第4回 小さな出版と本のお悩み相談室【1】PPを貼った表紙が、時間が経つとくるっとまるまるのはなぜですか?
『小さな出版と本の研究室』の活動を始めてから、本づくりに携わる方から、印刷や製本についてご相談を受けることが多くなりました。
毎月の研究報告会で、調査や改善策を探ったりしていると
「本づくりに関する同じような悩みをもっている方は多いのでは?」
と考えるようになりました。
小さな出版の魅力は、本の大きさや素材、印刷・製本方法がさまざまで、
自由度が高いことにありますが、そのために初版が完成するまで、イメージが湧きにくいということがあるかもしれません。
予算や納期など依頼する際の条件はさまざまですが、その中で少しでも理想に近く、長く手にとってもらえる本になるように『お悩み相談』というかたちで、情報を発信していきたいと思います。
これから小さな出版と本づくりを考えている方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
【お悩み相談.1】
PPを貼った表紙が、時間が経つとくるっとまるまるのはなぜですか?
は:おのさん!今日は「PPを貼った表紙が、時間が経つとくるっとまるまるのはなぜですか?」という相談について話したいです。
本の実物も見せてもらったのですが、こんな感じでくるんと反り返っていました。
納品直後は問題ないのですが、時間が経つにつれて、表紙がだんだんとまるまってくるらしいんです。
しかも、見た目は同じような本でも、反るものと反らないものがあるみたいで、素材による問題なのか加工技術の差なのか、原因がわからないということでした。
お:はださんに言われて調べてみたんですが、一番の原因は表紙の紙の厚みだと思います。
は:紙の厚みですか?
お:そう、PPを貼る用紙が薄いと、時間が経過して紙が乾燥したときに、PPフィルムに引っ張られて反ってしまうんです。
は:なるほど『紙の厚みが重要』なんですね。
紙って時間が経つと乾燥するのか……。
そもそも『PPを貼る』ってどんな加工か、いまさらですがおさらいしてみました。
◆PP加工(ピーピー)
ポリプロピレン加工の略称。
印刷用紙の表面に接着剤を塗布してフィルムを圧着させる加工。
表紙に光沢があることで高級感を出したり、水に強く汚れにくいなど、耐久性を高める効果がある。
つまりは、加工技術の差では無いってことですね!
お:PP貼は熱でフィルムを用紙表面に圧着させる加工で、光沢を出すフィルムもあれば、マットな質感のもの、テクスチャ感のあるものなど種類もいろいろあるんです。
【お悩み解決策】
時間が経過しても反りにくい表紙にするためには、
PPを貼る場合の用紙を135kg以上(180kgなど)の厚みにすること
がポイントです。
素材によっては、本に見返し◆をつけると表紙の補強になり、少し反り返りが収まる効果もあるようです。
は:135kg以上(180kgなど)ってことは、官製はがきの厚み以上を目安にって感じですね。
質問をいただいた方に、依頼のポイントとして伝えてみます!
▶用語集
◆見返し
中身と表紙のつながりを強くするために表紙の内側に貼るもの。
表紙の内側に貼るほうを『きき紙』、中身の側のひらひらしている
見返しを『遊び』という。
▶小さな出版と本の研究室は、本や冊子づくりをサポートします
この研究室は大阪市内の印刷会社で働く二人が中心となり運営しています。「こんな製本できますか?」「この色と組み合わせる紙は何がいいですか?」「本に関するお悩み相談をしたい!」など、少しこだわりのある本や冊子づくりを考えている方のサポート(時には一緒に考えます)をいたします。
小さな出版・本づくりについてのご相談や、印刷・製本・用紙のご質問などは【小さな出版と本の研究室】はだ 宛にメールをお送りください。
contact@littlepress-lab.jp