元々ラスト曲だったという「Please」の絶望的な余韻は、彼らのアイリッシュの魂が残した引っかき傷のようです。
(余談ですが、そのアルバムの世界ツアー『POPMART』大阪ドーム公演にも、私は参加していました。
音がぐるぐる回って、テクノサウンドとの相性は最悪でした笑
ボノが体をくねくねさせながら『モウカリマッカア、ボチボチデンナア〜』とか言ってて、ヤケクソなまでの生真面目さを感じたものです)
そんなアルバムの4曲目に置かれたこのナンバーは、やはり陰鬱で悲劇的な祈りのシンフォニー。
しかし孤独で寒いクリスマスに、これだけ染みる曲もありません。
私は今でもずっと、冬が来るたびにこの曲を聴いています。
See his mother dealing in a doorway
母親が道端で取引しているのを見てごらん
See Father Christmas with a begging bowl
物乞いしているサンタクロースを見てみなよ
And Jesus' sister's eyes are a blister
イエスの姉妹の目は腫れぼったく
The High Street never looked so low
金持ちの大通りはいつでも華やいでいる
It's the blind leading the blond
それはブロンドを導く盲人
It's the cops collecting for the cons
詐欺で金を集める警官
So where is the hope?
じゃあ 希望はどこにある?
And where is the faith and the love?
信念、そして愛は?
What's that you say to me?
それが君が僕に言ったことなのか?
Does love light up your Christmas tree?
愛は 君のクリスマスツリーに明かりを灯しただろうか?
The next minute you're blowing a fuse
次の瞬間 君はヒューズを飛ばし
And the Cartoon Network turns into the news
カートゥーン・ネットワークがニュースに変わる
If God will send his angels
もし神が天使を送ってくれたなら
And if God will send a sign
しるしを示してくれたなら
Well, if God will send his angels
ああ、もし神が天使を送ってくれたなら
Where do we go?
僕たちは一体どこへ行こう?
Jesus never let me down
イエスは決して僕を落ち込ませなかった
You know Jesus used to show me the score
わかるだろ、真実を教えてくれたんだ
Then they put Jesus in show business
それから連中がイエスをショービジネスに押し込んで
Now it's hard to get in the door
今じゃドアから入っていくのも難しい
……
このアルバムからのMVは、本人たちにもどこか自信がなかったのか、新録や歌詞の順番を変えた音源違いが多いです。
しかしやはり、アルバムのオリジナルバージョンが一番だと思います!
2. Peace On Earth
名作を数多く生み出してきたU2のカタログの中でも、屈指のマスターピースがいくつかあります。
初期の『WAR』に『The Joshua Tree』、
90年代の幕を開けた『Achtung Baby』、
現状最後の傑作と呼べる『The Songs Of Experience』。
ただその中でもベストと言っていいのが、2000年代のU2を決定づけた『ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND』ではないでしょうか。
その中盤に置かれた「Peace On Earth」は、まさにクリスマスを思わせるサウンドに、真摯なメッセージを乗せた名曲です。
平和について歌った曲で、これほど理想に酔わず、胸を打つ歌詞を私は他に知りません。
Heaven on Earth
地上に天国を
We need it now
今こそ必要
I'm sick of all of this
こんなことにまつわる
Hanging around
全部にうんざりさ
Sick of the sorrow
悲しみにうんざり
And sick of the pain
苦しみにもうんざり
And sick of hearing again and again
何度も何度も聞かされるのがね
That there's gonna be
やがて地上には
Peace on Earth
平和が訪れるだろうって
Jesus, can you takе the time
神よ、少しだけ時間をいただけますか
To throw a drowning man a line?
溺れる男に一言伝えるだけです
Peace on Earth
地上に平和を
And tell the ones who hear no sound
息子たちが地面の下にいて
Whose sons are living in the ground
もはや何も聞こえない者たちへ
Peace on Earth
地上に平和を
No who's or why
誰であろうと どんな理由があろうと
No one cries like a mother cries
母親のように泣くことなどできない
For peace on Earth
地上の平和を求めて
She never got to say goodbye
我が子の瞳の色に
To see the colour in his eyes
さよならを言うことなんてできないんだ
Now he's in the dirt
今 息子は土の中にいる
Yeah, peace on Earth
地上の平和
3. When I Look At The World
その「Peace On Earth」に続いて流れてくるのが、ミドルテンポのこちらのナンバー。
二つで一曲のような趣もあります。
こちらもまたいかにも冬が似合うサウンドに、さらに直接的なキリストへの呼びかけが歌われます。
When you look at the world
あなたが世界を見た時
What is it that you see?
一体何が見える?
People find all kinds of things
みんな あらゆるものを見つける
That bring them to their knees
自分をひざまずかせるものを
So, I try to be like you
だから、あなたみたいになろうとする
Try to feel it like you do
あなたみたいに感じようとする
But without you, it's no use
でも あなたがいなければ仕方ない
I can't see what you see
あなたのようには思えないんだ
When I look at the world
世界を見た時に
I can't wait any longer
もうこれ以上待てないよ
I can't wait till I'm stronger
もっと強くなるまで
Can't wait any longer
もうとても待てない
To see what you see
あなたが見ているように
When I look at the world
世界を見ることを
……
彼らがいかに「神の愛」を深く信じているか。
それが通じない世界の現状を悲しんでいるか。
痛いほど伝わってくる美しい楽曲です。
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