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「部屋暗いね、ホームセンターで新しいLSD買ってきたら?」、マイクは薔薇の花束でみいちゃんの土手っ腹に風穴をあけました、

六月二八日

惨劇を、あるいは恥を隠していなければ、思想家など面白くない。

E.M.シオラン『カイエ』(金井裕・訳 法政大学出版局)

午前十一時三四分。干し芋、紅茶。横田一と実家で飲んでいる夢を見る。外は雨降り。都会では自殺する若者が増えている。傘がない。行かなくちゃ、君に会いに行かなくちゃ。今夏はいまのところエアコンをほとんど使ってない。「入浴」はぬるま湯シャワーを短時間浴びるだけにとどめているから。エアコンを付けたくなるのはたいてい入浴後であり、それもただ入浴後の一時的な発汗を抑えたいからだということにさいきん気が付いた。ただ熱帯夜はサーキュレーターをずっと運転させておかないと寝付けない。風は弱が好ましい。首は左右に振らせるといい。三六年も生きれば頭のなかは「生活の知恵」で満ち溢れている。まんがいちきんだいち俺が今の二倍の七二歳まで生きたとしても愚鈍で不潔な老人にはなっていないだろう。たいていのことは自分で出来るし分からないことは自分で調べることが出来るから。ただし金は稼げません。ステキな彼氏募集中。とにかく蛆のわく独り暮らしなんてマジ勘弁だからね。生きていること自体がもう耐え難いほどに不潔なのに。きのう午後、金沢文圃閣へ行ってきた。買った本は、スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ』、向井敏『文章読本』、生田美智子『大黒屋光太夫の接吻』、R・ブレイン『友人たち/恋人たち』、長沢光雄『強くて淋しい男たち』、坂口安吾『暗い青春・魔の退屈』、丸山哲史『日中一〇〇年史』、小林秀雄『近代絵画』、大田垣晴子『花のような女』、横山やすし『まいど! 横山です』、山本夏彦『「豆朝日新聞」始末』、『欧米名著邦訳(明治)集』、駒田信二『艶笑いろはかるた』の十三冊。しめて一六五〇円。帰途、白鳥路で、いつも通っているからもう見飽きている裸体の青年像の前で立ち止まってしまった。顔はタイプじゃないけどいい体だ。こういうミケランジェロ的肉体美に憧れてしまっているんだよ俺は。

白昼、銅像の肉体美に見惚れる、
男のなかの男、

ルナアル『ぶどう畑のぶどう作り』(岸田国士・訳 岩波書店)を読む。
『にんじん』と『博物誌』の作者。「蛇、長すぎる」の人。彼の書いたものはかなり好きなので、日記も含めてぜんぶ読みたい。日本語訳された全集は既に出ていたはず。岸田国士の訳は古すぎる。なにしろもう青空文庫で読めるんだから。できれば新しい訳で読みたいね。本書では「エロアの控え帳」がいちばん気に入った。まさに「寸鉄人を刺す」。「自然」への観察眼をそのまま〝人間という動物〟に向けたらこういうものが出来上がるんだな。いくつか引いてみる。

――お前は、こう言った、「人非人だよ、政治家なんて奴は」――。そうしてお前はさも得意らしく一人の元老院議員を識っていると言った。

お前はいった、「わたしは新聞なんか読まない」と。そう言うしりから、「それは新聞に出ていた」と。

――お前は、借りた金を返しに来た男に、「なあに、ちっとも急ぎゃせん」と言った。それに、その金を貸した後は眠れなかった。

――お前は言った、「田舎へ来ないとせいせいしない」。それは、お前か、お前の魂で、町の中の宮殿を買うことができないからだ。

いまでいう「あるあるネタ」の羅列。芥川龍之介もこのスタイルにインスパイアされたらしい。「その金を貸した後は眠れなかった」なんて一か月前の俺じゃん。豪放磊落な男に、わたしはなりたい。そろそろ昼食にする。ハンバーグを温める。雨降りだから図書館に行くよ今日は。あなたのきょうのラッキーアイテムは夢精でカピカピになった童貞の白ブリーフです。たぶんほんとうの未来なんてからっぽの世界。そんなこともう知ってるよね。知らないふりをしないでよね。まんピーのGスポットなんだよお前なんて。

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