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介護付きシェアハウスで始まる、はっぴーな学び場
“不登校でも、安心して学べる環境を保障する”
そのことを定めた『普通教育機会確保法』が施行されたのは2017年。それから、4年が経ちました。
徐々に学校以外の学び場が広がり始めたところに、新型コロナウイルスが流行。学校の在り方や学びそのものを問う動きは、更に加速したように思います。「新しい学校をつくる」「オンラインスクールを開校する」という情報も、耳に入るようになりました。
そんな中、ある介護施設が新しい学び場を作ろうとしています。教育とは直接関係がない会社が教育事業を始めたケースは聞いたことがあるものの、介護施設が始めるというのは聞いたことがありません。おじいちゃんおばあちゃんがいる環境での教育。一体、どうやって学びの場が作れるのでしょうか。
新しいけど、懐かしい場所
その介護施設とは、神戸市長田区にある「はっぴーの家 ろっけん」という介護付きシェアハウス(正式には、サービス付き高齢者向け住宅)。
代表の首藤さんは、小学生の子ども2人を育てるお父さん。子育てと同時に自身の祖父母を介護しなければならない状況に直面した数年前、首藤さんは「どちらも諦めない」という選択をしました。夫婦が仕事を続けながらも、子どもと祖父母が色んな人に会える環境。そんな場所を作りたいと思ってできたのが「はっぴーの家 ろっけん」だったのです。
生活の様子は、日々FacebookやTwitterで発信されています。その投稿を見ていると、高齢者施設とは思えない賑やかな日常を感じます。
ちょい悪オヤジの休日コーデ。
— はっぴーの家 (@happyrokken) November 16, 2020
爽やかな青いツナギがワイルド感を演出。首元には緑を添えて2階フロアの壁紙と合わせてみました。ポンポンの付いたニット帽でぬけ感を入れつつ、足元は黒でシメる。さりげなくオシャレ上級者のテクニックが見られます。
ピーコさん、ファッションチェックお願いします。 pic.twitter.com/40i9WO0DDm
サングラスは夏だけのもの?
— はっぴーの家 (@happyrokken) October 28, 2020
実は冬だからこそ目を守ることも大切だとか。ロッケンでは室内にゴロゴロ転がっているのでかけ放題。「え、それ誰の?」というパターンもありますが、おすすめコーデはこちらです。#はっぴーの家#老眼鏡よりサングラスの方が多い説https://t.co/dzqiNhPNGr pic.twitter.com/Ihon5WaBzn
#遠くのシンセキより近くのタニン #日常の登場人物を増やす#はっぴーの家 #はっぴーの家ろっけん pic.twitter.com/LsgKT2D2aJ
— はっぴーの家 (@happyrokken) December 18, 2020
カタチのない教育事業
カオスな日常が当たり前のはっぴーの家 。2020年春、そこに加わったのが元中学校教員のワダケンでした。「世代や国籍を越えて、人が集う日常の中で教育がしたい!」という想いを胸に、はっぴーの家で教育事業がスタートしたのです。
2020年春と言うと、ちょうど緊急事態宣言が出されて全国の学校が休校になったタイミング。子ども達の学びを止めないために、多くの人がオンラインでの学び場を提供し始めました。もちろん、はっぴーの家でもオンライン講座を開講。一見、他の企業や学校もやっている普通の取り組みですが、はっぴーの家でやると普通ではなくなるから不思議です。オンライン授業には、おばあちゃんも参加。
zoomを使ってのオンライン授業に参加中。YouTubeについて学んでます。 pic.twitter.com/iB1FP2rmu1
— はっぴーの家 (@happyrokken) May 17, 2020
夏休みは日本とタイにいる子ども同士がzoomで繋がり、一緒に勉強。タイの街並みを見せてもらったり、言葉を教えてもらったりする時間もありました。
