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泡のつくるもの〈膜・泡・網〉良寛



膜は泡だ、膜が包む虚なもの。
閉じることへの欲動。
消えゆく儚い隔絶。
生じてはうつろう影の膜

よどみに浮ぶうたかたは、
かつ消え、かつ結びて
久しくとゞまりたるためしなし。

『方丈記』鴨長明:冒頭抜粋


深宇宙では、泡の如きもの。
虚にものが拠る所で膜が生じ、
円相をもって泡となる。

無数の泡が写像する大小の隔絶は
手を取り合った網に見える。
再帰する網は延々と結び生る泡であり。
区切られた無数の間は、
薄膜を通して隣り合っている。

隣の他者と遠くの星々を分かつ、
無限遠の隔絶と縁起の連関。

空を包み、泡が生じていく。
切り取ってみれば何処にも泡は無く、
ただ切り取られた間があるのみだ。
別かつこと、隔てること。
結びまた滅びる無常の泡沫。

現し身のうつつごころのやまぬかも
生れぬ先きに渡しにし身を

『五蘊皆空』良寛


良寛の五蘊皆空という長歌だ。

全ては空であるという諦観を受け入れ
一切放下する全体性への憧憬を持ちつつも、
それでも浮世に縋りながら生きる
人の飽くなさを詠んだこの歌は、
浮世の人の道そのものだ。

無限性と全体性への憧憬。
生活世界という幻影への固執。
その矛盾性にこそ、
泡の本質がある気がするのだ。


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