「日台二重国籍」批判論には「二重国籍」の「定義」がない
はじめに
前回の
で、タイトルにつけた「『定義』を欠いた」と書いた部分。
この意味がわからない、と指摘いただきました。今回はそこを深堀します。
用語の定義
法律の話をするならば「用語の定義」が肝心なのはお分かりいただけると思います。定義がずれていたらそもそも「議論がかみ合わない」わけです。
これが、このところ約8年ぶりに湧いてきている「二重国籍」攻撃です。
攻撃側は「これは法律の話だ」という体裁を装うために、国籍法の条文を持ち出します。
「二重国籍」という用語は、国籍法の条文上では直接使われておらず、「外国の国籍を有する日本国民」と書かれています。
では、「外国の国籍を有する日本国民」とはどういう定義なのか?
「日本国民」が「外国の国籍を有する」とは、どういう場合なのか?
・「外国の国籍」とは何か?
・「外国」とは何か?
・「有する」かどうかを、日本側ではどういう基準で判断するのか?
と掘り下げて考えてみましょう。
法律の条文だけ見ていても、わかりません。過去の行政文書とか、文献とか、どう扱われてきたのかを具体的に見てみなければ始まりません。
だから、過去の行政文書や、実際にその立場の当事者が役所でどういう説明を受けていたのか、といったことを調べてみます。
「外国」とは日本が承認している国を指す
昭和50年8月 京都地方法務局
・たとえば、昭和50年8月に、京都の法務局では(日本国民が外国籍を持つことになるかどうかのケースで言う)国籍法の「外国」とは、「日本が承認している国のことだよ」という説明をしていることがわかる。
日本側は、日中国交回復後は台湾当局(中華民国政府)を承認していませんから、台湾当局の籍があった場合に(国籍法の条文上で)「外国の国籍を有する」と考える根拠が見当たりません。
これたまたま、京都の地方法務局が「外国」の定義で「間違った回答」をしたのか?というとそんなことはありません。
令和2年3月 法務省民事局回答
二重国籍者(日本以外の外国籍を有する日本国民)と扱うかどうかは、外国政府の発行する証明書で判断する。でも台湾当局の証明書はこれ(ここでいう外国政府の発行する証明書)に当たらない。
当事者のどこに瑕疵があるのか?
以上のような公的な説明が存在していた。
約半世紀にわたってこのように説明されてきた。
そうしたファクトを踏まえたとき、どうしてこれで、「台湾籍を持つ日本国民」の立場が「重国籍者の義務対象になる」と考える必要があるのでしょうか? どうして義務を果たしていなかった、などという決めつけが横行するのでしょうか?