砂の女 読書日記

砂の女 (新潮文庫)  安部 公房 (著)

あらすじ

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(新潮社)

感想

なかなかすごい作品であった。基本的にこの本は自由について書かれている。砂の中で女と二人きりで暮らしている時と教師となり外で働いている時、どちらが自由なのだろうか。
実際、私たちの生活はよほどのことがない限りは自宅と職場、学校などの往復によってなされる。たまに祭りや旅行などの非日常が挟まるが、砂の中ではそういった非日常が恐らく村からくる支援物質という形で与えられている気がする。
海外で一人で洞窟の中で500日くらい過ごしたという人がいたが、それと比べると人と一緒にいるこちらのほうが楽しく過ごせるのではないか。とういうか、案外住んでみたら対人関係のわずらわしさが減ってこちらの生活より楽しいかもしれない。
途中、女とセックスをするシーンにおいて妻だとゴムありでしかできないが、この女だと生でできるみたいなことを言うシーンがあった。このシーンがよくわからない。生だと妊娠などの責任が生じて、自由とは程遠い行為になってしまうのではないかと思いテーマと反対なのではないかと思う。もしかしたら、ゴムという現代的なものを使っている時点で不自由であり、自由とは前時代的なものであるというメッセージかもしれない。

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