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今年もヤバかった『ゴアフェス Vol.5 A GO-GO!』レポート。
12月14日(土)、池袋の新文芸坐で開催された“ゴアフェス”に行ってきた。毎年恒例となりつつあるこのイベント、ひと晩中血肉と臓物まみれの映画を浴びるように観る、なんとも尖ったオールナイト上映会だ。自主制作感満載の作品から商業レベルのものまで、すべての映画が「残虐非道」を全力で表現している。12月の忙しい週末にもかかわらず、今回も前回に続いてチケットは完売。会場は満席で、ゴア映画ファンらしいディープな人たちだけでなく、若い観客がキャッキャ盛り上がっているのが新鮮だった。福岡から「毎年これを観に東京に来てる」という知人に会えたのは嬉しい偶然。
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このゴアフェスを仕掛けたのは、インディーズのゴア映画を配給するレーベル“VIDEO VIOLENCE RELEASING”を個人で立ち上げたヒロシニコフさん。会社勤めをしながらゴア映画に心血を注ぐその情熱が選ぶラインナップはどれも最高だ。正直、世の中には「これどうしようもないな……」と思うレベルのゴア映画もあるけど、ゴアフェスで上映される作品には「ここを見てくれ!」という作り手の熱意がちゃんと伝わってくる。観る側としても、愛が詰まった作品には応えたくなるものだ。
というわけで、簡単に上映作品を振り返ってみる。
『2 Girls 1 Gut』(2024)監督:Guy
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真っ白な部屋で目を覚ます二人の女の子。出口を探して反対方向に走り出した瞬間、バチンと引き戻される。なんと二人は腸で繋がっていた!ここから始まるのは、血まみれの「腸引き合戦」。協力して脱出なんて甘い話はなく、意地でも腸を引き合う壮絶な展開。純白の空間に飛び散る鮮血、このコントラストが美しい。首に腸を巻いて締め上げるシーンなんか、まるでプロレスの反則攻撃みたい。たった5分の短編だけど、これを長編化したらどうなるのか…今から楽しみ!
『犬とナマズ』(2024)監督:山内大輔
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出所した男が向かったのは、風俗で働きながら自分を待つ妻ではなく、「神の愛」を説く保護司的な女性の家。小学生のコスプレで迷い犬のビラを貼る女、妻が世話をするスーツケースの中の“何か”。日常と非日常が噛み合い、狂気が軋みをあげて紡ぐ異形の物語。フランスはパリの映画祭Cinema Interditで“最も狂った映画”賞を受賞したのも頷ける。漂う昭和エロ風の雰囲気も、18禁版が存在すると知って納得した。そっちも観てみたいな。
『リブスプレッダー 悪魔の毒々禁煙キラー』(2022)監督:ディック・デイル
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かつて煙草のCM出演で一世を風靡した男。母を肺がんで亡くし、自身は落ちぶれて風俗嬢のストーカー状態。ある日、“煙草の亡霊”の囁きを受け、母の死も、嬢がなびかないのも「喫煙者が全ての元凶だ!」と“気づき”、喫煙者の肺をえぐり出す“浄化”を始める。初期ジェイソン風のボロ袋マスク姿で街を掃討する…までは普通のホラーだけど、ここからが超展開。その発想はなかった!と唸るしかない、ぶっ飛び度ナンバーワン。
『キャットコール:オメガ・バイオレンス』(2022)監督:パトリック・フォーティン
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街で男たちに心ない言葉を投げられた女が、ぶち切れて男を殺しまくる!ただ殺すだけじゃ物足りない。潰せ、引き裂け、食いちぎれ!自己の行為を正当化する語りが女の内部で増幅し、行為を過激にしていく。とはいえ、これぞゴアフェスの醍醐味。損壊される人体がすべてDIY精神に溢れる物体で、グロさよりも作り手の熱意が透けて見え、微笑ましさが先に来る。男ムカつく→死ね!この短絡ぶりが清々しい。
『アメリカン・ギニーピッグ:ソング・オブ・ソロモン』(2017)監督:ステファン・バイロ
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伝説の「ギニーピッグ」シリーズがアメリカで蘇生!今回はゴア×エクソシズムという異種格闘技戦。儀式描写は本格的、だのに送り込まれる神父たちが次々とあっさり、カラス神父のように葛藤する間もなく、壮絶にやられていくのがたまらない。最大の見せ場は、内臓を吐いて戻すリバース芸。これぞゴア版の誇り高き美学。このイベントのためだけに上映権のみ獲得したという本日の目玉で、ありがたい気持ちでいっぱい。
今年も攻めたラインナップ揃い、作品の上映が終わるたびに場内で拍手が沸き起こる。禍々しくも悍ましいスクリーンとは対照的な、なんて温かな空間。
ただ、現実は厳しい。このイベント、264席が完売して物販も盛況でも、上映権の買い付けや字幕制作、ゲストの登壇費用などを考えたら赤字スレスレか、あるいは…なんじゃないかと思う。それに加えて、新文芸坐はオールナイト上映の回数を月4回から2回に減らしている。その貴重な1枠を使う以上、集客へのプレッシャーもかなりのものだろう。それでも「ジャンルの火を絶やすな!」と走り続けるヒロシニコフさんの情熱には頭が下がる。応援せざるを得ないよね。
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来年もまたこの風物詩が帰ってくることを願っている。師走に血肉まみれの映画を観る夜、これがなくちゃ納まらない!