寝たきりよりはいい1
ひょんな事により死ねなくなった私の人生。
都内に出た私は1人きり。
身寄りもない友達もいない、四畳の家が白いふわふわとしたカビに包まれた。
今より酷い病状、20歳
33歳の経営者と美術館デート
ゲロを吐いた。
咄嗟に彼は両手で受け止めてくれたのだ。
そのあり得ない行動と優しさに胸をうたれた。
"白馬の王子様!!"
それからが早かった。
家がないならうちに来たらいいよ。
トランクひとつで家を出た。
もう食べ物気にしないで、着るものも、ふわふわの寝床も、彼のウーバーイーツの残り物を食べて、なんて美味しいんだとひそかに、心底感動した。
生活の全てが豊かになって、守ってくれる身寄りができた。
とにかく優しい彼と家族になりたい、結婚したい。
家族が欲しい。安心したい。
そんな彼から提案された
"子供ができたら結婚してあげるよ"
と言う言葉。
出会ってひと月で子供ができた。
これで私は幸せになれる。
全力で愛してくれる彼とずっと、一緒に安心して暮らせる。
そう思っていた。
ある日彼の在留カードを見た。
数字が苦手ながら母親の生まれ年より、10年後ということは…
38歳だった。
彼に問い詰めた、そんなこと言ったっけ?
イライラしてこちらを見てくれない。
あぁ、私の聞き間違えか。そうだとしても若く見られたいもんね、しかたないよね。
そう思った。
次の月、妊娠3ヶ月。
彼の携帯を見た。
それからが地獄の日々の始まりであった。
沢山の若い女性との援助交際。
いわゆるハメ撮り、盗撮。
気を失いそうになるくらい壮絶なものだった。
中にはその時未成年の女性なども含まれていた。
居ても立っても居られず問い詰めた。
"あぁ見たのね。
出て行っていいよ。大好きだったよ、
子供勝手に育ててね。
貴方が悪いんだから、
今までありがとう、じゃあね"
玄関で両肩を押された。
気が気じゃない、必死に縋った。
人生で一度も愛された事のない自分。
そんな人間を愛してくれる人を逃してしまう。
なんでも我慢するから、
自分が悪かったからごめんなさい。
何時間もずっと謝り続けた。
惨めだった、もう後戻りできないと思った。