あんたが芸大で教授してるとはなあ
10年前は想像してない

 いや、5年前だって思わないなあ

 あはははは

 ここは東北の山の上の芸大、本日はオープンキャンパス、未来の芸術家候補が学内を探検する。


 美術科の教授たちの会話はゆる〜っとしていて楽しそうだった。苦を苦ともせず乗れる波に乗り飄々と生きている。これが芸術家だよねぇと心の中がにこにこするわたし。

 高校進学したものの受験に乗っかってみたのは水の流れが強かっただけで本心ではなかった。弾けるように家出して学歴は高校中退のままでバイトして過ごした。その後は大検を受験して行きたければ大学に行こうと思っていた。

 ひとり暮らし、アルバイトの掛け持ち、空いた休日にフリーマーケットで似顔絵を売り、夜はヌードデッサンのモデルに行く。そして他のモデルが来てる日には描く側に立ち勉強した。
 同じデッサン会の生徒と親しくして芸大に遊びに行き、その子がイベントスタッフをしていたので見に行った。似顔絵を描くことでお祭りを華やげるそういうバイトを間近でみて私も勉強させてもらった。芸大生の上手い絵の隣で勝手に描いていたら次回のイベントに来てくれないか?とお呼びがかかりうれしかった。(幼かったのでまさかそうなるとは思っていない)お客様が途絶えた時にたくさんのスタッフさんをかわるがわるモデルにして絵を描いた。描いたことがある人もない人もみんなで似顔絵描きをした。
 似てる似てる!と個性的な絵に爆笑したり様々な感想が出て盛り上がった。私の描いた絵に喜んでもらったことも印象的だったがいちばんうれしかったのは学校の様な空気だった。
みんなで一緒になって取り組んで和気あいあいと盛り上がる。成果もあるし報酬もある。終わればテントをみんなで畳む。学校と書いたけれど青春ってこんなかな?という清々しさだ。

 そもそも絵って1人で黙々と描くもので横のつながりを持てるとは思ってもみなかった。

 楽しく働く。将来の職業に憧れを持った事がなかった私はイベント会社のスタッフの表情に癒された。あんな目をして働きたいなと思った。ベンチャー企業というものだったのかも知れない。


 今年もそういう気持ちを思い出してリラックスして歩きたい。




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