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救急集中治療は若手薬剤師のスキルアップに最適な環境!!
薬剤師として働き始め、職場環境や業務に慣れてくると、多くの若手薬剤師は病棟業務に進むことが一般的です。
その際、「消化器外科病棟で働きたい」「循環器の薬について深く学びたいから循環器病棟を希望する」など、それぞれが希望する配属先について語り合う姿をよく目にします。中には救命センターでの勤務を熱望する薬剤師もいます。
以前は、一般病棟(消化器外科、循環器病棟など)である程度経験を積んでから、救命センターやICUといった特殊病棟に進むのが一般的でした。しかし、最近では薬剤師歴2年目でもICUを担当するケースが増えてきています。私自身も、他の施設の方々と話をする中で、そのように感じています。
このキャリアの流れについて、私の意見を述べたいと思います。結論としては、私自身の経験からも、特殊病棟 → 一般病棟の順序で経験を積む方が良いと感じています。私は一般病棟 → 特殊病棟という逆の道を歩んできたため、この意見には実体験に基づく理由があります。
一般病棟では、外来などで既に診断がついた状態で入院してくる患者さんが多く、診断までのプロセスはカルテで後追いする形となります。新しく処方された注射薬や内服薬についての説明をおこなう中で、カルテに基づいて患者さんの状態を把握し、服薬説明を行うという流れを繰り返すのが基本です。
ある時、感染性心内膜炎で入院中の患者さんについて、炎症マーカーは改善傾向にあるものの発熱が続くケースで、医師から薬剤性の副作用の可能性について相談を受けました。現在進行形で起きている症状に対し、添付文書の一般的な情報以外に提供できる知見を持ち合わせていないことを痛感しました。これが、後追いではなく、現在の状態を前向きに評価する初めての経験となりました。
その後、救命センターで働くようになり、状況は一変しました。診断が不確定な段階から、医師や看護師と連携し、患者さんの状態をアセスメントし、治療方針を議論する機会が増えました。この経験により、患者さんを「前向き」に評価する姿勢が身につき、薬物治療や副作用についても、より深い視点から議論できるようになりました。
この経験は、一般病棟での服薬指導にも大きな変化をもたらしました。患者さんからの相談に対し、以前は単に医師や看護師に伝えるだけでしたが、今では患者さんの状態を適切にアセスメントした上で、臨床的に重要な情報として多職種と共有できるようになっています。
もちろん、一般病棟でも患者アセスメントのスキルを磨くことは可能です。しかし、若手薬剤師には救急集中治療を特別視せず、早期に経験することで臨床能力を大いに向上させる可能性があることを知ってもらいたいです。そこで得た経験は、間違いなく薬剤師人生にとって貴重な財産になるでしょう。