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500字小説『世迷言はいかがです?』

夜。足早に駅に向かっていたら、小悪魔に引き止められた
「世迷言を授けましょう」
「いらない。急いでるから」
「そう言わずに。損はさせません」
「…ほんとに?」
「はい。なんなら、あなたの今の望みを叶えてあげます」
「なら20分前に戻して。向こうの橋の上から投げられて体がボロボロなの」
「お安い御用です。では、目を瞑って」
「こう?」
ひゅんっ…!
一瞬で20分前に戻った。
良かった、これで私は痛い思いをしなくて済む。
「望みは叶ったんですよね」
「ええ。ありがとう助かったわ」
「では改めて世迷言を」
「ごめんなさい、急いでるから」
小悪魔の羽を奪って下へ飛び降りる。
私を放り投げたあいつ。
絶対に逃がさない。
「すいませーん。あなたにどうしても世迷言を」
「しつこいっ!」
世迷言なんて。
そんな意味のないものなんか。
あいつに詰め込んでやる。

橋に戻ると、見慣れた後ろ姿がボーッと立っていた。
「居た」
「え?…えっ!何でお前、えーっ!」
「逃げても無駄!」
走り出そうとする襟首を掴んで、一気に浮上する。
「今度は私が先」
「ちょちょ、待て誤解だって、やめろーっ!」
ぶんっ。
思い切り川へ投げ捨ててやった。

「世迷言に溺れろ、ばーか」

私の痛みを思い知れ。


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