どの学級にもある「係活動」をアップデートした先にあるもの
係活動。
学校で行われてることの中でも、あまり注目されないこの活動。それでももう何十年も続いていて、きっとどの学級でも行われ続けているこの活動。
授業や部活動、学校行事にエネルギーを注いできた先生は多くいると思うけれど、「係活動にエネルギーを注いできた!」という先生はあまり多くないかもしれません。
それくらい学校の日常に自然と溶け込んでいる活動が、係活動なのだと思います。
私自身、過去に中学生の学級担任をしているときは、何となく生徒たちに任せて好きな係活動をしてもらう程度だったような気がします。一方で、「学級経営はどうしたら上手くいくだろう?」と日々頭を悩ませていたようにも思います。
今思うと、係活動だって学級経営につながる活動なのだから、そこにもっと注目してみたら、何か違った結果につながったかもしれないなとも思います。
そう感じるのは、ある本に出会ったから。
タイトルは、『係活動にちょっとひと工夫 「プロジェクト活動」のススメ』。
ハウツー本は、教員時代にたくさん読みました。それでもカタチだけ真似るだけでは上手くいかないことを同時に実感してきました。
この本は、プロジェクト活動のやり方が詳しく書いてある、という点では一見するとハウツー本に見えるかもしれません。けれどそれは、読者が実際に自分の学級でプロジェクト活動をやってみるときにイメージしやすくするための導入であり、後半は著者である青山雄太さん(あおさん)の在り方や価値観が綴られている本だと感じました。
そもそもプロジェクト活動って?
本書の中では、「プロジェクト活動とは、プロジェクト単位でゴールを決めて行う係活動のこと」と書かれています。係活動よりも活動時期や参加人数が流動的であり、子どもたちの発案をベースにした活動、とイメージしてもらうといいかもしれません。
私は読んでいて、係活動はちょっと義務的だけど、プロジェクト活動はワクワクするやりたい活動のような印象を受けました。
以降は、私がこの本を読んで印象に残った部分をいくつかご紹介したいと思います。
一人ひとりを見て、柔軟に
いきなり実践のハードルを上げるような言葉を引用してしまいましたが、これは実践を続けるための本質だと感じます。
本書の中では、あおさんがどのようにプロジェクト活動を行ってきたのかが具体的なエピソードを交えて書かれています。当たり前ですが、そのときに登場する子どもは全員違う人だし、そのときに取り組んでいるプロジェクトも、プロジェクトへの取り組み方も違う。
そのカタチをそっくりそのまま真似ようとしても、きっと上手くはいかないのだと思います。
30人の集団ではなく、「その1人」を30回
では、何を大事にしたらいいの?
それに応えるように、あおさん自身の教員としてのあり方、考え方も綴られていました。
30人のクラスであっても、見るべきは「30人の集団」ではなく、「その1人」なのだと思います。
印象的だったのは、あおさんが小学校1年生のクラスを担任したときのクラス会議でのエピソード。「すぐに大声で罵り、暴力を振るう子」がクラス会議で自身の困りごとを話し、クラス全員でその子の悩みに向き合う姿が描かれていました。
「本当はみんなと友達になりたいけど、上手くいかなくてイライラする。でも寂しいからまたちょっかいを出してしまう」
そんな自分の本音を素直に話そうと思え、受け止める土台がクラスにある。
私はこのエピソードを読んで、本当に小学校1年生のクラスでの出来事なの?と疑いたくなる気持ちになりました。けれど、教員がその土壌を耕し続ければ、きっとどのクラスでも起こることなのだと思います。
学級経営の中で、システムを確立する
最後に、プロジェク活動の価値を本書から引用してお伝えします。
毎日多くの子どもたちに関わり、さまざまな業務を進めてる先生にとって、システムをつくることは、きっと「一人ひとりを大切にしたい」という思いに寄り添ってくれます。
プロジェクト活動は、そのシステムの一つとして価値のある活動ではないでしょうか。
著者であるあおさんは小学校の教員を勤めたのちに、オルタナティブスクールのグループリーダーをされています。小学校や中学校の先生だけではなく、オルタナティブスクールやフリースクールなど、子どもたちが集う場に関わる人にはきっと新しい発見がある本だと思います。
あおさんのブログ、Voicyはこちら。
以前紹介した本もぜひ。