見出し画像

2年前から変化してないライブコマース市場。関係者は何から取り組むべきか

ネットショップ担当者フォーラムの3/2の記事に大変興味深いデータが出ていました。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの調査によると、
【ライブコマース調査まとめ】認知は約4割、視聴経験ありは約4%。視聴経験者の商品購入経験率は5割強、視聴意向ありは2割強

タイトルだけ見ると、もしかしたら読み手にとっては "視聴経験者の購入率は5割強もあります!" といったポジティブなところに目がいってしまうかもしれませんが、本ブログの趣旨としてはあくまで日本のライブコマース市場を冷静かつ客観的に把握し、業界全体としての視座を高めることにありますので、本ブログでは私なりにこのデータからくみ取れる本質的な課題を書いていこうと思います。

2年前から認知が伸びていないライブコマース

上記記事内で、ライブコマースの一般認知度は31.9%程度とのことですが、認知度については2021年時点でアイレップ調査だと33.1%、同じく2021年時点でMMD総合研究所だと43.2%なので、調査対象に多少のブレがあれど、ここからわかることは、ライブコマースの認知度は上がっていないであろうということです。(参考:2023年版ライブコマース国内市場規模の真実
名著「確率思考の戦略論」的に考えますと、まずは認知と配荷率で一定程度には成果が出るということではありますが、残念ながらライブコマース市場はこの2年間、認知ができていないということになるでしょう。これはいちライブコマース関係者である私としても力及ばぬところで反省もあります。
一方で、ライブコマースの配信本数や、プラットフォーム数は増えていると思われますので、認知がないのに配荷がされているといったことが起きている、つまり、配荷先で各々が頑張ってライブコマースとは何かを認知させなくてはならないといった課題になっているかもしれません。

早くも利便性のライブコマースから意味性のライブコマースになってしまった

さて、ここでメタ的に考えますと、そもそもライブコマース業界全体として認知度をあげるようなことができないか?ということを考えましょう。そもそもこの数年のライブコマースはコロナ禍とセットで再認知されたということが大きく、(参考:ライブコマースがブームではなくなった)社会ペインとセットだったわけで、利便性として注目されてきました。しかし、その社会ペインが解決に向かい、日常を取り戻したとき、ライブコマースは当初の利便性を失いつつあり、個々が付加価値を追求する意味性のサービスにシフトしていっているのです。(参考:ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件)ゆえに、配荷ばかりが増えてしまっているのではないでしょうか。

藤井保文『ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件』(日経BP社、2022年)を参考に筆者が作図

しかし、日本においてライブコマースはまだまだ認知度が足りていないという状況であるため、現時点で"業界が"意味性の追求を行うと、市場の拡大を阻害してしまうのではないかと危惧しています。(配信をしている各ブランドが意味性を訴求するのは大いに行うべき)
業界は、本来であれば利便性的な訴求、日本におけるライブコマースとはどんな利点があるのかを啓蒙することが求められるのではないかと思います。

業界が行うべきライブエンゲージメントの啓蒙

社会ペインのない日本において、業界が行うべきライブコマースの利便性はマーケティングとの融合であると考えます。"売れます"、"売れました"、ではなく、ライブ的なアプローチを行うことで、ライブエンゲージメントが高まり、ブランドの顧客体験がどう変わるのか、これをマーケティングの視点から作り上げることで、どのようなDX的な利点があるのかを業界としては啓蒙していくことが、現時点の日本のライブコマースにおいては必要であると考えます。

ライブコマースを認知してても見ないという結果について

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの調査を改めてみてみると、認知だけではなく、もう一つ大きな課題があります。それは、ライブコマースを認知していても、視聴する人はとても少ないということです。以下、わかりやすく作図しなおしたものになりますが、認知している人が31.9%なのに対して、視聴をする人は3.9%です。つまり、認知に対して12%しか視聴していないということになります。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが実施した「ライブコマース」に関する調査より筆者が作図

ここからわかることは、認知したとしても見るまでにはいかないということです。つまり、業界が考えるべきことは、広告やインフルエンサーで無理矢理認知をさせてたところで、生活者は見ないということです。(または12%が見る)なぜ見ないのか、それは見る理由を十分に作ることができていないからです。
サッカーW杯や、WBCを例に挙げてみるとわかりやすと思います。いつもはサッカーも野球も見ない人も、この時ばかりは仕事を切り上げ、時間を作ってテレビやAbemaTVをオンにしてリアルタイム視聴したのではないでしょうか?
もちろんここまでしろとは言いませんが、こういった感覚に近いような価値をライブコマースを配信する前に認知させる前に生活者に届けることが重要です。業界としてはライブコマースがあるから楽しみに待機しているような生活者をどうしたら作れるかを根本から考えていけるといいなと思っています。

1000人が楽しみに待機しているライブコマースを作ってます

かくいう私は、日本グミ協会として3/9にライブコマースをインスタライブで配信するのですが、3/6現在Twitterで集客を行っています。

日本グミ協会Twitterより

アンケートに答えてクーポンをもらう仕組みをおこなうことで、裏側ではアンケートのどの回答に何人が参加しているかわかります。上記でいうと、アンケートの「#絶対見るよ」と「#見るしグッズも買うよ」が何件出ているかで視聴数を予想することができます。以下は、3/6(月)12時45分時点での回答数です。

「#絶対見るよ」が253件、「#見るしグッズも買うよ」が95件。現時点で358人がTwitter上で見ることを宣言してくれています。ちなみに上記はYahoo!リアルタイムから計測しているため、apiは50~60%と推測され、本来のツイート数はこの倍程度あると考えます。実際は700件くらいあるかもしれません。購入数は200件くらいでしょうか。(CVRは28%くらいですね)
まだまだ告知は続きますし、Instagramからの集客も足されますので、狙っていた1000人同時視聴はできそうな気がしています。すべての結果はブログや日本ライブコマース協会としてのセミナーなどで公開していきます。

※日本グミ協会とライブコマースの取り組みは先日取材いただいたウェビナビさんの記事をご参考ください。
日本グミ協会に学ぶ!ライブコマースの効果的な戦略方法

自分の企画なので、めちゃくちゃドライにいいますと、Twitterは表示回数が出ますので、以下のように表示=認知ということであれば24.8万人です。しかし、見ると言っている人は、358人ですので、視聴率は0.14%です。でも1000人が見て200人が買うと思います。市場平均の数字というのは固有のライブコマースから考えるとなんともあてにならないものです(笑)

まとめ

ライブコマースを実施するブランドと、ライブコマース市場を拡大させていくプレイヤーは異なります。私たち日本ライブコマース協会は後者として、どうしたらライブコマースがもっと楽しく、見る価値があり、企業のマーケティング活動を活性化させる利点のある日本のライブコマース市場をどう作っていくかということを考え、人体実験をしながら啓蒙していきたいともいます。

いいなと思ったら応援しよう!