『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』古賀史健著:ライター&編集者必読の「泣ける」実用書
すごい。内容がよすぎて、重要と思ったところに紙を挟んでいったら、ほぼ全ページになってしまったので、特によい箇所をここに書き出すこともできない(笑)。
と思ったら、本のAmazonページに版元が、「一読者として読み返したら、ほぼ全ページ付箋まみれになってしまいました(担当編集者)」と書いていて、同じだと思った(!)。これは宣伝文句だろうが、私の本書の読書体験によると真実だ。
タイトルもいいし(「ライターの教科書」のほうが副題なのも面白い)、書く人ならこれくらい読めるよね、という分厚さもいいし、その割に文字が大きくて余白もたっぷりなので読みやすいのもいい。もちろん文章自体もわかりやすくてよい。
ライター、編集者、ほかの書く人すべてにおすすめ。
本当にそのとおりと同意することと、そうなのか!と知ることと、そんなふうに言語化はしたことがなかったが確かにそうだと納得することが詰まっている。
「書かれていないこと」に注目してみよう、という記述があるのだが、本書自体に書かれていないことに、「こんなに丁寧に執筆して、食っていけるのか?」がある。最後の方に、ライターは時間給ではないから、時間も労力も惜しみなく使え、読者にとって重要なのは書き上がったもののみだ、という言及があるが、ここまですれば著者のように本で稼げるようになるのかもしれないが、下積み時代には、ライター業以外の仕事もして生活していたのだろうか?きっとどこかでその話も書いているのだろう。
よいところを書き出しきれないと書いたが、2カ所だけ引く。両方とも最後の方にあり、実は読んで泣いてしまった。
では、作家やライターにとっての「プロの条件」とはなにか。(略)
――編集者だ。
(略)わたしという書き手を見つけ、「あなたにこれを書いてほしい」とオファーし、その力を全面的に信じて、原稿を待ってくれていること。
もしもそういう編集者がいるのなら、そのライターは間違いなくプロだ。(略)
※p. 436
(略)あなたはなぜ、ライターになったのだろうか。(略)
書くのが好きだったから?
本が好きだったから?
国語の成績がよかったから?
クリエイティブな仕事に就きたかったから?
違う。ぜったいに違う。
あなたはなんとなく、これといった根拠もなしに、「自分にもできそう」と思ったのだ。だからライターをめざし、ライターになったのだ。(略)
※pp. 463-464
1つ目は、ライターさんや著者さんは、また仕事を依頼してほしいという気持ちもあって、編集者にお礼を言うのだろうなあと思っていたが、改めて編集者の役割、責任の重さが染みた。
2つ目は、あんなに自分もできると思っていたのに努力が足りなかったり気持ちが変わったりしてなれなかったもの、さほどなりたいとも思わなかったのに成り行きに任せて頑張っているうちになぜかやっていたこと、などを思い出して、泣けた。
不意打ちだった。
この本、100年後も増刷(もし紙の本がなくなってしまっていたら印刷ではないかもしれないが)していたらいいな。