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俺の始まりがこの一冊だった。
先日有明で秋の腐女子一大イベントが行われた。言わずもがなJ Gardenである。
俺はこのイベントに数年前から推して推して推して推してやまない先生が参加されると聞いて、真っ先にしたことがある。そう、財布を握りしめて宮野を脅したのだ。
宮野というのはこのブログにちょいちょい出るだいきちの保護者であり腐女子であり、特殊性癖にドリル◉ん◉という正気の沙汰とは思えないB L小説を書き秋庭で頒布した張本人である。
あと普通にだいきちの無茶振り耐性が強いのでみんな見習ってほしい。この俺が安心してリードを手渡せる女でもある。
まあ宮野のことはこのくらいにするとして、とにかく俺は自身が一次創作B L沼に入ってしまった羅生門、基天国への階段、否神の思し召し、否もう身も蓋もなくいうと土地神様と邂逅を果たすために、楽天トラベルのやる気スイッチを押したわけである。
何なら貴方様と会うために前日の夜から宮野と同衾(ツインとダブルを間違えた)しました先生!!佐伯ひとや先生いいいいい!!!!!!
っすーーーーーーー(深呼吸)
ええはい、佐伯先生著書、「零下」作品と私が出会ったのは、おそらく6年前くらいだった。
当時は二次創作B Lの沼にいた俺は、なろうやらpixivなんかも知らないまま、ただ書店のアンソロジー本を受けっぽそうな男の店員を選びレジに持って行くという嫌がらせじみた買い方にはまっていた。
アンソロジー読者勢からしたら、今商業B Lで活躍されている先生なんかも当時から知っていたので、今はそっち方面でもサイレント後方彼氏面をしているわけなんですが。まあこれも割愛する。
そう、俺は数ある個人サイト大航海時代に見つけてしまったのだ!!たった一つのワンピースを!!!!
二次沼から足を洗い、一次沼へとどっぷり浸かってしまったのだ!!このブログでは、そんな俺のマイフェアレディ佐伯ひとや先生、声に出して叫びたい著者名佐伯ひとや先生、佐伯ひとや先生へのラブレター兼限界オタクのファンレター兼遺書兼僕クマ宗教勧誘を目的とした限界執筆オタクブログである。
まず零下とは、読むタイプの4DXである。俺はこの表現以外見つからないので堂々と言い張るよお!!!!
以下ネタバレしたくない人は白目剥きながら最後まで耐え抜け。ハイどーん!!!!!!
「ここがえぐいよ零下の魅力!!」
◉世の中に蔓延るどのBLジャンルにも当てはまらない
◉日本にも似たどこかの国の私設軍、香坂の特殊部隊「深夜」とは
◉こんな受け攻めの絡みってあるんすか。メインカプ二人が喰い合うストーリー
◉出版社がこい‼︎ 同人誌の域を超えた、世界観と圧倒的文章力
◉私が見ているのは本当に受けなのか。攻めの面構え、受けの朝倉深夜兵に沼る
まずはここから語りたいと思う
◉世の中に蔓延るどのBLジャンルにも当てはまらない「零下」の魅力
転生もの、悪役令息、各種バース設定、総受けもの、学園系、ファンタジーもの、ザマァ、お仕事BL、ぜーーーーーーーーんぶ当てはまりません!!!!(大の字に寝っ転がる俺氏)
強いて言えば私設軍だから軍隊物BL?黒属という魔物も出てくるからファンタジー?いやしかし世界観は現代物だしな。朝倉は焼き鮭食ってるし地名は日本語だし???
兎角この零下という作品に、
ありがちな愛され、受け溺愛はまずないですね!!!(クソデカボイス)
一応この私設軍には恐ろしい深夜部隊大将高崎という攻めがいるんだが、あやつが受けである朝倉を露骨に大事にして溺愛してたら、あまりにも悪夢すぎる。
受け溺愛攻め、クズ攻めと相反する攻めへの両極に振り切った性癖を持つ拗らせた俺氏だが、どんな括りにも当てはまらない歩く災厄高崎を教えられたら、もう俺の好みの攻めのジャンルが零下の高崎という名前の性癖になっちまうんよ!!!!!!!
