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涙の散歩

数日前から散歩を再開した。
体力作りと、心を落ち着ける為だ。
最初は家の周囲をゆっくりと10分位。

この位は大丈夫だと思って、今日はキツイ坂道があるコースに変更した。
それは、娘といつも散歩をしていた道で、登り坂でヘロヘロになる手を引いて、坂の上にある小さな公園でブランコに乗って休憩していた。

何て事ない気分で、速歩きで進む。
すると一緒に歩く娘の姿がちらついた。
「何で?」
聞いてはいけない疑問が頭をよぎった。
そして心拍数が上がると同時に涙が溢れ出してきた。

袖で涙を拭って、前だけを見て進む。

それでも目に留まるのは、思い出の欠片だ。

大きく深呼吸をする。

坂を一気に下って、一気に登った。
それほど息が上がらなかった事にビックリした。体力がかなり落ちていると思っていたから、登れないと思っていたからだ。

今度は、娘が背中を押してくれていたのかな?

坂を背にして公園に飛び込んだ。
ブランコがあって、座る場所が2つ。
私が右で、娘が左。
「ちょっとだけ休憩ね。」
そう言って、少しだけ揺られてみる。
隣を見ても彼女の姿は無いのだけれど、少し温かい気持ちになった。

帰り道はいつも笑いながら、走って帰って行く娘の姿が記憶の中から飛び出してきた。

1つ2つと思い出で涙が溢れてくる。
帽子を目深に被り、流れるままに家まで帰った。たった15分の散歩はだったけれど、二人で歩いていた道のりは、私にとって幸せな時間だったと気付かされた。

心の中に、また優しい思い出が増えた気がした。

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