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渡辺久志氏の「蓮舫氏「二重国籍」の期間はなかった ー人権と国籍ー」について(6)

渡辺氏の論考はこちら

(渡辺氏の論考は、たびたび改訂されて、新しい記述が付け加えられています。今後、当方の記述内容と、かみ合わない部分が生じるかもしれませんが、その点はお含みおきください。)

渡辺氏の記述のうち、ここは、誤解を生むのではないか?と思った点、2か所について言及しておきます。

2.複雑な「台湾籍」の行政上の扱い
(1) 複雑になった経緯
(中略)
逆に、日本国籍の人が中華民国の国籍を取得したとしても、実体として中華人民共和国の国籍、すなち「中国」国籍を取得したことにはなりません。そこで、日本国籍を離脱して中華民国国籍を取得すると「無国籍」の状態になるものとの理由で、法務省では日本国籍から中華民国国籍への国籍離脱の手続きを受理しなかったと考えられます。(この制限は2022年に改められました。)

>《(この制限は2022年に改められました。)》
と言うカッコ書きの部分ですが、これは一読すると、日本国籍者の台湾籍取得のケースにも及ぶかのように読めてしまいそうです。
 しかし、「改めた」効果が、「日本国籍(だけだった)人が中華民国(への帰化手続きで中華民国)の国籍を取得した」ケースにまで一律に及ぶと法務省により断言されたわけではない、と私は解釈しています。
 2023年1月の法務省説明は、あくまで
「『台湾出身者で日本国籍を有する者』について、届出内容から日本国籍以外の国籍を有していることが総合的に確認・判断できる場合には、国籍法13条の趣旨を踏まえ、届出により日本国籍の離脱を認める取扱いに変更した」
という、かなり曖昧な含みのある限定がついた話であって、決して一律に日本国籍者の台湾への帰化一般についてまで述べたものではないと思います。
 さらに、ここは伝聞ですが2022年夏以降も、日本国籍の方が台湾への帰化手続きをして、日本側からは国籍喪失届不受理証明書を得て、日本国籍を失わないまま台湾籍を取得している事例があると耳にしています。

 もう一点

6.「人権救済勧告」で手続を変更
(2) 法務省回答と手続変更
➀ 台湾籍者の国籍離脱手続き可能に
 このように、日弁連の「勧告」によって、2022年8月から「台湾出身者で日本国籍を有する者」、すなわち日台複数籍者が台湾籍のみを保有することを望む場合、「台湾籍」を有することを証明する複数の書類の提出など一定の条件をみたせば、日本国籍の離脱が可能となりました

この記述で
>《「台湾出身者で日本国籍を有する者」、すなわち日台複数籍者が》
とある箇所は「すなわち」とは言えないと考えます。

集合の包含関係で言えば
「台湾出身者で日本国籍を有する者」は「日台複数籍者」の部分集合
(「台湾出身者で日本国籍を有する者」⊂「日台複数籍者」)
ということになろうかと思います。

 「日台複数籍者」のという言葉を使っている日弁連の定義は「日本国籍と台湾籍を有する者」であって、これには、日本国籍者が台湾へ帰化して日本国籍を喪失していないケースも含まれるはずだからです。

(追記)よくよく考えてみたら、「台湾出身者」と言う言葉それ自体はなんら台湾当局の籍を有するか否かの情報を含みませんね。
>「台湾出身者で日本国籍を有する者」⊂「日台複数籍者」
という思い込みも不適切だなと考え直しました。
 ここは意味のない「叙述トリック」だと見れば、単に
 「台湾出身者で日本国籍を有する者』について、届出内容から日本国籍以外の国籍を有していることが総合的に確認・判断できる場合には、国籍法13条の趣旨を踏まえ、届出により日本国籍の離脱を認める取扱いに変更した」というほどの当たり前のことしか書いていないと取れますね。
 逆に「日本国籍以外の国籍を有していることが総合的に確認・判断できない」とすれば受理しないこともできるわけで。単に扱いの自由度を広げているだけにも思えます。

あとこれは細かい蛇足かもしれませんが、
>《日弁連の「勧告」によって》
と言う部分は実質的にはその通りかもしれませんが、法務省側の説明のタテマエではあくまでも、日弁連の勧告が切っ掛け、というわけではなく、2022年8月の東京法務局民事行政部長による「照会」が切っ掛けとなっているようです。
 この「照会」では、東京法務局民事行政部長は「届出人を外国の国籍を有する日本国民と認めることはできないものと考えます。」と書いています。本職専門家の法務局民事行政部長だに、このように受け止めていた。ならば蓮舫氏が自身を国籍法14条の義務対象たる「外国の国籍を有する日本国民」と「認めることはできない」と考えていたとしても、何の落ち度がありましょうや?

民事月報 Vol.77.9(令和4.9)p229 より


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