あとこの零下が他と大いに違うところと言えば、いわゆる受け攻めの絡み。ご飯がすすむBL展開である。
まず、零下第一巻には一才の濡れ場展開がない!!
人命救助のためのキスシーンはあるが、それも最後の方のたった数行のみ。しかもえらく血生臭い。
先日幸運なことに作者の佐伯先生とお話をする機会があったのだが、その際に先生はこう言っていた。
「濡れ場、本編では書きません。番外編かも」
BLが好きな人なら、少しだけ物足りなく感じるかもしれない。しかし、先生の発言を聞いて、俺はスタンディングオベーション。ありがとうございますありがとうございますと拝み倒してしまったのだ!!!!!
いや、本編に濡れ場が挿入されたとしても俺は平気で読むことができると思うが、でも先生の言うとおり、零下の濡れ場は絶対に番外編でしか起こらないという確信が俺にはあったのである。
だって無理くない!?どこにも甘やかなシーンがないでござるよ!?(唐突なオタクの露出)
あとストーリー展開からして、私設軍でBL展開を入れるにも、そもそも受け攻めがそう言う色ごとへ持っていく気が一切ない。
普通なら互いに気になり始めて、何かのきっかけを得て急接近。そこから受けが積極的なのか、攻めが積極的になるのかは作者次第だが、まあキスしたら舌の一枚や二枚突っ込むじゃねえですか(身もふたもないことを言う女)
対して佐伯先生の受け攻めはどんな具合かというと、威圧がオート発動している高崎が朝倉の目の前を通れば、朝倉はフルシカトするし高崎も一瞥もくれないですれ違う。
なんなら朝倉に関しては、あんたでけえんだから通路のど真ん中歩くんじゃねえよと内心舌打ちとかするレベルの辟易を滲ませている。って感じよ!!!!作品の解像度高すぎて俺は二人のイチャイチャシーンを妄想できなかった。むしろ妄想しようとして浮かんできたのが↑のやり取りである。
そして俺はこの二人の妄想だけでご飯何倍でもいけるほど萌え散らかしてしまった。
普段なら鼻先擦り合わせてからキスをさせたり、攻めの手のひらで顔のほとんどが隠れてしまう受けの小ささに萌えを見出したり、薄い受けのお腹が挿⭐︎入時にぽこんって形変えちゃうことを妄想してはあはあしているこの俺が。プラトニックとは違うが、朝倉と高崎の任務外の香坂軍施設内での何気ない日常シーンを妄想しては、救急車を呼びたくなってしまう。
もう零下という作品の前では、俺は俺のエロい妄想を封印して、ただの二人の関係性に萌えている、まだ沼を知らない初期の腐女子のようになってしまうのだ。
佐伯先生は俺の腐女子ヴァージン何回奪えば気が済むんですかね?????
というか佐伯先生は女性なのに、男同士の日常のやり取りを書くのがお上手すぎて、もはやブロマンスというにも怪しくなっておる。(ブロマンスとはBLとは違い男同士の友愛を滲ませる小説である)
この二人がもしセックスしないと出られない部屋に閉じ込められたとしたら、受けである朝倉は自ら仮死状態になって部屋の概念を覆して脱出してしまうくらい、ともかく高崎に対してドライなのである。
こう、受けが攻めにときめくシーンとかない。もう笑っちゃうくらいない。むしろ高崎もそういうのない。壁ドンしたかと思えばきっとその拳に魔物ぶら下げてる。何気ない顔してどんどん恋愛フラグへし折ってくるタイプの攻め。
え、零下ってBLですよね??っていう疑問が湧いただろ。だけど安心しろ。その疑問はこのブログを読んでいる今だけだ。
本編を読むと、その世界観に引き摺り込まれてしまうので、そんな疑問も湧く余地はない。もうとにかくすごい、草木の匂いまで鼻腔に感じさせるほどの圧倒的筆致だから。俺の中ではもうMAPPAで映像化されとる作品だから(強火勢)
◉日本にも似たどこかの国の私設軍、香坂の特殊部隊「深夜」とは
気になっちゃうだろ。わかる、わかるよ。俺は個人サイトからの強火勢だから、まだ同人誌版一巻に記載されてないあれやそれもいつ登場するのかとワクワクして待っているのだが、ともかく深夜とは五十嵐颯郎率いる私設軍の中でも、より特殊な部隊。主に黒属と呼ばれる特殊な魔物に対してのエキスパートである!
