注意散漫ガール。
「袋、1つにします?」
「ほんま?」
歩き回ることを前提にしてコンパクトにした手荷物に、授与品が収まる隙間はなく、4人はそれぞれに買い物袋を持つことになった。
それを小幸は1つにまとめてくれるという。
「ええの? 助かるー」
「私、持つよ?」
「いいえ、今回は私が。写真撮ってもらいましたから」
遠慮がちな未沙とは違って、小幸と幼なじみの2人は、何のためらいもなく自身の荷物を小幸に差し出した。
「”今回は”なんや?」
「次はじゃんけんねー」
小幸は2人の袋を受け取って、自身のビニール袋の中に入れた。未沙は「ありがとう」と言って、小幸に荷物を預けた。4人分の買い物で、小幸の買い物袋はぱんぱんだ。
授与品のどれもがダメにならないように、小幸はビニールの中を整理する。すると、何かに気づいた。
「あれ?」
「どないしたん?」
小幸の手元をのぞき込んで、奈々枝は爆笑した。すれ違う人が振り返るほどの、大きな声で。
「未侑。自分、韓国語読めたん?」
「読めないよ?」
「なんの話なん?」
先を歩いていた未侑と未沙は振り返る。
奈々枝が袋から取り出して掲げたのは、水車の前で配布されていたマンガ冊子だった。
「これ」
「あ」
「それ、韓国語なの?」
「韓国語かは分かりまへんけど、これじゃあ、誰も読めまへんね」
未侑が代表して頂戴したその冊子は、日本語ではなく外国語で書かれていた。
「すみませんでした」
律儀に頭を下げる未侑に、奈々枝の笑い声はさらに大きくなった。
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