「りんご箱」#シロクマ文芸部
※こちらの企画で参加させていただきました。
りんご箱。箱を開けてみないと、どんなりんごが入っているかわからない。RPGゲームも残りはラスボスを倒すだけ。このゲームの回復アイテムには『りんご』が活躍する。魔法を使うための大切なMP回復アイテムだ。
箱を開けるとりんごの種類はいろいろある。大々的にMPが回復する『ゴールデンアップル』大回復する『高級りんご』普通に回復する『普通のりんご』
そして、見た目じゃわからない『ラットゥンアップル』はMPが減ってしまう、腐ったりんご。ゴールデンアップルは光っているのですぐにわかるが、ラットゥンアップルは高級や普通のりんごと同じ色、形をしているので見分けがつかない。このゲームは難しくて魔法を使えなければクリアできないので、りんごのアイテムは貴重だ。当然ラスボスを前にラットゥンアップルに当たってしまった場合は、ほとんどクリアできない。
さぁ、最後のラスボス戦だと意気込む僕はやっぱりMPを回復させるべく途中で『りんご』のアイテムを使った。もう少しで倒せるのでこれが最後の回復だと願い、ボタンを押す。
デューーーン!!!
悲しいBGMと共に魔法使いのMPはゼロに……。
「あーー!! っくそ!!!」
なんて言うのも空しく、魔法バリアを使えなくなったパーティーはラスボスの大技を喰らってジ・エンド。またクリアできなかった。
「ゲームは終わり! お使い行ってきて!!」
お母さんに言われてしぶしぶ返事をした後、スーパーへとお使いに出掛けた。野菜売り場で果物のコーナーが目に入る。りんごの箱が売っている。並べ方が実にキレイだ。ゲームのアイテムみたいに思った僕は覗き込む。黄色いりんごに赤いりんご。赤くても少し真っ赤なりんごと彩り豊富だ。
(黄色のトキはコクのある甘味で『ゴールデンアップル』早生ふじは甘めでジューシー『高級りんご』か。酸味が強いジョナゴールドが『普通のりんご』だな)
妙に納得して僕はお母さんからのメモを片手にりんごを購入する。買い物を済ませて夕飯の後はデザートにりんごが出た。それをマジマジと眺める。
「どうしたの? そんなにりんごなんか眺めちゃって。早く食べちゃってちょうだい」
パクッと一口で食べる。甘い。良かった『ラットゥンアップル』じゃなくて。りんごの中身は切らないとわからないもんね。秋の季節のりんごは美味しい。今度使うりんご箱はラットゥンアップルじゃないと良いなと思いながら、僕はまたゲームに興じるのであった。
(了)