深夜兵はそれぞれ属性魔力をもち、魔物の殲滅に当たる脳筋野郎ども。
他の部隊と大きく違うのは、戦闘能力は当たり前として、操る武器は個人の力量に合わせたもの。つまり他の兵士たちはみんな一律同じ武器を与えられるが、彼らは自分の手に馴染んだ武器を持って戦闘をする。
そのくせ大将であり本作の攻めである高崎の背負う大剣は一向に抜かれる気配はないのだが。まああれは仕方ない、多分大剣抜くよりも殴ったほうが早い(未だかつて見たことのないくらい脳筋のくせして脳筋という言葉が似合わない男高崎)
ちなみに彼らが戦う敵に関しては、ネタバレ防止のためにお口チャックしておこうと思う。ただ敵は魔物だけではないよ!にこっ☺️✨
そして深夜兵の平均年齢は比較的若い(という印象なのは、朝倉や西来。神木などの少年兵の存在が年齢層を下げているからだが)。まあここで現実に戻ると高崎ですら俺の年下だからな。うん、そらあみんな若いよねって読むよね!!(血涙)
彼らは若いうちから戦うための訓練に訓練を重ねてきたから、作中でもあまり少年っぽさは出てこない。むしろなんなんですかねあの朝倉の達観さ……そしてよくセットになる西来もね、野球少年ぽい明るさを滲ませておきながら……とはいえどセリフでウェイウェイ言っているわけではなく、なんかダウナーの代名詞みたいな朝倉と比較すると爽やかで明るい……けど多分同い年に紛れさせたら西来の異様な大人っぽさは際立つんだろうけれど……ううん……
朝倉のあのダウナーなんなんですかね!?(何遍でも擦る)なんか、引退したヤクザの親分でも乗り移ってるんじゃないですかね(大混乱)
え???朝倉って受けですよね??????こんな受けの概念覆す受けいますかね?????え?????
またこれ俺がpixivで同じような受け探そうとして樹海に彷徨うやつやん。
佐伯先生ええ加減にしてください(憤怒)性癖の樹海に遭難者を出すんじゃないよ!!!!!ここには深い沼しかないんだよ!!!!!
◉こんな受け攻めの絡みってあるんすか。メインカプ二人が喰い合うストーリー& 出版社がこい‼︎ 同人誌の域を超えた、世界観と圧倒的文章力
普通のBLじゃないんだよ!!!!!(何遍でもこする女)
受け攻めって、よくある展開では少女漫画のようにすでに受けが攻めに恋心を抱いていたり、バディものでは背中合わせで戦ううちに少しずつ惹かれあってとか、努力する受けを陰ながら応援しているうちに、モブにかすめ取られそうになって攻めが慌てるみたいなところから始まるじゃん。内容は違えど、展開としてはまあこんな感じじゃん。
それで、俺もよかった口なんですよ。だってBLは二人の恋愛要素に萌えを見出して、二人の足並みが揃ってエンディングまで向かうのを後方親戚面で見守るのが楽しいじゃん。
仕方ねえなって互いが思ってても、結局はBL展開になるんだから。お前らが犬猿の仲でも俺はそれでも先が読めてるんだぜ。とか、なんか強火の主人公みたいな立ち位置になったりするじゃん読者って。
だけど零下はそうはならない。
何遍でもいうが、まず文章力と世界観が重厚すぎて、1ページ目を読んだ時に一回俺は深呼吸した。
あれ、俺って今何読んでるんでしたっけ??これって、ミステリー要素の強い軍物小説だったっけとなるわけです。
え?軍記物だから勉誠社???それとも古き良きスピンの残されているいや新潮社??それとも硬派な小説に定評のある中公社??いやでもエスエフだからハヤカワ文庫??ってなるわけです。
角川がこいと何遍でも叫んでますが、多分ジャンルや重厚感でいうとこの出版社あたりにあってもおかしくない同人誌……角川はほら、BLもあるから……いやでもこの零下は決してルビー文庫でもないんだよ、作者の性癖がBLを超えてくるから、多分普通にBL要素抜きに楽しめるBL小説はこの作品くらいじゃないかな……番外編読まなければきっとBLに二の足踏んでる世の中の腐男子腐女子予備軍ないし、上の出版社の出す作品が好きな人にはブッ刺さると思う…
あああそう、本題!!ようやく触れるよ攻め受けについて!
