疾患別まとめ集 とあるPTの勉強独りごつ8
今回は疾患についての勉強いしたのでまとめてみました。
文字ばかりで退屈かもしれませんが、自分の勉強のノートの材料などに使って頂ければ幸いです。
脳神経だけでは、少し飽きてくるので、色々な勉強の項目を増やしていけたらと思っています。
また運動療法の資料などもイラストで配布中です、ご利用くださいませ
腰椎椎間板ヘルニアについて
① 腰椎椎間板ヘルニアとは 椎間板の中央にある髄核が、外側の線維輪を破って外に出てしまい、腰の神経根を圧迫する状態です。
② 病態 椎間板へのストレス(体重、姿勢、動作、外力など)で内部の圧力が上がり、線維輪が破れ、髄核が外に飛び出します。この飛び出た髄核が神経を圧迫することで、腰痛や神経痛が生じます。特に椎間板の後側方部で神経根が圧迫されやすいです。
③ 発生頻度
年齢:20代に多く、次いで30代、10代、40代の順
性別:男性に多く、男女比は3:1
④ 症状 腰痛と下肢痛が主な症状です。痛みは動作時に悪化し、下肢にも放散します。ヘルニアによる神経根圧迫を緩和するため、側弯変形が見られることもあります。
⑤ 診断
X線:側弯などの確認
MRI:T1強調像とT2強調像で椎間板や神経根の状態を確認
⑥ 評価
脊柱前屈テスト:指先と床面の距離を測り、運動制限を評価
ラセーグテスト:仰臥位で脚を挙上し、痛みの発生を確認
⑦ 予想される問題点
腰椎椎間板ヘルニアにおける予想される問題点(ICFの考え方に基づく)
1 身体機能・構造(Impairment)
疼痛: 腰部および下肢の痛み
運動制限: 体幹および股関節の可動域制限
筋力低下: 体幹および下肢の筋力低下
側弯: ヘルニアによる神経根圧迫に伴う側弯変形
2 活動(Activity)
歩行困難: 痛みや筋力低下により、長時間の歩行や移動が困難
体幹前屈動作困難: 前屈動作時の痛みや可動域制限
姿勢維持困難: 長時間の座位や立位を維持することが困難
3 参加(Participation)
通勤や仕事の困難: 痛みや動作制限により、通勤や仕事への影響
家事動作困難: 家事を行う際の痛みや動作制限
余暇活動の制限: 痛みや動作制限により、趣味やレクリエーション活動の制限
⑧ 目標設定
痛みの改善
腰部の可動性の改善
体幹と下肢の筋力回復および増強
⑨ 治療
安静:急性期は最も楽な体位で安静にする(ファーラー肢位)
薬物療法:非ステロイド系抗炎症薬や筋弛緩薬を使用
コルセット:痛みが軽減したら軟性コルセットを使用し、腰部の安静を確保する
手術療法:後方椎間板切除術が一般的
最新の治療としては・・・・
炎症温存治療は、腰椎椎間板ヘルニアに対する新しいアプローチの一つで、自然な炎症反応を利用してディスクの再吸収を促進することを目的としています。この方法の効果について、以下のようなポイントがあります。
1. 自然治癒の促進
炎症温存治療は、炎症の自然治癒プロセスを利用して、髄核の再吸収を促します。研究によれば、自然な炎症反応によりマクロファージが活性化され、髄核の再吸収が促進されることが示されています (Springer)。
2. ギャバペンチンと鍼治療の併用
この治療法では、ギャバペンチンという薬剤と鍼治療の併用が効果的であるとされています。ギャバペンチンは、神経痛の軽減に役立ち、鍼治療は局所の血流を改善し、炎症の自然解消を促進します。この組み合わせにより、痛みの緩和とディスクの自然再吸収が観察されています (Springer)。
3. 手術回避と長期的な効果
炎症温存治療は、手術を避けたい患者にとって有効な選択肢です。研究では、治療開始後6ヶ月から1年でヘルニアの自然吸収が見られるケースが多く、長期的な症状改善が期待できると報告されています (Cureus)(MDPI)。
4. 炎症反応の理解と管理
炎症温存治療では、炎症反応のメカニズムを理解し、それを管理することが重要です。炎症の適度な管理により、ディスクの再吸収が最大化され、患者の痛みや障害が減少します (MDPI)。
これらの知見を基に、炎症温存治療は腰椎椎間板ヘルニアの効果的な治療法として注目されています。ただし、患者の状態や症状に応じて、適切な治療法を選択することが重要です。
⑩ 理学療法プログラム(手術をしない場合)
急性期は安静
物理療法:温熱療法や牽引療法を用いて血流を改善し、筋緊張を和らげる
運動療法:SLR運動やペルヴィックティルトを行う
⑪ 手術後の理学療法プログラム
術後2~3日:SLR運動、ペルヴィックティルト、腹筋(等尺性収縮)を行う
術後5~7日:体幹装具着用で寝返りや立位保持、歩行練習を行う
術後14日:積極的な体幹筋力増強運動を開始する
腰痛に対する治療体操として、Williams体操、Cailliet体操、Mckenzie体操などがあります。
この資料を通して、腰椎椎間板ヘルニアの理解と理学療法アプローチのポイントを把握してください。詳しくは教科書や実習での経験を基に、実際の患者さんへの対応に役立ててください。