教育事業と言うと、「こんな授業が受けられます」「こんなことを学べます」と紹介することはよくあることだと思います。けれど、はっぴーの家では、「何を」「どこで」「どうやって」学ぶのか?その答えがありません。おじいちゃんおばあちゃんはもちろん、スタッフやその家族、ふらっと立ち寄った人が集うはっぴーの家。
学びの場は、日常の中に溶け込むようにして存在しています。
猫の手も借りたいときこそ、こどもたちの学びのチャンス。
— はっぴーの家 (@happyrokken) December 3, 2020
....かもしれない😊 pic.twitter.com/uoZN3rLI1J
こどもUber、はじめました。
— はっぴーの家 (@happyrokken) October 24, 2020
ダンボールにパン詰めて、無邪気な心でお届けに周ります。
手数料は無料!その分お駄賃大歓迎なんでそこんとこヨロシク。 pic.twitter.com/ZWO7DV6B9n
2020年12月31日。親元を離れて来ている男の子が、「親父に年賀状送ろうと思うんやけど…」とポツリ。
年賀状がないので作ることになり、ハガキ作りがスタート。調べるところから始まり、ちぎって、混ぜて、伸ばして、乾かして。。そこにいるおじいちゃんおばあちゃん、スタッフも加わって一緒に作ります。
【14歳からの相談:親父に年賀状をおくりたい】 親元離れ、はっぴーで居候中?(修行中?)の14歳の彼。 年末に親父と再会予定だったが、コロナなどの影響で再会できないことが昨日決まった。 14歳『なぁ、ワダケン、親父に年賀状送ろうと思う...
Posted by 和田 健 on Thursday, December 31, 2020
用意された学びではなく、その空間や人の繋がりが生み出した学びが、はっぴーの家にはあるのです。
そこにいる人全員にとって、居心地が良いハッピーな暮らしとは?
スタートした当初からそんな問いを持ち続けている場所。何をどう学ぶかよりも、今この瞬間を、その人がその人らしく居られるかどうか。気づいたら、大人もおじいちゃんおばあちゃんも、「学び」の中にいた。そんな場所です。
オンラインでの交流からスタートした教育事業。最近は、「実際にはっぴーの家に行きたい」という声もあり、おじいちゃんおばあちゃんに混ざって子ども達の姿が。はっぴーの家に来ている男の子のお母さんが素敵な記事を書かれていたので、こちらでシェアさせてもらいます。
オンラインから
リアルで会いに行きたい💕になり、
親子で行くようになり…。
中には入らず、外での戯れを何度か繰返し、
今では1人で向かえるようになり…。
(方向音痴のため、途中待ち合わせだけど😅)
みんな
ありのままの息子を受け入れてくれるのが
本当にありがたい。
まずまず、
世の中に「学校は?」とか聞かれない空間なんて、存在しないのに。
(春名由美子さんnoteより)
学びを問い直す
机に向かってテキストを開き、先生の話を聞く。ドリルを開いて問題を解く。それも学び。でも、それだけが学びでしょうか。
学びはいつも日常の中にあるものだと私は思っています。学校も介護施設も、「日常」を楽しみ、より豊かにしていく場所。この2つ、もしかしたら相性が良いのかもしれません。はっぴーの家でのカタチのない教育事業。これから、どう変化していくのでしょうか。
カオスな日常はこちらから覗けます。気になる方はぜひ。
『僕はここで「暮らし」を売っているんです。医療施設が「安心安全なサービス」を提供するように、僕たちは「日常の満足度を上げるサービス」を提供している。だからこそ、僕はこの家に暮らしている』
— はっぴーの家 (@happyrokken) August 11, 2020
多文化多世代シェアハウスの「暮らし」と「学び」 @shitamachikobe https://t.co/JZMGOauROv pic.twitter.com/DGnbxO1rL4
実は現在、はっぴーの家でドキュメンタリー映画を撮影中。公開は今年の夏頃です。こちらも楽しみ!
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