まず零下の受けは朝倉という少年……兵……と言っても性格は達観しすぎ老成しすぎの少年兵…(今だ少年と言いたくない女)気だるげダウナーでどこかの世界線ではお前絶対に攻めやろマンやし、おそらく朝倉は己の神秘的な美しさを持つ顔に対しても本人は面倒臭い要素だと思ってるし、漢なので自分の顔面がどうなっても敵に勝てればいいとか思っちゃう深夜脳。
俺今まで読んできた中で、俺が抱きたい受けはクソほどいたけど、抱かれたい受けは初めてですう(のたうち回る俺)
俺が女じゃなければありとあらゆる手を駆使して握手だけでもしてもらいに行きたい。むしろ朝倉の操る銃の軌道の先にいたいし、
俺の最期に見る景色はあなたがいいですワン!!!!!ワンワンワン!!!!!(狂気)
俺が漢だったら、むしろ黒属だったら命乞いしてでも「あなたじゃなくて朝倉に殺されたいんです!!!すみません朝倉を呼んでください!!!!!」って深夜兵に土下座してでも自分の死期を朝倉に管理されたいですはあはあ(落ち着け)
朝倉にきったないものを見る目で一瞥された後、俺の眉間に一発ぶち込んでほしい(そして俺の卒塔婆は高崎にへし折ってもらいたい)
そして攻めの高崎はだいきちの語彙を持ってしてでも歩く災厄、力量盤石ゆえの態度デカ男、敵の墓穴掘るの大好きマン、てめえの最期の景色は俺だマン、朝倉の前でもクソ弩級不遜男、態度にミリ程好意を表さない、なお完全なるクズではないところがミソ、好きな子をいじめてはしゃぐ攻めとかではなく、好きだと自覚してるくせに受けにも部下にも悟られず、朝倉の不遜な態度を若い頃の己を見るような目つきで「こいつ、面白え男」と言外に滲ませる。しかし朝倉の有り余る才能も力量を認める的な心の隙間も持ち合わせるくせに、朝倉が気が付かないところで意外にも健気な一面を見せるやないけと思ったら結果敵への牽制と先制攻撃の伏線だったなど、「あぇえええええぇえぇえええええ!?!?!?!?!?」って一言では表せないド攻めすぎて、もうどれが正解だが正解ではないかがわからない(褒めてる)
なんなら佐伯先生が、お前が見ている高崎の一面は、果たして策略か心からかどちらだろうなと読者に問いかけてくるシュレディンガーの猫現象で、読者の情緒と性癖にドギツイ爪痕を残す。
硬派と無関心と好奇心が仲良く手を繋いで同じ道を常に一定の速度で駆け抜けている攻めが高崎(もう説明できないから本編で感じ取ってマジで)
ですん!!!!!!(最悪の締めくくり)
伝ってないだろうけどそれはまだ零下を読んでないお前らが悪いから俺は悪くないのです😅🖐️💦(煽りレベルチンカス俺氏)
てかもう二人の関係性が、互いの獣性はどちらが上かみたいな冷静な睨み合い。松浦◉や風にいうと、歩く絶望、無慈悲な終焉どぉっちが好きなの〜!?!?!?と選べる2タイプの死神。(敵側なら嫌すぎる)
日常生活ではそれなりにオフの姿を見せつけるくせに、戦いの時に黒属目線で見るぽまいらはデッドオアデッドすぎて草。囲まれたら逃げ道なさすぎて、「アッアッ首ここに置いときますね🙌」そっ……てなるんですよ俺は何回二人が任務をしている時に木陰に隠れる黒属に乗り移ってヒイヒイしていたか……
俺の心臓はノミ、俺の心臓はノミ、あゝあですがぽまいらだいしゅきなので今からそちらにいくので俺のこと一発で仕留めてくだしゃいいあへええええええ!!!!!!!
