自由と人間の尊厳が奪われつつあるんだ! 特集 北川民次展―メキシコから日本へ画 あおひと君の週間アート情報 10/7~10/13

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今週の展覧会レビューをお届けします!

今週は、世田谷区砧公園にある、世田美こと世田谷美術館で11月17日まで開催されている、生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ、をご紹介します。

北川民次という画家は、今ではあまり有名ではないかも知れません。二科展の会長を務めることもあり、知る人ぞ知る画家かも知れません。あおひと君も国立近代美術館で、1、2点の作品を見た覚えはありますが、それほど興味は湧きませんでした。

しかし今回、アーティストの全体像を見せられてびっくりです!
自由への希求と人間の尊厳。この2つの願いが、エネルギッシュな作品を通してガンガン伝わってきたのです。

それは、美術館で、色々な作品の中に並べられた1、2点を見ただけではわかりませんでした。

その魅力は、北川民次の生きてきた道が、ほかの画家とはかなり違うことが影響しているのは明らかです。

北川民次は、1894年静岡県、現在の島田市に製茶業も営む地主農家に生まれます。絵画に興味を抱き、早稲田大学予科を中退。1914年、20歳でアメリカに渡ります。2年後ニューヨークで劇場の舞台背景を描く仕事をしながら、アート·スチューデンツ·リーグに通い、社会派の画家ジョン·スローンに学びます。同じ頃、国吉康雄や清水登之(しみず とし)らがいました。

3年後、ニューヨークの格差社会と、冬の寒さに嫌気がさし、南へ旅立ちます。そして1921年、メキシコにたどり着くのです。

当時、メキシコはディアス独裁政権から民主革命で自由を勝ちとったエネルギーが溢れ、ディエゴ·リベラをはじめメキシコ壁画運動が盛り上がっていたところでした。

北川もその洗礼を受け、壁画はただきれいに飾るのではなく、社会に向けたメッセージだ、画家も社会と向き合い、批判や見解を表現するのだ!と諭されるのです。

北川は、1936年までの20年ほどメキシコにいるのですが、前衛美術グループに属し社会運動に参加したり、野外美術学校の運営、教育指導などで日々を送ります。また日本人女性と結婚、娘を授かります。

帰国後は、二科展で発表、メキシコ時代から親交のあった藤田嗣治(つぐはる)に、大きな絵を描け、と助言も受け、大きな作品を精力的に描きます。池袋から妻の実家、愛知県瀬戸市に居を構え、美術教育や絵本制作にも力を注ぎます。

戦時中の、国家権力に反する意見や表現はできなかった時でも、北川は、国に従うふりをしながらも、シニカルで、暗に批判を込めた作品を描いています。それからも1989年に95歳で亡くなるまで、二科展会長やメキシコ再訪、絵画、版画、絵本、教育活動、執筆と多岐にわたって精力的に活動しました。

アメリカやニューヨークで味わった差別や格差、メキシコで体験した社会運動、第二次大戦、敗戦の日本の実態、のちの再興と経済成長。

北川民治は、その時代の変遷を身をもって体験しながら自らの表現活動によって、自由と人間の尊厳とは何か?を常に問いかけてきたアーティストでした。美術教育に熱心だったのも、子供の時から自由や尊厳を、表現で教えることが大切だとの思いからだと言われています。

今、周りを見ると、かわいい、きれい、無難な表現で埋め尽くされているような気がしてなりません。

今の世界は、お金が、生きるための目的となり、異端を炙り出し排除し、仕分けをするSNS監視体制に突き進んでいます。そんな世界に向かって、北川民次は、自由と人間の尊厳が奪われつつあるんだ!と警鐘を鳴らしているように思えてなりませんでした。

また2階展示室では、10月14日まで、アートディレクターの仕事―大貫卓也と花森安治が開催しています。「としまえん」の広告で一躍脚光浴びた広告業界のトップランナー大貫卓也氏と、雑誌『暮しの手帖』編集長花森安治の仕事を紹介しています。

展覧会レビュー
9月21日~11月17日 生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ/アートディレクターの仕事―大貫卓也と花森安治 世田谷美術館(世田谷区砧公園)

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