
新曲づくりと武満徹 (プログレッシヴ・エッセイ 第15回)
金属恵比須は、来るワンマンライヴに向けて新曲を作っている。
コンセプトは「火曜サスペンス劇場の主題歌」。
プログレバンドが火サスとは頭でにわかには結びつかないかもしれない。が、プログレ的手法が使い尽くされている現在、どうすればプログレッシヴ(進歩的)になるかと考えた結果だ。
「もしも金属恵比須に火サスの主題歌の依頼がきたら?」
というコンセプト。
企画がプログレ。
そのために、わざわざ火サスのエンディング風の動画を作成し、それに合わせて作曲した。
視覚を想起させるような音楽づくりは「紅葉狩」「武田家滅亡」「虚無回廊」で実証済である。あまり誰もやっていないオリジナルの手法だ。
そもそも私が音楽に興味を持ったのが映像からだった。小学1年の時、「アメリカ横断ウルトラクイズ」の決勝の音楽が好きだった。ヘリコプターに乗り込む出場者が手を振りながらニューヨークの摩天楼を周遊する場面。ビデオに録画してそこだけを繰り返し見ていた。MVの感覚だ。この時、初めて音楽が好きであると自覚したのだった。
実際に繰り返し見ていた「第11回」の映像
0:00-3:30の部分(曲名は「Old James Bonded Bourbon」)
作曲家・武満徹は、音楽と絵画は密接な関係があるといっていた。

立花隆著、文藝春秋
音楽を考えるときも視覚的に考えることが多い。
視覚と聴覚に関して敏感だった武満の音楽はたしかに映画音楽のようにも聞こえる。
日本で西洋音楽をやる人は論理性がある音楽を作るんです。だけど、主張する内容がないから論理の底が浅い。西洋音楽が好きだし、その世界に人一倍あこがれてきたけど、いざ自分の音楽表現するときは自分の根底にある音の感覚。
プログレミュージシャンにとって耳が痛い言葉。
プログレらしいギミック(変拍子や不協和音など)を演奏することが、手段ではなく目的になって作曲してしまうこともあるジャンルなのである。よって今回の「火サス企画」は映像音楽をやりたいという「自分の根底にある音の感覚」だから大丈夫だ。
(ベートーヴェンの)「運命」なんか本当に構造的にきちっと分析できるし、首尾一貫している。だけどそこに感動するわけじゃない。結局響き。
まずはインパクトのあるテーマがあってこそ。理論は聞こえるわけではない。
西洋近代というのは、あまりに個性を強調しすぎる方向に発想。「私はあんたとちがう」ということをいうためにだけ作品を作っているような人がいる。とても貧しいこと。
プログレ世界との差別化を図った「火サス企画」、もしかしたら、とても貧しいかもしれない。
※
2024年4月27日
18:00〜
金属恵比須ワンマン・ライヴ
「猟奇爛漫FEST Vol.6」
FEATURING 塚田円(那由他計画)
会場チケット完売!
配信チケット絶賛発売中!