って両腕クロスさせたまま頭からトルネード登場してドン引きされたいワン!!!!!!だって!!!!!!一巻では全然、この二人が絡まないから!!!!俺が二人を引き合わせるエンジェルになるしかないじゃん!!!!!!!!!(キューピットの間違いですよだいきちさん)
でも当然そんなことできるはずもなく……しかしほぼ二人きりのシーンが皆無に近しい──── とある場面で腐女子救済シーンがあるんだがBLシーンというよりもマジもんの救命なので、それに興奮したらお前はもう深い沼にハマっている──── 一巻ではあるが、高崎と朝倉が離れていても、必ずといっていいほど自然な形で存在が重なるので、ストーリーの構成力の高さと世界観を確立する圧倒的筆力で殴りかかるように見せつけられる彼らの関係性を刮目してみてほしい……!!!!!
はい次ィ!!!!!
◉私が見ているのは本当に受けなのか。攻めの面構え、受けの朝倉深夜兵に沼る
あゝあゝあああたいを女にする小悪魔な受け朝倉世良ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!(大発狂だいきち)
俺はBLの受けにガチ恋するよりも、親戚のおばちゃん的な立ち位置で見るのが好きなのだが、この受けはやばい、がちに恋した。しかも商業じゃないからグッズもないので概念を擦り倒すしかない、なんという苦行。
俺はそう、終わりの見えない幸せな地獄に取り残された哀れな子羊、ハッピーエンドなんてない、俺はずっと世良のことを壁の中から見守ってるからね、君の四方八方全て俺という透明な壁で囲ってあげるからねええええ(ワンブレス)っすーーーーーーっはああゝあゝあゝああ(世良の空気を妄想して深呼吸する俺)はあああ紅茶みたいな匂いする(キモすぎ)
朝倉世良はマジでかっこいいんすよ。俺がキャラクター描くのに頭悩ませる時って、小説の中のキャラクターが痛く見えないようにどうカッコよく描写するかってところなんです。
(以下他キャラを交えながら作品のセリフ回しの秀逸さについてめちゃくちゃ語ってます)
当然主人公だからカッコよく書きたい!でも鼻で笑わせたり、気だるげに、とかいう言葉を多用して仕上げると、途端にキャラクターは痛いやつに見えてしまう。
つまり、快活やら爽やかな、という陽のものを表すワードに当てはまるキャラとは違う、マイナスイメージのワードを使いがちなダウナー系のキャラクターを書き上げるのは、個人的には通常のキャラの何倍も労力がかかるのだ。
単純に面倒くさがり。という印象だけでは、作品内に登場しても作者の望むように動かすことはできない。なぜなら、面倒くさがりという性格に設定してしまったから、「こいつがこんな行動をとるわけがない」という作者の中での齟齬が展開を邪魔してしまうからだ。
軸を面倒くさがりにするなら、真逆の性質を持たせなきゃいけない。しかしそうすると、今度はその場面を見せるために展開を練らなきゃいけない。結果、気だるげでダウナー系のキャラクターを作っても、余程世界観と構想を練り上げ場面ごとに展開の順番を組み立てなければ、物語の整合性が取れなくなるのだ。(あくまで俺の作品の場合ですが)
しかし先生の零下に登場する主人公朝倉のすごいところは、その気だるげな性格を台詞回しで完結させているところである。
俺はこの本を読んで目ん玉飛び出たところは、もちろん作品としての完成度の高さもあるが、一人一人のキャラクターが本当にリアルに会話をしているという、肉感のある台詞回しだ。
例えば作中には緻密に計画を組み任務を優位に進める参謀がいるんだが、この天河さんというキャラクターの説明も作中では深くは語らず、かつまだ登場していない時期からすでに参謀天河の性格を他のキャラクターから知ることができる。
佐伯先生は、物語を進めていく中で、読者がキャラクターから又聞きした人物を前にしたとき。この人があの天河か!のようにのめり込ませるのがマジで上手いのである。
