
第109回薬剤師国家試験 問89が問う「チーム医療の真髄」:救急集中治療の現場から考える
第109回薬剤師国家試験の問89には、「チーム医療を実践する上で、最も必要なのはどれか」という設問があります。一見するとシンプルな問いにも思えますが、実際の医療現場での経験を考えると、非常に奥深いテーマだと感じます。以下に実際の問題を示します。
問 89 チーム医療を実践する上で、最も必要なのはどれか。1つ選べ。
1 国家資格を有する職種のみで構成する。
2 医師の意見を最優先する。
3 各職種の専門用語を使用する。
4 職種ごとにクリニカルパスを作成する。
5 職種間で医療情報を共有して意思決定する。
正解は5です。
この設問を「救急集中治療のチーム医療」に置き換えて、実際の現場について考えてみたいと思います。
1. 多様なスタッフの関与
救急集中治療では、医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床工学技士など国家資格を持つ者だけでなく、さまざまなスタッフが協力し合います。
意識障害の患者が搬送されてきた時を例にします。
薬剤師:「救急隊の方、お薬手帳ありますか?」
救急隊:「あります。ご家族によると、飲んでいる薬は全て記載されています」
薬剤師:「アスピリンとアムロジピンを飲んでいますね」
医師:「既往に脳梗塞があるのかな。病歴が不明だから、詳細な情報が欲しいね」
薬剤師:「お薬手帳で医療機関名はわかるので、医療スタッフ〇〇さんに連絡してもらいますね」
・・・すぐに電話にて・・・・・・・
薬剤師:「〇〇さん。今搬送された患者さんの情報を集めてほしいです。△△病院がかかりつけです」
医療スタッフ〇〇さん:「分かりました。電話してすぐに情報を聞いてみますね。」
・・・初期診療途中に・・・・・・
医療スタッフ〇〇さん:「△△病院に脳梗塞にて2回ほど入院しているようです。その他は高血圧のフォローをしているようです」
こんな流れで、色々な情報が迅速に集まり共有することで治療に結びついていきます。
2 各職種の意見を集約する医師
薬剤師はしばしば、多くの診療科の医師と連携しますが、特に救急医や集中治療医は、各職種の意見を統合し、円滑にまとめ上げる能力に優れています。私たち薬剤師も、患者に最善のケアを提供するために、自己研鑽を重ね、意見をしっかりと伝えていく必要があります。
3 共通言語の重要性
各職種が共通の言語を理解し、コミュニケーションを図ることが重要です。
過去にも共通言語の重要性を記事に書いています。
4 各職種のルールの理解
医療スタッフはそれぞれ異なるバックボーンを持っています。医師、看護師、薬剤師間でのルールや役割を理解しておくことは、円滑なチーム医療の基礎となります。
5 医療情報の共有と意思決定
各職種が専⾨性を活かして集めた情報をチームで共有し、適切な意思決定を行うことが重要です。薬剤師としては、服用歴や関連情報を他のスタッフと共有し、意思決定に貢献することが求められます。
救急集中治療のチーム医療において最も重要なのは、職種間の壁を越えた情報共有と連携です。各職種がそれぞれの専門性を活かし、共通の目標に向かって協力することで、より質の高い医療を提供できます。