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故郷

――もっともっと故郷を見たかった。あれも、これも、見たいものがたくさん、たくさんあったのである。けれども私は、故郷を、チラと盗み見ただけであった。再び故郷の山河を見ることの出来るのはいつであろうか。

『故郷』太宰治

二度と帰ることがないと思って、一人暮らしを始めた。
帰ってくる時は胸が躍って、行くときには電車で泣いた。

そんなに好きな場所なら捨てなければ良いのに。
残る選択をすれば良かったのに。
自分で決めたくせに後悔するな。

言い聞かせても
故郷の景色を見るたびに、ここに帰りたい。
ここで暮らしたい。と何十回、何百回思ったんだろう。

今日その夢が叶って、一番大好きな場所に帰る。

嬉しいけれど、この数年住んだ街にも大切な人
好きな場所を作ることができた。
ひとつしかない特別よりも、どの街にも異なる特別を
たくさん作れるような人間になりたい。

日本だけじゃない、海外も含めて世界のいろんなところに
「見たいものがたくさん」って言える心の故郷を
これからの人生ではもっと増やしていきたい。

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