作中から抜粋。このセリフはまだ天河さん登場前のワンシーンである
地の文は割愛。本編16ページ西来のセリフ
「こないだの報告書のこと言ってんなら心配すんな。確かに期日は昨日だったけど、ちゃんと天河さんに泣きついて伸ばしてもらったからさ……」
この時点でわかるのは、兵士西来の若い部分を滲ませつつも天河さんという人は参謀という立場でありながら、兵士たちとの間に壁のない人であることを示している。もしかしたら硬そうな役職だけど、意外と話のわかる人なのかな?と読者の心に興味を湧かせる。
ついで17ページ同じく西来のセリフ
「聞いたかよ。今日は天河さんスパルタだ。このまま次、行くぜ」
ここで読者のもしかしてが確定になるのだ。
これがだいきちの言いたい、他のキャラのセリフから作り上げる肉感。
それを踏まえて朝倉のセリフから滲ませる、性格がこちら。
同じく本編16ページ朝倉が西来と会話するシーンから抜粋
「無駄話してる場合かよ。もっと考えることあんじゃねえの」
この時点で、朝倉がこの任務を面倒に思っていることがわかる。しかしこの面倒という部分は決してマイナスなものなんかではなく、朝倉が無意識にこの任務を早く終わらせるだけの力量を持つことを、同時に読者に言外に滲ませているのだ。
マジカッコよくないっすか朝倉だからこそ生きるこの台詞回し技術。
地の文で全て語らないで、読者に行間を読ませる。こりゃあもうお家芸である。
あと深夜兵は各々総じて口が悪いんだが、売って返すような会話のラリーが本当に気持ちがいいので刮目して読んでほしい。
西来が「わあってら」というシーンとかはもはや朝倉を内心でめんどくさいオカン扱いしているようで、俺はこいつの心臓には毛が生えているのかと吹き出してしまった。
マジで朝倉は少年兵と言われているくせに男らしくてカッコよくもあり、面倒くさがりかと思えば自分の中のルールを大切にしてる効率厨でもあり、ダウナーな空気はぷんぷんに出ているのに、常にその眼差しは鋭く周りに向けられているのだ!!
これが……受け……!?
マジでどこぞの世界線ではお前は絶対に攻めやし高崎という圧倒的雄がいるから零下の世界ではお前は受けなんだよな……でもごめん、俺は全然可哀想だとは思わないわ生まれてきてくれてありがとう。
しかもまじ零下は一冊にどれだけ性癖を詰め込んでんだ馬鹿野郎と佐伯先生にプンスコしてしまうくらい、それはも癖の強い男がバンバカ出てくる。
絶対表現は違うけど、どのくらい多岐に渡るかはこれでしか言い表せない。要するに読者がガチ恋する可能性のある、男も惚れる男が出る。
攻略型恋愛趣味レーションゲーム零下って感じです
(何遍でもいうがこれしか当てはまらないからこの表現なのであってだいきち本人は俺を今ボコボコに殴ってます。許して)
安易に人の性癖を刺激するんじゃないよ先生!!!!!
これマジで読んでほしいわけ。同人誌はA6文庫サイズ厚み2センチ前後の読み応えのある一冊なのに、内容が濃く疾走感があるので、俺みたいに何遍でも好きなシーン擦り倒して本家個人ホムペとの違いを確認するために御百度参りばりに行脚してなきゃあっという間に読み終わると思う。
え、これまだ一巻なんだよね……??俺佐伯先生からまだまだ出るよって言われてるから生きながらえてるけど、完結した日が俺の命日になるかもしれんってこと……?
あと今回はノベルティに短編小説を受け取っていたんだが、マジで一巻を読み終わるのが嫌すぎて、残り4ページを残して駄々を捏ねまくったのは記憶に新しい。
佐伯先生に突撃して読み終わりたくないんですうわあああああ!!!!ってクソ迷惑なおギャリを披露しちまったものな……
マジで零下、B Lを読んだことない人は手に取ってみてほしい。マジボーイズがラブしてねえから。(これは佐伯先生がいずれ貴様らを萌え殺すというサツ人予告を一冊に滲ませています(治安悪))