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台湾籍を持つ日本国民は二重国籍扱いではなかったはず

主旨

(1)昭和49年12月26日付の、法務省民五6674号民事局長回答以来、『日中国交回復』の後は、「台湾籍(中華民国籍)を持つ日本国民を国籍法上の重国籍者扱いしないこと」が先例として確立していました。

(2)以来半世紀にわたって当事者にもそのように説明されてきました。(平成8年4月9日付 金沢地方法務局回答など)

(※)このようなファクトがあったにもかかわらず、2016年当時の法務省・金田勝年法務大臣がとぼけて「『台湾出身』の『重国籍者』は義務対象だ」とする「叙述トリック」を使った。(先例では重国籍者扱いではない対象者を『重国籍者は義務対象』との断定表現で、あたかも当然に重国籍者扱いになるかの如くミスリードした。
 そりゃ『重国籍者』の定義をすっ飛ばして『重国籍者は義務対象』といえば、法解釈の理屈の上では嘘はないことになってしまう。だけど、台湾当局籍を持つ日本国民が『台湾出身』の『重国籍者』だと定義しているわけではないのです。このことを「叙述トリック」だと言っています。
 こんな曖昧な大臣発言が、いわば「お墨付き」を与えた形になって、差別的言説を勢いづかせてしまったのです。 

参考資料

(1)昭和49年12月26日付法務省民五6674号民事局長回答(日本加除出版「親族、相続、戸籍に関する訓令通牒録」7綴9225頁に掲載)

(昭和49年10月21日付戸1976号那覇地方法務局長照会)
「日中国交回復後に帰化したとして台湾政府発行の帰化証明書を添付した国籍喪失届の取り扱いについて」
 日中国交回復後に中華民国に帰化したとして台湾省政府発行の帰化証明書を添付し国籍喪失届があった場合の取り扱いについて、このたび別紙証明書を添付して国籍喪失の届け出がなされたが、該証明書により中国国籍を取得したものと認め、所要の手続きをすべきかどうかにつきいささか疑義がありますので、何分のご指示を得たく、照会いたします。

(昭和49年12月26日付法務省民五6674号民事局長回答)
本年十月二十一日付け戸第一、九七六号をもって照会のあった標記の件については、不受理として取り扱うのが相当と考える。

(要旨)
・日中国交回復後に帰化したとして、台湾政府発行の帰化証明書を添付してされた国籍喪失届は不受理として扱うのが相当である。
(編注)
参考・日本人が外国への帰化など自己の志望によって外国籍を取得したときは、日本の国籍を喪失するものとされている(国籍法第11条第1項)。そして、その場合には、当該日本人当事者を戸籍から除く必要があるため、本人、配偶者又は四親等内の親族に国籍喪失の届け出義務を課している(戸籍法第103条)。
 本先例は、日中国交回復後に帰化したとして台湾政府発行の帰化証明書を添付してなされた国籍喪失届は、不受理として取り扱うのが相当であるとしている。

日本加除出版「親族、相続、戸籍に関する訓令通牒録」7綴9225頁より引用

(2)平成8年4月9日付、金沢地方法務局回答

「日台聞の国籍をめぐる法的諸問題」(専修大学社会科学研究所月報 No.418 p38 1998年4月20日 森川幸一)
https://www.senshu-u.ac.jp/~off1009/PDF/geppo1998/smr418-e.pdf

より


(注:より)

補足

 2016年当時の法務省は、「我が国の国籍事務において、台湾出身者の方に、中華人民共和国の法律を適用してはおりません」との見解を示している。

 これは、「中華人民共和国の法律によれば、中国籍は喪失していることになる」としていた蓮舫氏の説明の信憑性を失墜させる意図をはらんだ、ミスリードとおもわれる。
 しかし、ここにあるように「我が国の承認している国の法規に照らして外国籍の有無は審査されるべき」という説明を、法務局が従来から繰り返し行ってきたのが実際のところなのでした。

追記(2024年6月12日)

本記事で、当方の主張が少々誤解されてしまった部分があるようなので、別記事にしました。


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