日台複数籍者関連ファクト整理
※本記事内容のファクトチェックを歓迎します。事実関係に誤りがあるという場合は、是非、積極的にご指摘いただけると幸いです。
0.はじめに
日台複数籍(台湾当局の籍を併有する日本国民)の立場の人について、日本側の国籍法上で重国籍(外国の国籍を有する日本国民)と扱うという根拠がそもそもあるのか?(実際、探しても具体的な根拠は何一つ無い。)
……という疑問について筆者はこれまで相当数のnote記事を書いてきました。このテーマの記事は次のマガジンに入れてあります。
ただ、毎回自分の思いが先走って、書く内容が長くなり、読みにくくなってしまう。結局期待するほど読んでもらえていないことを残念に思っていました。
そこで、今回は、スタイルを変えて、なるべく簡潔に「ファクトの整理と提示」に留めた資料として、まとめてみようと思います。立場・主張にかかわらず、活用してもらえるものになればと思います。
1.国籍法14条の国籍選択義務とは?
1-1. 国籍選択制度
国籍選択制度は1984年(昭和59年)の改正国籍法で新たに導入。1985年1月1日施行。
1-2. 国籍選択義務の対象者
義務の対象は、条文より「外国の国籍を有する日本国民」である。
2.「外国の国籍を有する日本国民」とは?
2-1. 従来の「外国の国籍を有する日本国民」に関する条文(昭和25年国籍法10条⇒昭和59年国籍法13条)
※しかし、以下の通り、この条文があっても、台湾当局の籍を有する日本国民は、「1972年日中国交回復」の後は「日本の国籍を離脱することができない」扱いだった。(外国の国籍を有する日本国民と扱ってこなかった。)
2-2. 「外国」の定義と「台湾」の扱い
「外国の国籍を有する日本国民」でいう「外国」はどう定義・説明されてきたのか。
2-2-1. 昭和50年8月19日 京都地方法務局による説明
昭和50年8月19日に、京都地方法務局では(日本国民が外国の国籍を有するかどうかの判断場面で)
・国籍法の「外国」とは、「日本が承認している国を指すものと解される」と説明している。
また
・「外国の国籍を有するかどうか」についても、日本が承認している国の法規に照らして、その有無が審査されるべきであると説明している。
2-2-2. 平成8年4月9日 金沢地方法務局の説明
日本国民が、中華民国政府(台湾当局)から発行された国籍証明を示しても、「外国の国籍を有する日本国民」が要件である「日本国籍離脱」の届を受理できない、と説明。
2-2-3. 令和2年3月10日 法務省民事局回答での説明
令和2年3月の、法務省民事局民事第一課からの日弁連への回答では、国籍法の外国籍保有を判断する場面で言う「外国」とは、「国際法上、ある地域が国として承認されていることまたはその地域がある国に属していることを承認されていることを要し、かつ、日本が独立国として承認する国家であることを要する」と説明している。
また、
・「外国の国籍を有するかどうか」については「当該外国政府の証明書」によって、判断する。
・「台湾当局の発行の証明書」は「当該外国政府の権限のある者が発行した証明書」に当たらない。
とも示されている。
3.国籍選択届(日本国籍の選択の宣言)受理の要件
国籍選択制度導入時の、昭和59年11月1日付法務省民二第5500号通達「第3 国籍の得喪に関する取扱い」の「5 国籍選択の届出」には、次のような記載がある。
2021年段階の日弁連の調査報告書にも、それを示す法務省側説明が紹介されている。
※明らかに外国の国籍を有していないと認められるときを除き、受理している。(⇒受理されたことは、義務対象者であったことを意味しない)
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