戯曲集『夢を見る 性をめぐる三つの物語』石原燃
「夢を見る」(慰安婦)、「蘇る魚たち」(性暴力、児童虐待)、「彼女たちの断片」(中絶)の3つの戯曲を収録した本。
「夢を見る」は、日本人の元慰安婦を、たまたま知り合った若い世代の人物の視点から描く。
「蘇る魚たち」は、男性の大学教授による少年たちへの犯罪を、成長した被害者たちの視点から描く。
「彼女たちの断片」は、中絶する学生とそれをサポートする人々の中絶にまつわる思いや日本の中絶の実情や問題点を描く。
どの作品も、「再生」がテーマであるように思う。
「夢を見る」の、つらさをつらいと言えない痛み。「蘇る魚たち」の、弱い者を服従させることで満足感を得る加害者の姿。
「彼女たちの断片」は、著者自身も語っているように、中絶に関するかなり直接的に説明的なせりふが戯曲の大半を占める。通常、そうした記述は敬遠されるが、本作では教育的な(啓蒙的な)意図が目立ちつつも、実用的な効果を上げている。日本における中絶の問題点を浮き彫りにし、当事者に必要な知識を提供するこうした劇があるのはいいことなのかもしれない。映像作品化して、中学と高校の性教育に使うとよさそうだ。